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不死の破壊者  作者: 浅瀬
第一章 新しい世界
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第一章 第六話 潰したがりの妖精


 この世界には二種類のスキルがあると一般的には()()()()()()。一部の者達はスキルにこの世界にとって非常に重要な存在であるもう一つの種類があるということを知っている。

 それが藍の持つスキル、《破壊》といった類のものである。それらのスキルは“カルマスキル“と呼ばれ、この世界の全ての生物や物質の心、また行動から発生した“カルマ”が溜まることでスキルが造成される事からそう名付けられた。


 藍の《破壊》は人間によってもたらされた「奪われる」という行為から発生した恨みや怒り、憎悪といった”カルマ”で造られたスキルであり、この世界の奪われた者達にとっての代弁者だと言えるものだった。


「分かったか?決して呪いのスキルではないぞ?」

 最初に聞いた時に思わず「呪いのスキル…」と言ってしまった事で藍はラウルに説明を受けていた。


「デメリットなんてのはどんなもんでもあるんだよ、それを自分の物にして使いこなしてこそ本当に強い者なのだ」


 ドヤ顔でそんな事を言ってくるので反射的に手に持ったハンマーで頭を潰してしまいそうになるが今は、それよりも潰したい相手がいる。


「早速試して良いか?」

 藍はハンマーを両手で持ち、構える。


「もちろんいいとも、それとスキルは自然に使用されるもの、自分から使わないといけないもので二つある。《破壊》は後者だ、使いたい時にそう思えば良い。経験は無いと思うがすぐ慣れる」

 ラウルは椅子を召喚して座りながらそう言う。


「分かった。早くあんな肉袋じゃなくて本物の人間を殺したいからな、一発で成功してやるよ」


 そこで見てろ、と言い残し力を込めて床を蹴る。《吸血鬼》となり人間をやめた藍の力は凄まじく石は砕けている。ほぼ一瞬でグラスに正面に移動し、その巨大なハンマーを振り下ろす。


「ブッ潰れろ!!」


 グラスへの拷問の怒りと《吸血鬼》の圧倒的なパワー、そして《破壊》の力が加わったハンマーは瞬きする間にグラスの体をすり潰す。

血飛沫やら肉片やらなんやらが爆発したように飛び散る。


(…一人目…これが復讐の第一歩目だ…)


 そう思いながら藍が口に入った肉片をペッと吐き出すとハンマーから黒い光の玉がぽわーんと出てくると徐々に人の形になっていく。


「ちょっと!あんた!目覚めの一発目がこんなブ男ってふざけてんの!?イケメンとかカッコイイ奴にしなさいよ!」


 そう文句をぶちまけた黒いアラビアンな服を着た少女はとにかく小さかった。髪は黒色で薄黒い透けた布から見える肌は焼けた小麦色、小さい顔は金色の瞳がキラキラと輝いており大変可愛らしい。背中には金色の透明な美しい羽生えている。そしてやっぱり小さい、ぱっと見て12~3センチぐらいしかない。


「妖精……?」

 アニメ、ファンタジー系のゲーム、最近ではネット小説など黒瀬家で長年行われていた英才教育のおかげか、藍は一つの答えを導き出した。


「は?見りゃわかるでしょうが!ボケた事言ってると頭潰すわよ?」


 彼女の声を聞いたのだろうラウルがスッと現れる。藍でも動きが早すぎて見ることは出来なかった。


「ネラ、起きたか。あ、その男、黒瀬藍がお前の新しい所有者(主人)だぞ。どうだ男前だろ?」


「え?マジ?どれどれ…」

 ネラと呼ばれた妖精は俺の顔を見ると固まった。


「え!?え!?ヤバッ!!チョーイケメンじゃん!」

 ネラは興奮しながら藍の周りを飛び回り、ペタペタと藍の体を触る。


「背もなかなか高いし、スタイルも抜群…肌も白くてスベスベ…そして程よくついた筋肉…極めつけにこの顔!」


「なんか、ありがと――」

「潰してイイ?」


 なんで?と思っているとネラはハンマーに入っていく。そしてゴウッと音を立て一人でに藍に振りかぶった。


「うおおおおおっ!…………?」

 バカデカハンマーに潰されそうになるという体験したことのない恐怖から避けるということも出来ず身を防いでしまう。が一向に何も起きない。

 閉じていた目を開くとラウルが片手でハンマーを止めていた。


「ネラ、言っただろ。藍が新しいお前の所有者だ。それと藍、そんなんじゃいつまで経っても人間を皆殺しになんか出来ないぞ」

 ラウルは二人を叱るように話す。藍は違う!と言いたいがさっきの自分の行動から何も言えない。


「ヘ~イヘイ、確かに新しいご主人様みたいね。寝ぼけてたのとブ男潰しのせいで完全に忘れてたわ、ゴメンなちゃ~い」

 ネラのまったく誠意の感じられない謝罪を見ているとラウルが声をかける。


「藍、お前にはやはり戦いの経験が少なすぎる。《不死者》と《吸血鬼》、《破壊》があるからポテンシャルは高いが実戦では今の一発でお釈迦だぞ。死にはしないがな」

 

「じゃあどうするんだ?今人間がやってる戦争にでも飛び入り参加して経験でも積むのか?」

 藍が別にやってもいいぞという感じで言うとラウルは「それもやる」といい言葉を続ける。


「基本的な動作はやらんでいい、とにかく「戦う事」に慣れろ。とりあえずお前にはある程度の強さになるまでネラと特訓して貰う」


 そう言いグラスの死体に手を伸ばすと肉片や血が集まり元のグラスの体に戻っていく。その事に驚いていると周りに次々と人間が現れる。その人間達の顔は全く生気が感じられないがその手には剣や斧、盾など様々な武器が握られている。やがて部屋中を埋め尽くすほどの人が現れると、全員こちらを向き構える。


「全員ミンチにしてみろ、やり方はネラが全部教えてくれる」


 そう言うとラウルは空間を歪みに入っていき部屋から姿を消した。それと同時に藍の手にハンマーが飛んで来て握り手を掴むと、ネラが藍のボロ服のポケットに入り込む。


「よろしくさ~ん、じゃあまずは潰してみよ~!」

 藍はそれしか言えんのかこいつは、と思いながらハンマーを構える。


「俺は死なないからな、無理そうな事も教えてくれよ」

 そう言ってもう一度グラスにハンマーを振りかぶる。


 藍とネラの猛特訓が始まった。










 


 

 





 

グラス君可哀想

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