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先生は、バイクを走らし私は、影の中から先生を見ていた。こうしてみると先生は、やっぱりカッコいい。そして、ズルイ。
先生は、バイクを止めて、目を細めた。先生の目の先には、見慣れない車と先生の家。
「アミー。僕が“良いよ”って言うまでは、僕の影から出たらダメだからね」
そう言って、家の前までバイクで走り止めた。先生は、何事も無かったように家に入り電気をつけ壁に手をつけた。するとドアノブが現れ先生は、普通にそこへ入っていった。
「出てきて良いよ」
その言葉を聞いて私は、影から出ることにした。壁から出来たこの空間は、本来ない部屋。先生が作り上げた空間だ。当然に先生は、さっき作ったドアノブは、もう既に無くあちら側からは、開ける事が出来ない。
これが先生の魔法の一つだ。
「ここなら少しは、安全ですね」
「そうとは、言えないかもよ」
そう言った直後、チャイムの音が聞こえた。何度かなり突然電気が消えだと思った瞬間、窓ガラスが割れる音が聞こえ、覆面を被った数人がお潜ろに入って来た。
あの背格好は、さっきの人だと思った瞬間、部屋の隅から隅まで調べ始めた。
「居たか?」
「居ません」
「ッチ…もっと探せ!」
そう言って、辺りを散らかしだした。
この空間は、相手には、こちらの様子が見えないが私たちは、あちらの様子が見える。はっきりと見える。
明らかに先生を狙っている。けれど、私たちの魔法について詳しくは、知らないようだ。ここは、なにかをするには、チャンスと言えばチャンスだが、何かをすれば私たちの魔法について、バレてしまう。
しかしながら私の雷魔法については、そこそこ有名なため当然と言って良いほどに対策は、しているだろう。
「アミー。何かをしようと思っているだろうけど、辞めなさい。此処は、大人しく見てるんだ」
そう言って、先生が作り上げた空間にあるソファに座った。この空間は、先生の想像で作り上げている。
この世界の魔法の理となる属性は、火、水、地、風、光、闇…そして、無となる。
私の魔法は、大まかに言うと光と闇。そして、先生は、無と光だ。
光と闇、無の魔法は、レア魔法と言われ魔力を補給するに至って普通に生きていれば得る事が出来る。だから魔力補給剤の対象外になってしまうのだ。
この人たちは、私たちの魔法をよく知らないと言うことは、私たちのステータスを調べていないとなる。表面だけで、見た目だけで判断をしている。
私は、見た目は、普通の女性。そして先生は、ひ弱そうな男性。知識と戦略に置いて私達を見下して、ごついゴリゴリの男性たちが、先生の家を荒らしているとなる。
「見つからないですよね」
「大丈夫だよ。僕が魔法を解除しない限り此処は、誰にも見つからないよ」
「しかしあの人たちは、先生が家に入るのを見てこうして、あそこにいます。明らかに狙った犯行だと思います。明日からどうしたら……」
いくら魔法者だと言っても人を殺したり犯罪じみた行為は、刑務所行きになる。当然、あの人たちがやっている行為も同様だ。私は、スマホを取り出して警察署へ電話する事にした。
数分後、家の近くからパトカーのサイレンが聞こえたことにより男性たちは、顔色を変えた。
「逃げるぞ!」
「でも、まだ奴は、見つかっていません!」
「捕まら方がダメだろ!」
そう言って家から出ようとしたが、いつの間にかとい言っても良いほどに先生は、魔法で空間を捻じ曲げルービックキューブの様な四角い箱に彼らを閉じ込めた。
「なんだこれは!!」
「出られないぞ!」
ゴキブリホイホイのように捕まった男性は、壁を叩くが固くて壊れない。
体当たりをしても、何をやっても壊れない。
「アミー。念のためにあの箱に電気でも走られ置いてね」
