プロローグ② ホモ爆誕
昨日はホント参ったぜ。幼馴染に告白ドッキリされるなんて。
てか今考えたら普通にひでー。俺が本気にしてたらどうするつもりだったんだよ。
立ち直れる自信ないぞ……
まぁ過ぎたことは仕方ない。今日も学校へ行くか。
俺は心が大きいから、小さいことは気にしないさ。
なんてったって、今日の弁当は俺の好きなカツサンドがあるんだから、こいつをただただ味わって食べるために心を静めて精神統一しないとだしな。
「はよーっす」
いつもの気の抜けた挨拶をして教室へ入ると、なんだか様子がおかしいことに気がついた。
なんかみんなヒソヒソしてるな……。なにか事件でもあったのだろうか?
近くにいつも話してる男友達の集団がいるので聞いてみる。
「なぁ、なんかあったのか? 妙に殺伐としてて怖いんだけど」
「うわ、出たよホモ」
「きっしょー!」
「俺に近づくなよ……」
「え? ホモ? どうしたんだよお前ら」
いつもと違う態度に不安を感じる。
茶化してるとか、そういうのではない心の底からの嫌悪感をむき出しにされて、冷たい汗が体をつたっていく。
この妙な空気感は俺に向けた憎悪だったのか?
でもなんでだ? 全く心当たりがない。
当然俺はノンケだし、ホモとは一生無縁のものだと思っている。
「あなた、ホモなんでしょ? 宇っちから聞いたよ?」
クラスカーストでも上位に位置する女子が言い放った。
宇っちとは幼馴染の宇千のことであるが、それよりどういうことか、全く理解ができない。
「伊豆沼さんが告白したのに『俺、実はホモだから』って断ったんでしょ? サイテー!」
続けてカースト上位にいつもひっついている金魚のフン子ちゃんに、意味のわからないことを言われるが、意味がわからなさすぎて頭に入ってこない。
まさか、あいつが腹いせに嘘っぱちを振りまいたのか?
あの時気にしているようには見えなかったのに……
「勘違いだ、俺はホモじゃない」と弁明するも、一度集団心理に取り巻かれた中学生には全く聞き入れてもらえずに、ついにはホモコールまで始まってしまった。
空いたドアの向こう側で宇千がこっちを見ていたが、こちらに気づいたのかいなくなってしまった。
あの野郎、絶対許さねぇ……
「クソっ」とつぶやき、続けて俺は叫んだ
「もういい、もういいよ! そんなにお望みならホモでもなんでもなってやるよ!」
俺はもう、ホモになると決めた。
その日の昼休み一人、塩味の強いカツサンドを食べながら。