双龍燃ゆる
少し違う世界線の日本、状況が太平楽を許してくれないようだ。
日本は生き残れるのか。
双龍とはどんな空母。
初投稿です。ぬるく見守ってください。
人名、あまり出ません。
会話7割です。
会話は作者が書きやすいようにしています。現実とはかなり違います。
作中の技術や人物像は架空の物です。深く突っ込まないでください。
山口多聞様の架空戦記創作大会2019春夏 参加作です。
申し訳ありません。期日を間違えフライング。
8/1まで休むかな。
8月4日 誤字修正 行間を空けました
双龍は燃えていた。
左側が特にひどく被弾したらしく、左舷に傾斜している。若干真ん中で折れているように見えるのは気のせいか。
すでに赤城は無く、加賀も黒煙を上げている。
雲間からの一撃だった。電探は帰還機が多く混乱しており味方機と判別が出来なかったらしい。機影の情報は知らせたが、有効に活用できなかったようだ。
新型の高射装置は威力を発揮したが、数が多かった。3隻に1隻あたり20機近く同時に来られた。高角砲と機銃で相当損害を与えたが、完全阻止には至らなかった。
帰還機の収容中だったことも被害の拡大につながった。奴らの空母は3隻だけでは無かったのか。哨戒網のどこかに穴があったのだろうか。
直掩機・帰還機とも燃料・残弾少なく遠距離阻止はできず、逆に落とされないよう逃げ惑うしか無かったようだ。
「艦長、飛行甲板が帰還機で埋まります。まだ上空に収容待ちの機体があります」
「損傷のひどい物から海上投棄、格納庫内の機体も同じだ。機種を問わずだ。甲板を開けろ。海水浴をさせるな。日没が近い、捜索が困難になる」
「了解」
「主計、本艦の被害は?」
「現在確認中ですが、直撃弾無し。至近弾2発。至近弾の被害は、左舷機銃が2群損傷使用不能です。死傷者は集計中です。浸水は左舷に軽微ですがあります。応急の結果、現在は止まっています。飛行甲板に損傷はありません。機関全力発揮可能です。舵も異常なしです。電探は正常に機能中」
「宜しい。本艦はまだやれるな」
「艦長」
「飛行長か。状態はどうだ。明日やれるか?」
「収容した内、直ちに再使用に耐えうる物は、戦闘機15艦攻12艦爆10です。明朝までに修理して使えそうな機体は、戦闘機8艦攻6艦爆8です。こちらは数に入れない方が良いかもしれません。補用機も使ってしまいましたので予備の機体はありません。出撃86機中未帰還15、搭乗員は死亡または行方不明が36名。負傷で任務に堪えられない者8名。搭乗員は機体より多く、士気も問題ありません。やれます」
「やられたな。そんなに厳しかったのか」
「相当前から迎撃を受けました。対空砲火も強力だったという事です。防弾がしっかりしていたから攻撃できました。防弾が無かったら未帰還機はさらに増えたし戦果もここまでは挙がらなかったでしょう。明日の攻撃でおそらく本艦の航空戦力は壊滅します」
「それでもやらなければな」
ミッドウェー南西の海上で日は暮れようとしていた。
夜の内に中破以上の損傷艦をまとめて内地に帰還させる決定が出た。ウェーク島まで持ちそうに無い損傷のひどい艦は自沈処分とされた。
昨日の海戦で、かなりの損害が出たが艦隊司令部はまだやる気でいるのだろうか。こちらはやる気でいるが。
昨日我が方は、中破以上の損害が空母は、赤城沈没・加賀中破・双龍大破、巡洋艦が、三隈大破・木曽大破・矢矧中破、駆逐艦が、8隻大中破となった。
三隈は機械室が全没で航行不能、上構にも損傷が多く自沈処分となった。
木曽は魚雷1発の被害だが、艦齢から来る疲労か浸水が止まらないようで、先程総員退艦命令が出た。
他駆逐艦が2隻自沈処分とされた。
双龍は大破だが自沈処分となっていない。双龍の艦長は半分でやれる。とか言っているようだが、半分てなんだ?
