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嵐のあとに凪が来る  作者: 花染
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 海エリアについた私たちは、早速、海水をビーカーに入れることにした。海エリアと言っても大きな水槽があるだけだ。いわば、水族館の様な物に人魚や海に生息する幻獣たちがいる。


 同じ水関係だが、淡水と海水とは、違うことも解っているが、念のために海水を調べるのも間違いではない。


「ジジラジ?」


 ふと、海にふんした水槽から人魚が顔を覗かして何かを言っていることに気がついた。確か、あの意味は《何か用?》だ。えーっとこう言う時は…私が言葉を言おうとすると先生は、私に向けてウィンクをした。


「ラミャアルス」

「アルス?ジジ?」

「アミナス、コリナザリュ」

「エルス!?」

「エルス。マケルサミワン、エーゥエラ」


 先生と人魚の会話は、何となく解るが、完璧とは、言えない。きっと、ヘビトカゲのエルのこと、沼エリアの水のことを言っているのだろう。


 人魚は、少しだけ考え私を見て、先生を見て何かを言って、潜っていった。私は、首を傾げ先生を見るとニッコリ微笑みんだ。何を言われたか知りたいけど、きっと言わないだろう。それよりも私が気になることは、それではない。


「人魚たちは、何か知っていましたか?」

「何も知らない見たい」

「そうですか」


 この件で何度も研究室に何度向かうのは、も面倒だからと持ってきた検査キットを取り出しビーカーに入れた海水を簡単に調べることにした私を見た先生は、隣に座り顔を覗かせる。


「どう?何か解りそう?」

「詳しくは、やはり研究室で調べた方が良いですが…何も異常はないと見られます」

「そうか……」


 先生は、考え込み何か思いついたのか立ち上がった。


「どうかしたんですか?」

「君にエールをもっと詳しく調べた方が良いかもしれない」


 先生は、凛とした顔で、言った。しかしその瞬間お腹の音がなり恥かしそうにまたこう言った。


「もう良い時間だから明日調べよう!」

「そうですね」


 そう言って私は、検査キットをしまうことにした。それを見た先生は、座り込み


「手伝うよ」

「ありがとうございます」


 そう言って微笑むと先生は、私の頭を撫でて微笑み片付けるのを手伝ってくれた。


 先生は、私の事が本当に好きだと言うのが本当に解る。行動から接し方から私を触る手まで何もかも優しい。どうして、こんなにも私のことが好きなのだろ?


 私は、私のことが嫌いだ。


「アミー。帰るよ」


 あっという間に片付け終わり先生と私は、海エリアを後にした。


「先生は、帰ったら何を食べるんですか?」

「考えてないな〜ん〜そうだな……」

「なら、私の家に来ませんか?近所ですし…それにどうせ先生の事だからまた偏った食生活をしているだろうと思いますので、ご馳走しますよ」


 それを聞いた先生は、目を輝かせ両肩を持った。そして、口元にヨダレを垂らしてこう言った。


「良いの?」

「良いですよ。何時もの事ですし」


 その言葉を聞いた先生は、嬉しそうな笑顔で、明るい笑顔でルンルンとスキップをしそうな勢いで、男子更衣室へと消えていった。


 まずい事を言ってしまった様な気がするけど、先生の弟子として、先生の体調管理も仕事のうちだし、いや、先生にとってご褒美にしかならない様な気がする。


 それよりも一人暮らしの家に男を連れ込むのは、おかしいよね?でも、でも…逆でも可笑しい。というか、今更後悔してももう遅いよね。仕方がないから自分の発言に後悔しつつも私服に着替えた私は、先生が待つ駐輪場へ向かった。


「お待たせしました」

「良いよ。アミーのバイクってこれだよね?」

「はい。あ…」


 そう言えば、どちらにしても私は、先生と一緒に帰る選択しかなった。


 何故なら私は、今日も寝坊した先生を起こして連れて来たのだから先生には、交通手段が徒歩か私のバイクの後ろに乗るか、私が後ろに乗るかしかない。


「僕が運転するから後ろ乗りなよ」


 そう言って先生は、ヘルメットをつけバイクにまたがった。私は、ため息をはき後ろに座ったのを確信して、動き始めた。


 走行中私は、あのヘビトカゲがいる沼エリアについて考えた。


 あそこは、ヘビトカゲ以外にも幻獣は、いる。しかし、エルしか異常は、無かった。

 君にエールや魔力補給剤を誤って飲んだとしても生物に害するものは、無いはず。


 しかし、それは、確証もない。確定でもない。だから、明日もう一度、調べる事になったが、何も無かった場合の事も考えなければならない。


「アミー。聞こえるかい?」

「何ですか?」

「これから言う事を黙ってよく聞くんだよ」


 先生は、ミラーを見ながら私にこう言った。


「赤い車にどうやら後をつけられている見たい」


 後をつけられている。車に後を追われている事は、滅多にない。別にやましい事も無いのに…たまたまだろうか、偶然なのだろうか解らないが、ずっといるらしい。


「信号が変わったらスピードを出して3つ目の少しだけ細い交差点に曲がった瞬間にあの魔法を使って」


 あの魔法。その意味を理解した私は、頷き先生の体をぎゅっと抱きしめた。


「行くよ。さん、にい、いち…っ!」


 先生は、猛スピードでバイクを走らせた。それに反応したのか車もスピードを上げ追いかける。相手は、車。当然追いつかれる。


 1本目、2本目と交差点を通り過ぎそして、3本目。先生は、言った通り曲がり、私は、タイミングを見計らって、魔法を発動した。


 私の三つ目の魔法。それは、影に溶ける魔法。私自身も当然、あらゆる物を影の中に入る事が出来る。私は、バイクと先生と私自身を建物の影の中に入る。


 そうと知らない追って来た車は、停止し数名の人物が出てきた。


 私と先生は、口を閉じその様子を見る事にした。


「消えた?」

「魔法か何かか?」

「解りません」


 そう言って辺りを見回し、何処かに電話をして車は、何処かへと向かって行ってしまった。ホッとしたのか私は、全身の力が抜け魔法をいつのまにか解除をしていた。


「あれは、一体何ですか?」

「さぁ。僕の才能に嫉妬する人もいるからその中の一人だと思う。


 ごめんね。アミー。怖い思いをさせたね」

「別に良いですよ」


 それも解っていて私は、先生に弟子入りをしたんだ。でも、この事は、先生には、秘密だけど。


「とりあえず家に帰ろう」

「でも、見張りとかいるのでは?」


 先生は、バイクにまたがり私を見ながらこう言った。


「アミーは、僕の影の中に隠れといて。僕に考えがあるんだ」


 そう言ってニッコリ微笑んだ。

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