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粘液で食べ物を溶かして食べる。粘液で溶かすことが出来ないこの子は、もう既に運命は、1つしかない。
「食べ物を溶かすことが出来ないエルは、死んでしまうって事?」
「そうなります…」
「何か助かる方法は?」
「無い……です」
私の知識では、解らない。先生なら何か分かるかも知れないけど、彼には、あまり頼りたく無いのも1つある。
「アミー研究員!エルがっ!」
ふとエルを見ると苦しそうに動き出し二歩ほど歩き出し少しずつ少しずつ膨らみ出した。
「エル!」
しかし彼女は、エルを抱きしめようとした瞬間にエルは、風船が破裂したようにパンっと爆発した。
「いやああああ!」
エルの血塗れになった彼女は、涙を流し座り込んだ。なんとも言えない死に方で、ほんの一瞬でも助ける方法も見つける前にエルは、死んだ。
そして彼女が、こうも泣くのもきっとエルを含めてヘビトカゲの飼育係りだからこそ感情的になり涙を流しているとなる。
「アミー研究員、勝手だけど少しだけ一人にして」
「解りました。私は、ヘビトカゲがいる沼エリアへ行っています」
そう言って、その場を後にした。あの死に方は、明らかにおかしい。粘液異常。体が膨れ破裂。何かに怯えている。
何かに怯えているのは、死を目前とした瞬間だとすれば、粘液異常は、ストレス。しかし、破裂がおかしい。まるでお腹に空気を入れた様な様子だった。
沼エリアへ着いた私は、あたりを見てヘビトカゲを見てみた。皮膚の色も粘液も正常。そして、あたりの環境も変わった事も無い。しかし念のために…
「すみません。少しここの沼の水の分析をする為に少しだけ貰っても良いでしょうか?」
「はい。あ、私がやりましょうか?相手は、水ですし」
「お願いします」
そう言って水を分析をすると、ほんの僅かだが、本来ありえない物が水に含まれていることに気づいた。これは、前に一度水と同じ成分を見たことある。これは、確か
「君にエール」
「え?」
「魔力補給液ですよ。知っていますよね」
「知っていますけど…どうして、こんな所に?」
確かにエリア内は、飲食禁止だ。魔力補給液である君にエールも魔力補給剤もエリア内にある沼の水に含まれるのは、可笑しい。
「解りませんが、確実なのは、ここで誰かが魔力補給剤を飲もうとして、落としたか、行為的に行ったか、でしょう」
「誰かがって」
しかし、魔力補給剤が原因で、エルが死んだと言うのは、信憑性が欠ける。なぜなら、そうだとすればエルだけではなくあの沼エリアにきるヘビトカゲが同じようにならないと可笑しい。
「対象外が飲んでもただのジュースにしかならない物を幻獣たちが何か異変が起きるというのもありえない話ですが、念のために飲食をしている人を見つけ次第、注意と警告をお願いします」
「解りました」
私は、立ち上がり部屋から出てて歩きながら考えた。
人間が飲んでも平気でも幻獣や動物達には、毒となる物は、当然ある。しかし成分的にそれは、ありえないだろう。
だとすれば、誰かの魔法でエルが死んだと考えた方が、可能性的に大きい。しかし、誰が?何のために?どうして?
「アミー」
後ろからふわっと抱きしめるこの声とこの行為をするのは、一人しかいない。
「先生。やめて下さい」
「もう終わった?」
「終わっていません」
先生は、再び私に飴を渡しニッコリ微笑んだ。
「僕が出来ることは、何でも言ってくれると嬉しいな」
「……」
先生に相談するのも1つの手だ。先生の弟子である私は、みんなの期待に応える義務もある。でも……でも……
「あの、先生」
私は、やっぱり話すことにした…すると先生も渋い顔をして、私を見る。
「何か解りましたか?」
「何も全然、解らない!」
そう気持ちいいほどの綺麗な笑顔で、先生は、言った。先生が解らない事なのに私が解るわけがない。
悔しいけど、悔しいけど、こんなだけどこの人は、天才だから何か解るって思ってた私がバカだった。
「それよりもいい加減に離してください。こんなスキンシップを何時もするから変な噂もされるんですよ」
「師弟なのに付き合っているって噂かい?アミーは、そん事を気にしているのかい?」
「一様、私も愛する乙女です。先生のスキンシップによって、恋愛も遅れてしまうかも知れないですよ。責任とってくれるんですか?」
その言葉に先生は、抱きしめた手を離し私の手を握った。
「責任とるよ」
そう言った。思わず言ったのは、良いけれど…いや、これは、良くない。なぜならこの人は、異常までも私の事が好きなのだ。
好きだから後ろから抱きつくし、好きだから人の飲み物を飲もうとする。私が初めて弟子入りした時にどうやら一目惚れしたらしい。
普通は、逆だ。普通のこう言う物語は、弟子が師匠に恋をする物語になるはずだが、違う。違う。
私は、先生の憧れも、尊敬もしているけれど…恋までは、いかない。
「本題に戻るけど、他のエリア…例えば海エリアへ行ってみたらどうだい?」
「海エリアですか?そうですね…」
海エリアには、確か人魚がいる。人魚は、私たち人間よりも知識が豊富だ。聞くのも良いが、人魚の言葉は、私たちと違う。理解するのに会話するのに時間がいるけれど、彼女達の意見も知りたい。
「人魚の意見も知りたいですし、行きますね」
そう言って行こうと先生は、手を繋いだまま歩き出した。
「僕も行くよ」
再びニッコリ微笑んだ。私は、先生も結局巻き込むことになってしまった。