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ある日、突然に偶然に人類初と言っても良い程で、誰もが憧れた夢を見ていた不思議な力。魔法と言う物が、人々の指先から発動するようになった。
火、水、地、風などと言った魔法が1種類だけ使える者を単体魔法者と言って、1つ以上を多種魔法者と言い、魔法が使えない者を否魔法者と言われていた。
魔法が使える者によって暮らしも豊かになり、医療や教育、生態系にも進歩しあらゆる事が可能になった現在社会。私は、世界的有名で、天才と言っても良い程の多種魔法者の生物学の博士“レディアント”の弟子をやっている。
「アミー」
「はい。先生」
私は、呼ばれるままレイディアント博士の所へ向かった。私にとって彼、レイディアント博士は、博士と言うよりも先生って感じたからそう言っている。
先生は、数年前に開発した新生き物を育成する為に新たに研究施設を作ったが、今年その研究施設を一般的に公開することによって出入り出来る動物園的な設備として、整える事にした。
「先生。どうして、研究施設を一般公開に?」
「この子達は、生まれたその日から研究されて、外の世界を知らないまま、誰も知らないまま死んでいくんだ。少しでも多くの人に知って欲しくてこうしたのさ」
そう言って先生は、窓ガラスから見える動物たちを見ながら言った。確かにそう。でも、私たち生物を扱う研究者は、それを理解しなければならない。可哀想だと思っては、ならないとある人から言われた事がある。
当然、研究者から後ろから刺されても良いことを平気で先生は、やっている事は、私でも分かる。
「本当は、檻を壊して外の世界へ連れて行きたいけど、いくら安全な生態系でも、何をするか解らないからね」
「そうですよね。あの子達は、可愛い顔をしているのにいつ私を食べようかって思っているだろうしね」
「あはは!それは、きっと無理だよ。アミーの雷魔法は、強烈だから君には、逆らうことは、しないよ」
そう言いながら先生は、ポケットから飴を取り出した。私は、飴を受けてとり
「私は、主体が雷魔法だけど一様、私も多属性魔法者ですっ!」
「へぇーあと何と何かな?」
そう言って、先生は、笑いながら私をおちょくる。私は、頬をふくらみ持っていた飴を舐めた。
「どうせ私は、雷魔法以外の魔法操作が苦手ですよーっだ!あ、でも、先生のお陰で治癒魔法が少しだけ扱えるようになりました」
「それは、良かった。アミーは、あと何種類の魔法が使えるんだい?」
そう言いながら先生と私は、建物の庭と言われる場所を歩いていた。
「あとは……って先生測りましたね」
自分の使える魔法を言う事は、自分の弱点もバレてしまう事になる。弱点を教える事は、何がダメなのかと言うと、万が一に自分の身に何が起きた時、命のピンチになった時、誘拐などされた時に自分の魔法と相性が悪い状況になる可能性があるからだ。
魔法は、悪事に加担しては、ならない。それが先生の教えた。
「そうだけど?」
「それよりも先生は、私が使える魔法を知っていますよね?」
「知ってるよ。いくら師匠である僕でも外で使える魔法を教える言うのは、タブーだよ。アミー」
「はーい」
時々先生は、私を試す。きっとそれは、私のためだと思う。しかし、でも、私は、天才であり優秀な先生に魔法について教えてもらっては、いない。
不満といえば不満だが、私が先生に憧れて無理やり弟子にしてもらっている訳だからわがままは、言えない。
「アミー。喉乾かない?」
「あ、私は、いりません。今日もマイボトルを持っていますので」
そう言って私は、水筒を見せた。すると、先生は、それを取ろうとするが私は、素早く水筒を鞄の中にしまった。
「自動販売機を探してください」
「ハハ!そうだね。ちょうどあそこにあったよ」
そう言って、先生は、走って転がっている空き缶を踏み転んだ。転がった空き缶を拾い先生の所へ向かった。
「大丈夫ですか?」
「平気だよ。にしても誰だよ!ポイ捨てをしたのはっ!」
先生膨れた顔で、私が持っている空き缶を見て、首を傾げた。
「最近そのジュースをよく見かけるね。えーっと」
「“君にエール”ですか?
