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空母 双龍 東へ  作者: 銀河乞食分隊
燃えるミッドウェー
51/62

双龍の世界 一式三十三ミリ機銃 阿賀野級軽巡洋艦

なぜか書いてしまいました


転移国家のほうで、医療知識も無いのに無謀なことを書こうとして煮詰まっています。

気分転換ですか。

 近い将来に開戦確実という事態に海軍の後方部隊は皆疲れていた。

 疲れていないのは、無責任な作戦案と自軍有利な状況で机上演習に励む軍令部作戦課だけだった。軍令部でも他の課は、皆海軍各部署との折衝や予算の確保など大変な思いをしていた。


 軍令部装備課機銃係

 

 ここは、海軍の砲填でも四十ミリ以下の口径の銃器を取り扱う部署であった。

 海軍は、四十ミリ以下なら炸裂弾を通常使用する銃も七ミリの六十七式歩兵銃でも同じだった。

 要するに敵艦に対して威力の無い砲填兵器を扱う部署だ。あくまでも海軍の主目標は、敵艦だった。


 一人の中佐が悩んでいた。彼は試製三十三ミリ機銃の軍令部担当者だった。

 艦政本部との折衝の果てに疲れ果て、若干の捨て台詞を残して喧嘩別れしてきたのだった。

 彼は空母火龍の初代砲術長だった。少佐の時で、これで艦隊勤務になれると思って喜んでいた。しかし現実は、定期異動で次はどの艦だと期待に胸を膨らませた彼をあざ笑った。

 再び参謀本部装備課機銃係に呼び戻されたのだった。理由は、何のことは無い。前任者が家庭の都合で急に退役してしまったためだった。

 ここの主な仕事は対空機銃であり、彼と前任者はそのオーソリティーとみなされていた。適格者がいなくなれば、次席を連れてくるのは軍令部にとっては当然だった。


 喧嘩までして意見を通そうとしたのは、単装機銃の扱いだった。

 元々、彼と前任者は完全人力操作の単装機銃は意識に無かった。そういうのは二五ミリまでで、一人で操作出来るものが対象と考えていた。だから人力で扱う機銃はホチキスの二五ミリかエリコンFFLでと考えていた。

 また、素早い操作が必要になるだろう単装機銃は、複数人で操作するには不向きだと考えていた。

 試製三十三ミリ機銃は、元々頑丈な機銃座に据え付けて機力旋回・機力俯仰で作動させる機銃として開発された。初弾装填も電動で行う。

 給弾はベルトリンク式だ。

 機力俯仰で+八五度から-八度まで上下どの方向にも三秒で俯仰出来た。

 水平方向も毎秒三五度の旋回速度があった。

 機銃自体はほぼ完成している。ベルトリンクの強度や弾の飲み込みと排莢に若干の問題があるが、解決のめどはついている。

 

 この機銃は単装でもかなりの重量があった。弾など一発千百グラムだ。


 それを弾倉式の人力操作式単装機銃に改造するという。これは絶対に一人では操作も弾倉交換も出来ない。費用対効果が合わないと考えた。だから反対した。


 結局意見がまとまらず、人力操作の単装化はまた後日と言うことで分かれてきた所だった。


 装備課の課長がやってきた。

「係長、単装機銃ではずいぶんやり合ったそうだね」

「課長、私は単装機銃にするのは反対ではありません。人力化に反対なのです」

「なぜだね。非常時には人力でも動かせるようになっているのだ。機力を外すだけでは無いか」

「重いのです。一人では軽快な操作などできないでしょう。弾倉も艦政本部の計画では三十発となっていますが、弾と弾倉の重量で四十kgを超え五十kg近くになるでしょう。これは治具を使っても一人では困難で最低三人必要だと考えます」

「単装機銃に三人は人をかけすぎと言いたいのかね」

「そうです。一人で操作出来る単装機銃は二五ミリかエリコンで良いと思っています」

「ああ、そういうことか。分かった。艦政本部から誤解を解いて欲しいとで言われたのだ」

「誤解?ですか」

「そうだ。確かに私も艦上で単装機銃として使うには三人はかけ過ぎだと思う。連装で四人だからな。だが陸上基地ならどうだ」

「陸上、ですか」

「船は少ない人数でこなさなければ行かんから、機力操作は必須と言える。だが人員の豊富な陸上基地ならどうだ」

「海軍は港でも慢性人手不足では無かったですか?」

「海軍はな」

「陸軍なのですか」

「そうだ。陸軍で基地の防空に使えないかという話が有った」

「聞いておりませんが」

「話し忘れたそうだ」

「あいつら」

「まあ怒るな。陸軍なら歩兵はたくさんいるので機銃の操作を覚えさせてやれば、強力な対空陣地の出来上がりだそうだ」

「では、人力操作での単装化は決定なのですか」

「いや、まだだ。どれだけ人力だと操作が大変かで決まると言っていた」

「とにかく完成させないといけないわけですね」

「そういうことだな」

「そういうことであれば。明日艦政本部に行ってやり直します」


 課長はうなずいて出て行った。


 その後は順調に単装化が進んだが、軽快な操作(滑らかな旋回・俯仰)を追求したため銃架の重量が増し、単装機銃弾倉無し銃架込重量が八百kg、防楯を付ければ一トンを超える大型機銃が誕生した。


 弾倉は海軍としては三十発でないと交換困難としたが、揺れる艦上では無く、安定した地面の上だからと言う理由で四十発を主張する陸軍に海軍が折れ、四十発入り重量六十kg超えの弾倉が完成した。