「え…あ、はい」
先生は、笑顔で言っているが、目は、笑っていない。どうやら、家を荒らされた事があまりにも気にくわない様だ。
私は、箱に向けて人差し指を向け壁の内面だけ電気を走らした。
「もしもし、お兄さん方聞こえますか?」
「んな!誰だ!お前は!?」
「君たちが探していた人だよ」
「!!!」
「お兄さん方、壁を触らない方が良いよ。その壁には、電気が流れているから触れると大変なことになるかもね。あ!でも、もう大丈夫。すぐに警察に引き渡すから大人しくしていたら無傷で、牢屋に入れてくれるかもね」
優しく言っているが、何処と無くトゲある。先生は、どうやら内心は、ブチ切れているみたいだ。それもそうだ。この家は、まだローンも終わっていないらしく一人暮らしにしては、大きいが、将来のためにと買ったらしい。その上にお気に入りのソファや服、インテリアなども壊された先生にとっていくら温厚な性格でも怒らない方が可笑しいと言っても良いだろう。大人しくなった男たちは、あっさり警察に連れられて行った。
しかしながら窓ガラスは、破られ、各部屋は、荒らされた先生の家は、すぐに住めるような雰囲気ではない。いくら私たちでも復元する魔法は、持ち合わせていないので、ここは、仕方がないからこう言うしかない。
「先生。とりあえずしばらく私の家に泊まりますか?」
そう言った瞬間に先生の機嫌は、一瞬にして良くなった。
私の家と言っても先生みたいな一戸建ての家では無くここから三件先のアパートに私は、一人で住んでいる。私は、先生を連れて家に帰ることにした。もし、万が一私の家にも何かされていたらと考えたわたしは、緊張しながらも鍵を開けドアを開いたが、何もされていない。やはり狙いは、先生だと言うことだ。
「とりあえず、今からお風呂を沸かすので、沸いたら先に入っていて下さい。その間に私は、ご飯の準備をしています」
「解ったよ」
そう言って先生は、ソファに座った。それをみた私は、お風呂へ向かいスイッチを入れた。あ、そうだ。この前買った入浴剤があったはず。そう思い出した私は、棚から入浴剤を取り出した。
「“森林気分”先生って入浴剤は、嫌うかな?」
まー良いや。入れちゃおう。入浴剤を入れて、ぷくぷくと泡が吹き出てきた同時に少しずつ緑色に変わった。
それをみた私は、ふとあの沼エリアの事を思い出した。
「あの大きな沼に1錠の魔力補給剤を入れただけで、あれだけの反応は、可笑しい……」
1錠ではない。いや君にエールの1缶でも可笑しい。
1缶が、230mlぐらいだと考えると沼エリアにある沼は、確か……テニスコートの横幅ぐらいだから10メートル辺り。深さ推定は、泥などを含めて70センチぐらい水位だと考えると、明らかに計算が合わない。一本だと考えると君にエールの濃度的にも魔力補給剤の濃度的にもあの割りに合わない濃さになるし、人間自体に何か異常があっていたもおかしくない。
生活習慣病気や魔力異常など、魔法が暴走してもおかしくない。
「魔法が暴走……?」
もし、あの爆発が、破裂が魔法の暴走…いや魔力の暴走だと考えれば、魔力が低いもの、魔法が使えないものが、摂取すると魔力が増幅し魔力を分解する機能が混雑をしてしまい、逃げ場所を失った魔力は、体から出ようとすると考える。そうすると血管を広げ、血の流れが速くなると同時に体は、浮腫む。皮膚は、伸縮性が高いが限界はある。浮腫みに浮腫んで、浮腫みまくり、血管が切れたと同時に皮膚も引き千切れ破裂したように見えた…
「……」
私は、どうやらやってはいけないミスをした。
「アミー」
「はぐっ!」
口から心臓が出そうな勢いで驚いた私は、後ろを振り向くとニコニコと楽しそうに微笑む先生がいた。
「あ!すみません。晩ごはんの準備に取り掛からないとダメでしたね」
私は、慌てて台所へ向かい料理を始める事にした。