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嵐のあとに凪が来る  作者: 花染
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 次の日、目を覚ますと先生が台所に立っていた。珍しい。何時もなら私が起こしに行くまで寝ているはずなのに彼は、起きている。そんな事を思いながら起きがあり時間を見た。6時ちょうど。ますます珍しく私が起きたのに気が付き先生は、テーブルに朝ごはんを並べた。


「お早う。アミー」

「お早うございます」


 サラダに目玉焼きとベーコン。そしてトーストにコーヒー。意外にも普通の料理を作っていた先生は、ニッコリ微笑み


「お食べ」

「頂きます」


 先生と私は、椅子に座り食べ始めた。考えてみると始めて先生の手料理食べた気がする。と言うか、この人料理が出来るんだ。


「アミーの家って一人暮らしにしては、ちゃんと調味料とか色々揃っているし、冷蔵庫に下拵えをしてあるジップロックに入った鶏肉があるのが一番びっくりしたよ」

「あ、それ今日の晩御飯に唐揚げを作ろうと思って昨日の寝る前に準備をしたんです。生姜と醤油と酒、にんにくを混ぜたタレに一晩漬けると肉が柔らかなって味も美味しくなるんですよ」


 そう言いながらパンにバターを塗って一口食べた。一口、二口食べた後テレビをつけた。ニュース番組が、流れ昨日の出来事や犯罪。政治関係と放送され天気予報へと入ろうとした直後になって、アナウンサーが騒ぎ出した。


「どうしたんだろ?」

「解りませんが、明らかに様子が可笑しいですね」


 青ざめた顔に戸惑い騒めく声。そして、少し落ち着いた頃に発した言葉は、


「速報です。天気予報士のメリーさんが、先程、お亡くなりました。原因は、不明です。現場の人によるとメリーさんの体が見る見る膨らみ破裂をした様子だと言っていました。

 繰り返します。天気予報士のメリーがお亡くなりました。原因は、分かり次第お伝えします」


 体が見る見るうちに膨らむ。破裂をする。原因は、不明。

 ヘビトカゲのエルと同じ症状だ。しかし、人間が幻獣たちと同じ症状になるとは、限らない。何故ならヘビトカゲには、魔力の抗体が無いから分離吸収が出来なかったと考えられる。人間には、遺伝子的に魔法を持たない者でも吸収は、出来るはずだ。


 しかし、体質や基準値を超える量を摂取すれば、突然ながら人間にもあり得ないとは、言えない。だから魔力補給剤には、注意書きにも書いてある。



「人が膨らむ……アミーが言っていたヘビトカゲと同じ原因なのかな?」

「解りません。しかし、私の考えが正しいかったら可能性的には、無くはないです」


 私は、朝ごはんを食べ終わりコーヒーを一口飲んだ。すると先生が、サラダを食べながらこう言った。


「遺伝子の記憶に魔力を分解する機能が生まれつき無いか、弱いかにより魔力を分解吸収が出来ない生命体に多量に摂取した場合、どうなると思う?」

「………………


 先生は、何者かが人間や幻獣を使って実験をしていると考えているんですか?」

「その何者かは、これを“マウス実験”とかって言いそうだね。


 ご馳走さま」


 マウス実験。人や幻獣たちを実験対象に考えるのは、やはり可笑しい。しかし“研究者としての欲求”だと言われる私欲となんとも言えない気持ちになる。


 何者かは、解らないが私は、分かりやすくAと言う事にする。


「とりあえず、今考えている事は、推論しかない。推論を本当にするには、実験して結果を求めるしか無いんだから、行こう!」

「……そうですね」


 色々と考えていても見えないものは、見えない。私たちは、調べて、調べて、調べ尽くして見えてくる答えを出すしかない。


 その結果が、どんな事であろうと私たちは、それを受け入れるしかないだろう。


「昨日のことがありますし、先生は、私の影の中へ入っといて下さいね」

「解ったよ。よろしくね。アミー」


 そう言って先生は、ニッコリ微笑んだ。私は、影の魔法で先生を私の影の中へと入れ歩き出し家から出て辺りを見た。不審な車やバイク、怪しい人は、アパートの周りには、居ない事を確認して、バイクがある先生の家の駐車場へと向かった。


 昨日は、色々あってそのままにしてバイクを置いて帰ったけれど、どうやら被害はないようだ。先生の車も車庫の中にあるバイクもなんともない。


「魔法をかけられている可能性があるから気おつけてね」

「解っています」


 見た目は、被害がないかも知れないが魔法をかけられているかもしれない。見た感じは、何もされていない。私は、エンジンをかけバイクに乗って施設へと向かった。


 無事にたどり着いた私たちは、駐車場にバイクを置いて、あたりを見てから魔法を解除した。


「なんとかたどり着いたね」

「はい。しかし油断は、出来ませんよ。いつ先生の命を狙ってくるか解りませんからね」


 そう言って途中、君にエールを買うために自動販売機へより研究室へ向かう事にした。しかし、研究室へ向かう前にロビーに入ると何か騒がしい。


「あ、レイディアント博士!見てください!新種が発見されたんです!」

「新種?」


 先生は、疑問に思いながら男性が持つ写真を見て、首を傾げた。私もチラリと見ると確かに見た目は、ヘビトカゲのようだが違う。模様も背格好も違う別の生物のように感じた。


「確か沼エリアには、卵も見つかっていたね。それが、羽化したと言う訳か……」

「卵だけでも判別が難しかったですから、やっと羽化した今、詳しく生体や危険性と食餌法の分析を調べる必要性があります。

 ヘビトカゲの突然変異とも考えられますし」

「そうだな。もし本当に新種で安全だと判明したら3年ぶりの発見になるから慎重に研究するよ」


 そう言い微笑んだ後、走って何処かへ向かった。また沼エリア。昨日は、1匹のヘビトカゲのエルが死んだ。今日は、卵が孵化をした。偶然なのだろうか?必然なのだろうか?


 君にエールを見て私は、考えた。


「アミー。行くよ」

「はい」


 あと少し、あと少しでこの問題も解る。もし魔法の暴走ならこの飲み物は、人も生き物も身体に害する危険な飲料水となり、私たちは、これを作っている製造販売先へ向かわなければならなくなる事も理解している。


 この先起きる事も予想すれば解る事も知らずに、私たちは、研究を始めた。


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