これは、否魔法者には、効果が無い普通のジュースですが、魔法者の為のエナジードリンクらしいです。なんと言っても魔法の使いすぎたて疲れた時に飲む魔力補給剤が液体になったものですから魔法者の中では、話題ですよ」
そう言いながら私は、空き缶をゴミ箱に捨てた。
私たち魔法者は、魔力を補給するとは、食べ物と同じ、火の魔法者は、火を食べる。水の魔法者は、水を食べるなど、自分の魔力に応じて、魔法によって、補給するやり方が違う。自分の魔法と異なる物を食べても無意味か、最悪の場合死んでしまう事もある。
しかし、魔力補給剤は、あらゆる魔力を組み合わせどんな魔法者でも効果がある最近開発された薬で、君にエールと言うのは、それを液体にしたもの。
「あ、この自動販売機にもありますね。一本430円…高い」
「アミーは、飲んだことがあるのかい?」
「ありません。私は、魔力補給剤は、適応外ですから飲んだから死にます」
「え!?」
「嘘です。あ、でも適応外なのは、本当ですよ。私の魔法なんて、こんなのに入ったら危険ですよ」
先生は、呆れた顔で、ため息を吐きニッコリ微笑みコーヒーを買った。しかも甘いやつ。先生曰く、脳が糖分を欲しているらしい。だから、何時も飴を持っているし、私に飴をくれる。周りの人にも飴をあげる。そ言うことから先生のあだ名は、“雨配りお兄さん”だ。
コーヒーを飲んで、空を見た。
「アミーさん少しいいかしら」
遠くから私を呼ぶ声。そこにいるのは、私と同じ服を着た人たちがいる。私は、先生を見て
「すみません。少しだけ行ってきますね。先生も早くお仕事を開始をした方が良いと思いますよ」
「これを飲み終わったらそうするよ。アミー研究員」
先生は、態とらしい笑顔で言った。
私は、走って私と同じ研究員の人たちの所へ向かった。
「あの、ヘビトカゲのエルの様子がおかしいの。見てもらいないかしら?」
「良いですよ」
私は、そう言って施設へと入った。
私たちが、研究してきた生命体の噂がある戦争に使える危険生命体“キメラ”の研究だ。キメラとは、同一の個体内に異なる遺伝子情報を持つ細胞を持つ生命体の事。しかし同一の遺伝子情報を持つ雑種などは、キメラでは無い。
確かにここに居る生命体は、キメラに最も等しい。しかし、人に害を与える生き物は、一切いない。人と協力し合い、人と分かち合う生命体ばかりだ。だから私たちは、彼らをキメラとは、言わない。“幻獣”と呼んでいる。
そして、私は、幻獣たちに
「エル。アミーが来たわよ」
そう言って、彼女は、ヘビトカゲのエルを呼んだ。するとエルは、近くにある大きな穴へ逃げていた。
そう、私は、幻獣たちに嫌われている。
「やっぱり、アミー研究員の雷魔法が、怖いのね…どうしましょう…」
「大丈夫ですよ。こんなのは、日常茶飯事ですから慣れっこです」
そう言って、エルがいる穴へ手を入れエルを捕まえた。それを見た彼女は、驚いた顔で固まった。どうしてだろう?何か間違いをしたのだろうか?
「噛まれるのは、怖くないの?」
「私の魔法を恐れているこの子たちが、私の手を噛むことは、無いです。
口は、電気が通りやすいですからね」
納得した彼女を見て私は、エルの体を見て少しだけ考えた。外傷はない。しかし、ヘビトカゲは、普通の皮膚の色は、青緑色。しかし、この子の色は、紫に近い。確か、昨日までは、青緑色だったはず。
なんだかの病気だと考えるしかない。
「様子がおかしいとは、具体的に何でしょう?」
「何かに怯えていると言うか警戒している感じかしら?血液検査をしても何も異常は、見られなかったわ。だから、アミー研究員なら解ると思ったのだけど」
血液検査は、異常がなかった。
何かに怯えている。警戒している。
「粘液は?」
「粘液?」
「ヘビトカゲは、歯がない代わりに口の弛んでいる皮膚に食べ物を溜めてから粘液で、ドロドロに溶かしてから食べる習性があって、粘液の濃度で体調がよく解ると先生…レイディアント博士が言っていました」
私は、エルに口を開けさせ口の中を見た。下垂れる粘液は、ドロっとして触ると溶けそうな匂いもする。酸性の匂いなのだろう。これをどうやって採取すればいいのだろうか?
「綿棒とかビーカーで取れないかしら?」
「どちらも溶けますよ。きっと」
「なら、どうやって…」
簡単な方法では、出来ない。この粘液は、食べ物を溶かす。
溶かす。溶かす。
「そうか…あの、この子の好きな食べ物を持ってきて下さい」
「解ったわ」
彼女は、不思議に思いながらもエルが好きな食べ物であるりんごとバナナを持ってきた。
「キュ、キュ」
エルは、可愛らしい声で鳴き嬉しそうな様子で動き出す。
「で?どうするの?」
「食べさせて下さい」
「粘液とどう言う関係があるのかしら?」
「食べ物を食べる時に粘液を使うって言ったと思いますが、健康状態のヘビトカゲとこの子に食べ物を与え食べ物が液体状になる時間を調べるんです」
「でも個体差があるでしょう?」
私は、時計を見て少しだけ考えた。確かに個体差は、ある。人間だって、食べる時間も食べる量も違う。しかし、ヘビトカゲだけは、違う。
「この子たちヘビトカゲには、個体差がないです。何故なら、彼らの粘液の濃度は、全て同じだと聞いたことがあります」
「解ったわ。食べさすわよ」
そう言って食べさした。しかし、りんごもバナナも1時間、2時間……5時間たっても溶けない。
普通のヘビトカゲは、30分で、溶けたがこの子だけ食べ物を溶かすことが出来ない。と言うとこは、これは、恐らく
「粘液異常」