航空機も半数以上使えなくなった。赤城・加賀・双龍の機体があらかた失われたのが大きい。3隻で直援機以外出撃可能なのが戦闘機40艦攻28艦爆30でしか無い。一晩では使用可能にできない機体が多かったようだ。
夜明け前から水偵搭載の戦艦・巡洋艦から、すべての水偵が索敵に発進した。20機の索敵線だ。ただ昨日の結果、いそうな方向は予想できた。夜間20ノットで移動しても索敵線に引っかかるはずだと言うことだ。
攻撃力を重視し、空母の機体はすべて対艦装備で待機という命令が出ている。この状態で待機したくないのだが司令部に具申しても、対艦装備で待機の方針は変わらなかった。果たして20機の索敵で見つかるのか、見つからなかったらどうするのか、疑問は大きい。
お互いに無線封止している。電探も使うかどうか議論されたが、司令部では発見されるまで使わないという決定をした。
夜明け後の時間帯に敵の索敵機に見つかったようだ。直援機が追いかけている。無線封止解除・電波使用自由の連絡が来た。
こちらの索敵機はどうしているのだろう、と思っていたら、敵艦隊を発見したようだ。お互いに殴り合いらしい。
電探があるから一方的な奇襲は今後起こらないだろう。下手を打った方がやられるだけだ。
すでに全機甲板で待機している。一発食らわなくて良かった。一発食らっていたら赤城のようになる。
司令部から敵の位置情報が来た。90海里なんてすぐそこじゃないか。全機発艦1機も残さず。直援機は瑞鳳の機体に任せるようだ。
攻撃隊は行った。後はこちらが耐えるだけだな。と思ったら、なんだ霧島が回頭しているだと。同時に「空母は直衛艦とともに方位***で30海里後退」という命令。砲戦をやる気か?捕まるのか?索敵機の情報だと敵に損傷艦が混ざっていて速度が出ないようだ。
司令長官はハワイのエアカバーに入るまでに捕まえる気だろう。
赤城と加賀を見ていた若い造船士官たちがいた。
「あの3段空母とか正気か?」
「アレはひどい。将来、笑い話か話のネタになるかもしれん。英国のまねをしなくてもいいのにな」
「着艦と発艦を同時に出来るという触れ込みだが、実際出来るのだけど事故が恐ろしくてめったにやらないらしい」
「おまけに格納庫が狭くなって肝心の搭載機数が艦型の割に多くないという」
「何より居住性が最悪だ」
「アレは乗組員がかわいそうだ」
「俺たちに造らせてくれたら、ごつい奴を造ってやるのに」
「どんな奴?」
「ないしょ」
「ないしょ?」
「軍機にしてしまおう」
「何?どうせ計画倒れだろう?八八とかといっしょで」
「失礼な。俺たちがやればきちんとした傑作が出来るさ」
「おい、巻き込むなよ」
艦政本部長室にて
「君には空母の設計主査になってもらいたい」
「今度の計画のですか?いいのですか。私のような若輩者で」
「やりたくないのかね?無理なら他を当たるが」
「いえ、謹んで拝命いたします」
「うむ、しっかりやってくれ給え」
「それでお願いなのですが、面識がある人間の方がやりやすいので出来れば考慮していただけるとありがたいです」
「人員かね。海軍省との関係もあるができるだけ希望に添おうじゃ無いか」
「ありがとうございます」
「後日、詳細を知らせるのでそれまで英気を養ってくれ」
「良い船を造ります」
「期待しているよ」
艦政本部の一室では、
「よう、久しぶり」
「なあ、なんだこの空母の設計担当の面々は」
「なに、艦政本部も海軍省も赤城と加賀を見て運用実績とかを鑑みて、古いと言っては何か。空母について見識も無い先輩たちでは無く、若い力に期待といった所らしいよ」
「なあ、それ外で言うなよ。絶対だぞ。特に、譲らない人とかには」
「さすがに言えん。俺でもそういう配慮は出来る」
「そうか。では始めるか」
「まず概要だ。計画では2隻建造する。この書類を見て欲しい」
「何々?え?」
「わかるか?」
「わかるわ。どこの横槍だよ」
「艦隊と軍令部だよ。飛行機と搭乗員のことは考えていない。自分たちの訓練がやりやすければいいんだろう」
「やっぱおまえの口は危ない。しかし、右と左か」
「船体下部は共通。艦橋を左右に設置しろと」
「設計の手間が増える、図面が増えるし、工作も面倒になる。費用も掛かる。艦隊と軍令部の能無しめ」
「おまえの口も危ないよ」
「まあやるしか無いさ」
「と言うことで、基準排水量、1万5千トンの艦隊型空母2隻の設計を始める。
この排水量の制限は条約の残りだが、艦政本部・海軍省・艦隊との交渉で、有力な空母ができあがるなら、
鳳翔の廃艦も視野に入れるという言質を取ってきた。その分大型化しても良いと言うことだ」
「「「「「なんだと」」」」」
「そんなに驚かないでくれ。俺だってやる時にはやるんだよ」
「誰の弱みを握った。言ってみろ」