 四十発なら十五秒ほど射撃が出来るので、一回の射撃中に弾切れは起きにくいだろう。



 これで終わりかと思いきや、今度は艦政本部が船に積んで試験しないかと言い出した。

 連装でも場所や重量過多で装備出来ない船や場所に装備出来ないかと言う考えだそうだ。

 ミッドウェーに参加する船で、重量場所とも余裕があり、まだ機銃の装備が終わっていない艦が選ばれた。

 

「係長、呉まで出張を頼む」

「呉ですか。単装機銃の装備する艦が決まったのですね」

「君も縁が深い艦だ」

「火龍ですか」

「そうだ、行ってこい」

「了解」


 呉に来た係長は言葉が出なかった。火龍になんて事してくれちゃってるのあの人たちは。

 ついでに少しの嫌みと機銃の説明をしてきた。


 ミッドウェーの結果は分かった。問題は一式三三ミリ機銃の評価だ。


 概ね、良好。特に四連装の威力は素晴らしい。とのこと。

 改善すべき事として、整備性と給弾機構。特にグリスとオイルが飛び散るのはなんとかして欲しい、と言う意見が多数出た。

 御免して下さい。次期製造分からは改善されます。既存の機銃も交換します。整備性は威力と交換だと思って頂ければありがたいです。


 弾詰まりは、グリスやオイルの塗布不十分の機銃では発生したが、十分に潤滑を与えられた機銃では発生しなかった。 


 単装機銃の使い勝手は、良好。ただし弾倉は重量過多で交戦時交換困難とのこと。陸軍は運用で解決するとした。


 係長のミッドウェーは終わった。



 阿賀野級軽巡洋艦


 阿賀野級は老朽化している最上級以前の軽巡の代替艦として計画された。

 最上級では大型かつ高価であり、五千五百トン級の軽快さも無かった。

 数を揃える事が優先され、個艦性能は二の次とされた。 


 だが、軍令部が出した初期の要求では

 

15.5センチ砲三連装 三基九門

魚雷発射管三連装 四基十二射線 予備魚雷十二本

八十九式連装高角砲改二 四基八門

機銃 二五ミリ三連装 十二基

 

基準排水量 八千トン

速力 三十七ノット

航続距離 十八ノット一万海里 


備考として

航空機 三機

水雷戦隊旗艦設備

防御力は最上級に準ずる

 

 となっていた。


艦政本部

 

「阿賀野級軽巡洋艦は個艦性能は二の次では無かったですか?」

「そうだが」

「ではこの速力はなんですか。明らかに高速ですね」

「それで無ければ、駆逐艦を引っ張れんでは無いか」

「三十三ノットの五千五百トン級でも十分引っ張っていますが」

「それは駆逐艦の方が合わせているだけだ」

「現状問題ないのでしょう。なら三十三ノットでも良いですね」

「駄目だ。それでは射点に着けん」

「水雷特化にする気ですか。汎用だったはずですよね」

「しかし敵戦艦の速力も上がっている。情報によると二十六ノット以上だぞ」


 疲れた。この軍令部の奴は何を言っているんだ?数を揃えるために個艦性能は二の次で決まったはずだ。それを今更こんな要求値を見せられても首を縦に振れるわけが無い。


「これは軍令部の正式な要求ですね」

「それはなんだ。いろいろ汲んでくれるとありがたい」

「では正式な物では無いと」

「勿論後で決定する」


 こいつ絶対に軍令部総長の決裁を取っていないな。如何してやるか。


 日本海軍では軍令部が勝手に要求値を決め艦政の混乱を招いたことから、正式な要求値は軍令部総長の決裁が必要となっていた。


「では三十七ノットとしましょう。機関出力は十五万馬力は必要ですね」

「ありがたい」

「で、この概算要求ですが大凡このくらいになりますな」

「な!高いでは無いか。安価に作るはずだぞ」

「しかし要求をまとめるとこのくらいにはなります。後九千トンにはなりますか」

「それでは最上と変わらんでは無いか」

「最上を作ったときとは物価も違います。価格が高くなるのは当然です。あと、最上は実際には一万千トンです」


 軍令部の奴は赤くなったり青くなったりしていた。大方、要求を呑ませて手柄にするつもりだったのだろうが、そんなに甘くは無いぞ。さあ如何する?


「また来る。失礼した」

「お待ちしておりますよ」


 さっそく艦政本部長に連絡する。軍令部に好き勝手されてたまるか。

 後日、奴は左遷されどこぞの鎮守府で倉庫番をしているらしい。と言う噂があった。


 最終的に


公試時


基準排水量 8500トン 満載9200トン


全長 172メートル


船体幅 18.8メートル


喫水 5.8メートル


機関出力 十万五千馬力


速力 全速 33ノット


航続距離 18ノット 1万海里 


主砲 15.5cm3連装 3基


高角砲 八十九式12.7cm連装高角砲改二 4基


機銃 25mm3連装12基(後に新型に換装)


魚雷発射管 3連装4基(予備魚雷無し)


電探 二十一号1基


航空機搭載 水上機2機 

カタパルト右舷に一基


防御力


最上級に準拠


 以上で建造された。

 削ったのは

 速力三十七から三十三

 搭載機 三機から二機

 カタパルト 二基から一基

 魚雷 予備魚雷十二本から無し


 増えたのは基準排水量 八千トンから八千五百トン

 価格は最上級の九割だったが、物価上昇分を考えれば七割程度で出来たことになる。機関が十五万馬力から十万馬力になったのでその分価格がぐっと下がった。


 就役後の運用でも問題なく、実戦でも良好な成績を残した。成功作と言って良いだろう。




いつの世も、こういうの考えたから、作って。

苦労するのは現場です。なぜCADで出した図面で寸法が違うの?


なぜ三三ミリという中途半端な口径かは、またの機会に。


次は未定です。

 




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