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空母 双龍 東へ  作者: 銀河乞食分隊
燃えるミッドウェー
11/62

一二試艦戦 海へ

ついに正式採用


中段あたりで変なこと言ってる奴がいますが、気にしないように。ただの遊びです。


8/4 一部修正


 一二試艦戦は、軽量孔の数を大幅に減らし、整備などに必要な開口部以外はほとんど穴開け無しとされた。


 今までは設計主任の趣味でこんな小骨穴開けても数グラムでしょうにと思っていた部分も容赦なく開けられていた。何しろ1gの軽量化が生き甲斐みたいな男である。


 書き直された図面による試作機が出来上がった。工数が大幅に減ったと試作工場の人が泣いて喜んでいた。今まではとても面倒だったと。悪うございました。


 一応荷重試験からやり直した。油断は禁物である。地上走行・ジャンプ飛行と続き、いよいよ足だし飛行である。この時点で実射試験用に1機渡してある。


 足だし飛行では、今まで敏感すぎた補助翼の効きも穏やかで扱いやすくなったとの評価。実射試験でも問題ないようである。


 私の心が削られていく。もっと軽量孔を。細い桁材を。薄い外板を。

計算上は問題無い。大丈夫、いける。


 いよいよ主脚を格納しての飛行である。飛行場の上空でやるので、みんな見に来る。北基地からも見ているようだ。バンクしての水平旋回、緩降下からのゆっくりとした引き起こし、問題ないようだ。


 着陸後聞いてみるが、特におかしな癖はなかった。一番安心できた。次は機体点検後、最高速度試験である。


 二百八十八ノットを計測、いいじゃないか。でも公試状態じゃないよと、突っ込まれる。次は特殊飛行だな。


 宙返り、横転、機体をほとんど垂直にしての旋回、インメルマンまで。少し問題が出た。特定の速度領域で反応が鈍ぶるという物である。

 戦闘機としてとてもいけない事である。しばらく機体の状態を見ながら飛んでもらう。原因はわからなかった。機体に取り付けてある計測器でも問題は無かった。


 水平飛行では、全速まで出しても問題が無いというので、降下で速度を上げて飛んでもらった。中止して戻ってきた。顔がきつい。


「おい!俺を殺す気か」


「なんですか」


「なんすかも何も、急降下したら主翼のフラッターがひどくなり外板が波打ったぞ。機体の振動がひどくなったので急遽中止してきた」


「速度はどのくらいでですか」


「まだ制限速度にも達していない。三百四十ノットだ」


「わかりました。直ちに原因究明と対策をします」


「これでは採用されないぞ。しっかり頼む」


 急降下制限速度は四百ノットであるし、機体自体はもっと速度が出ても耐えると計算上ではなっている。そのずっと手前から危険な兆候が出た。なぜだろう。


 また試験飛行は中止となった。計算のし直しや風洞実験などしてもわからなかった。うちの風洞ではダメなのかも知れない。

 東大航空研究所の大型高速風洞を借りることが出来た。これでも卒業生だ。コネはある。


 大型風洞でわかったことであるが、今までの計算式が違っていたようで、速度が高くなると実際に受ける空気抵抗と計算上の空気抵抗の乖離が大きくなると言う物だった。

 新しい計算式で計算すると強度不足だった。

 もう構造材は変更できない、いや出来るけど手間が掛かり時間が延びてしまう。

 機体外板を厚くすることにした。再び試作工場には頑張ってもらう。そう言えば外板は住友だっけ。

 強度計算を新しい計算式でやり直した結果、リベット・ボルト類も大きな物にしないと強度が確保できなことがわかった。ここでも軽量化が祟ったようだ。


 なぜだ、私は軽量化が大好きなだけなのに。


 三度目の試験機、再び荷重試験からである。省略はしない。一通り飛行試験まで終え、いよいよ最高速度試験である。


「そう言えば舵の手応えが良くなってきている気がします」


「手応えですか?」


「そう。なんというか操縦しない人にはわからないかも知れないが、舵を切った時の反応が良い気がします。改修する前は、最初の奴は、補助翼のせいで敏感すぎたのでわからなかったですし、補助翼を直した奴はふんわりと柔らかい感じでした。次は、舵を切ると反応が良くなった気がしました。明確にわかる物ではなかったので報告書には上げていません。飛行時間も少ないですし。ですが、今度の奴はわかります。舵を切った時の手応えと反応が良いのです。これは良い機体です」