「え~と?たくさん?」
「「「「「なんだと」」」」」
艦政本部長室では、
「彼らに任せて大丈夫かな」
「鳳翔とか龍驤とか赤城とか加賀とか、もうああいう空母は勘弁して欲しいのですよ」
「そんなにひどいのか」
「鳳翔の時は、何が何でも世界最初の最初から空母として設計された船と言う名のために
ろくに内容を詰めもせずとりあえず感が満載ですから。龍驤はそれを多少手直ししたに過ぎません」
「赤城と加賀は」
「デカいので艦の据わりは良いのですが、速力・搭載機数・搭載機運用能力等、問題があります」
「改造空母だし仕方ない一面もあるが、居住性も悪いようだね」
「本土近海での短期作戦では問題も大きくはならないだろうと思いますが、遠距離・長期間の作戦行動でどれだけ乗組員に影響があるかはわかりません」
「遠距離・長期間の作戦行動とは、どこへ」
「最悪、欧州」
「欧州か。先の大戦でも行って大勢沈んだな」
「はい。私の同期も帰ってきませんでした」
「最悪と言うことは、あとは東か」
「はい」
「そうか、できるだけ彼らがやりやすいよう艦隊や軍令部の影響を排除してみよう。艦政本部内もだ」
「ありがとうございます。私もできる限り援助する所存です」
「うむ。頼むよ、金持ちの高野君」
新空母設計部では
「皆からの構想も集まったし、基本構想を練ろうと思う」
「そうだな。まずは予算から聞こう」
「予算はだ、なんと海軍らしくないぞ。けっこう潤沢だ」
「なんだそれ」
「実はな、ある博打打ちが先の大恐慌の前後でかなりもうけたらしい。それこそ国家予算並の金額らしいが」
「お前、まさかその博打打ちの高野さんの弱みを?」
「まあばれると、家庭不和とか出世に響くとか言うかな?なぜ高野さんとわかった?」
「そんな噂、海軍部内ではあの人しかいないだろう」
「まあ予算があると言うことは良いことだよ」
「よそには言えんな」
「あのー少佐、失礼ですがそのようなことをして大丈夫なのですか?」
「なんだ大尉、心配か。心配なら必要ない。本人から承諾済みだ」
「「「「「なんだと」」」」」
「では基本構想はこれで行くか。」
基準排水量 1万8千トン~2万3千トン 鳳翔は廃艦にする前提でいる。
全長 220~230メートル
水線幅 22~24メートル
船体はどうしても鋲構造でないと出来ない所以外全溶接構造とし、鋼材使用量を軽減しその分各種装備や防御力向上に回す。
機関
汽罐 艦本式ボイラー
主機 艦本式タービン
4軸推進
ボイラー・タービンとも基本的には最上級の物を使用する。
航続距離 8千~1万海里
舵 平行舵か副舵を備えた前後式
飛行甲板幅 24~28メートル
飛行甲板長さ 全長と同じ 艦首先端を飛行甲板先端と合わせ、艦内容積、特に格納庫周辺の容積を大きくする。
後部は舵取り機室後方までを格納甲板とし、以降短艇甲板とする。
格納庫 2段
エレベーター 3基
搭載機数 70機以上を目標 機体の大きさにより増減
装甲
機関室・弾薬庫・揮発油庫とも、垂直防御は20cm砲防御、水平防御は、25番の高度3千メートルからの水平爆撃に耐えうるものとする。舵取り機室も同様とする。なお、25番は通常、陸用では無い。
水雷防御は最上級を参考にする。
居住性
遠距離・長期間の作戦行動に耐え得るものとする。
対空兵装
12.7cm連装高角砲 片舷3基ないし4基
機銃 片舷8基以上(機銃については、海軍が各種テスト中である。現状では、保式13mm機銃)
上記を管制できる高射装置搭載
対艦兵装 搭載せず
対潜兵装 聴音機搭載
「さて、皆の衆。問題の艦橋と煙突だがどうしよう」
「左右対称にするのか煙突は右だけ艦橋は左右か」
「重量バランスからすれば艦橋と煙突は振り分けにしたいが、文句が来そうだな」
「煙路と艦橋基部が左右にあると格納庫が大変だぞ」
「アメリカの空母のような一体式はだめなのでしょうか?」
「アレは、重いよな。トップヘビーにならないか?友鶴の二の舞はいやだぞ」
「反対側を重くすればバランスは取れますが、復元性が悪くなりそうですね」
「そう言えば、全溶接構造と言うことですが、いろいろ問題があるようですけれども大丈夫なのでしょうか」
「うむ大尉、いい質問だ。溶接の問題は、我々があまりにも無知だったと言うことだよ」
「どういうことでしょうか」
「電気溶接に最適な鋼材、鋼材の切断など処理の仕方、溶接棒などあまりにも知識不足だった」
「では」
「うむ、それは解決できるというか、する。金持ちの博打打ちの伝で、ドイツから技術導入できることになった」
「間に合うのですか?」
「間に合うのでは無い、間に合わせるのだ。金持ちの博打打ちの力で」
「「「「「非道い」」」」」
双龍は大破!主人公?いきなり大丈夫か。
建造始まり。いいのかこれで。