「それはうれしいです。ありがとうございます」


 うう、軽量化しない方が良い結果が出ていいるだと。許せん。だが顔には出さないぞ。大人だからな、私は。


 三百八ノット計測


 うそん、機体形状やエンジンをいじっていないぞ。機体強度を上げただけだ。それで二十ノット早くなるとは。


 次は特殊飛行だ。次次に技を決める。海軍や陸軍の搭乗員も「やるな」「いい動きだ」などと見上げている。いいのか北基地の人。


「ほぼ全ての速度領域で舵の反応が良くなっています。機体も以前のようなよれる感じが無くなりました。素晴らしいです」


「急降下でも四百ノットまで出しましたが不安はありませんでした」


「そんなに・・・・」


 泣けてきた。頑張った甲斐があった。心残りはない、いや軽量化がガガガガ


「主任、やりましたね」


「おめでとうございます」


「ありがとう、君たちのおかげだ」




 いよいよ海軍の搭乗員による受領飛行だ。緊張する。うちのパイロットと顔見知りのようで挨拶などしている。


「初めまして。横空から来ました。とても良い機体だと聞いて期待しています」


「恐縮です。完全に新しい機体なので、まだ把握できない事象など出て来るかも知れません」


「戦闘機として使い物になるかどうか、私どもが限界まで振り回して判断します。ご心配なさらず」


「お願いします」


「大福大尉、他の3機も準備できました。いつでも横空に向かえます」


「よし、では帰るか」




 横空で激しいテスト飛行を繰り返す一二試艦戦であった。


「良い機体だな」


「デカいくせに良く動く」


「視界がいい」


「切り返しは今イチだが、左旋回は素晴らしいぞ」


「足なんかいらんのですよ」


 横空へ引き渡された増加試作機のスペック公試状態


 最高速度 二百九十四ノット 高度5800m


 航続距離 巡航一千五百海里 三〇〇L大型増槽1個装備

 機体内燃料のみ 巡航一千百海里



 上昇力 高度五〇〇〇まで六分一〇秒


 発動機 金星五五型一千二百馬力(離床一千二百馬力、一速公称一千百五十馬力/高度3000m、二速公称一〇三〇馬力/高度5800m)


 全幅 12m


 全長 9.3m 


 武装


   九十九式一号一型二〇mm機銃(エリコンFFL)二丁


   ホ103 一三mm機銃 二丁


 他




 そんな日々が続き十四試局線の設計が始まった頃、問題が起こった。


 急降下で振動が発生すると言うことである。おかしい。四百二十ノットまで問題ないと言うはずだ。


「四百三十ノットくらいで振動が出る」


「機体の急降下制限速度は四百ノットです。出来たら出さないでください」


「こいつは軍用機だから、限界を超えることも当然ある。そこでおかしな事にならないか点検するのも横空の仕事だ」


 そう言われると戦闘中に計器を見続けてはいられないなと思う。


「どういう振動なのですか」


「補助翼が暴れる。四百三十ノットを超えると操縦桿に振動が伝わってきてな、僚機に確認してもらった所、補助翼が踊っていると言うことだ」


「補助翼ですか」


「補助翼だ。他には言うことは無いくらい良い飛行機だぞ。こいつは」


「持ち帰り検討します」


「頼みます。いくら制限速度以上とは言っても安心できる方が良いので」


 さてどうするかな。俺は十四試局戦で忙しい。そう言えばあの二人九十六戦の主翼を改修して良い結果を出していたな。会社に帰って暇してたらまた投げよう。そう、それが良い。


 正和15年夏、一二試艦戦は海軍零式艦上戦闘機として採用された。

 

 会社では関係者で宴会である。良い酒であった。あまり飲めないけど。


 まず地上での運用試験用として、一一型40機が海軍に納入された。


 まだ補助翼の振動問題は解決されなかった。


 海軍では、制限速度以内であり運用上問題なしとしていた。


 地上目標に対する射撃試験でも集弾性は良好で好評だった。


 いよいよ艦上機としてのデビューである二十一型の生産が始まった。初期ロット100機らしい。


 いつでも文句を言う奴はいるものだ。翼面荷重が高いと文句を言う。艦上機なのに着艦速度が速いとは何事だと、もっと翼面荷重を減らして着艦速度を下げると同時に旋回性能を上げろ。


 しばらくしたらいなくなった。疑問を抱いていると教えてくれた。


 前にGと言う奴がいた。

 十試艦攻の時、防弾を外せば性能は良くなると言って航空から外された奴だ。そいつの仲良しらしい。

 一二試の事を聞いて自分の考えと違うので文句を言いたいが航空に顔を出すわけには行かんから、仲良しを使ったらしい。あの仲良しももう航空から外されるだろう。


 だが気を付けろよ。Gの仲良しは30人いるらしい。



 着艦速度については、補助翼の幅を減らした時にフラップの幅は増やした。気休め程度だが多少は着陸しやすくなったと思いたい。



 思えば九十六戦で主翼の改修を手がけ、会社や海軍からも評価された。

 そして再び改修だ?零戦の補助翼振動問題の解決に当たれ?なんですか部長この仕事は。いや彼からも君たちなら出来ると聞いてね、お願いしたいのだ。この件を片付けてくれたら、今後零戦の改修は全て君たちに任せようと思う。どうかね。


 やります。必ずや解決いたしましょう。お任せください。彼らの努力が報いられる日は来るのだろうか。




「飛行長、新型は相当いいらしいな」


「はい、艦長、良かったですよ。ただ着艦速度が若干早めなので慣れるまで少し掛かると思います」


「早めって、九十九艦爆も早かったがそれ以上なのか」


「いえ、同程度と聞いています。横空の連中の話では運動性能が大変良いとのことです」


「ほう、それはすごいな。九十六よりもいいのか」


「低速では九十六の機動性に勝てる機体はそう無いでしょう。二百ノット以上の速度域では相手にならなかったようです。特に縦方向の機動力が全く違うみたいです」


「それは期待していいのかな、火龍の搭載機として」


「もちろんです」


「頼もしいな」


「八時の方向、機影多数接近中」


「来たかな」


「時間通りです」


「航海、風に立て、機関、増速、速力二十五ノット」


「飛行甲板に行きます」


「頼む」


「さて、新型を受領して戻ってきた連中を迎えてやるか」




 それはスマートな機体だった。見ただけで高性能を予感させる物だった。全機火龍上空を通過し左旋回で着艦体制に入る。


 最初は、あの尾翼の番号は戦闘機隊の隊長機か。


 さあ一発で決めるのか慎重にやり直しをするのかどっちかな。



海へ、ですので空母ですよね。

 

Gの扱いが少しひどい気もしますが、この程度でいいでしょう。


後始末を押しつけられるあの二人組には、後で良いことが起きるでしょう。


>今までの計算式が違っていたようで、速度が高くなると実際に受ける空気抵抗と計算上の空気抵抗の乖離が大きくなる

実際こうだったようです。式自体違っていたのか、挿入する係数などが違っていたのでしょうか。


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