第一章 第三話 虐殺
人々は次々襲われ、命を落としていく。辺りはすでに血と死体で埋め尽くされている。痛みで朦朧とした意識の中その光景を見ていると、俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。その声の方を力を振り絞り向くと、泣きながら楓の首を抱えている母さんと、何か叫びながら俺の方に向かってくる父さんの姿が見えた。
「藍!藍!死ぬな……」
父さんの首が消え去る。
「家族が引き裂かれるというのはいつ見ても悲しいものですね、引き裂いているのは私ですが」
ミラークが笑いながら剣についた血を払い、そう話しかける。
「なんで…どうしてこんな事を…」
痛みと家族を失った悲しみで涙を流しながら問いかける。
「あなた達のスキルを頂くためですよ、これでまた戦力が上がりました。本当にあなた達には感謝してますよ」
ミラークはそう言いながら母さんに近づく。
「や、めろ…!やめて、くれ…!」
俺は絶え絶えになりながらも止めようとミラークの足にしがみつく。
「凄いですね、《不死者》のスキルは。心臓を刺されてまだ動けるとは…ふーむ、これならどうでしょうか」
ミラークはこちらに振り返り何も無い空間から光輝く剣を取り出すと、俺の両手両足胴体、体中を突き刺し串刺しにした。俺はとてつもない痛みで絶叫する。
「そこで見ていてください、君の母親が殺されるところをね」
邪悪な笑みを浮かべた後、再び母さんの方にミラークが歩き出す。母さんは首を大事そうに抱え、泣きながらミラークを睨みつけている。
「あなたのした事を絶対許しません、ですがせめてものお願いです、息子だけでも助けてくれませんか?」
母さんの話した内容に驚き、目を見開く。
「母、さん…!俺の、事は大丈夫、だから…!母さんが俺の代わり、に生きて、欲しい、」
痛みに耐えながら言葉を絞り出す。
「泣かせますね、本当に親子の絆とは美しいものです。ですが」
そう言うと、ミラークは剣先を母さんの首の横に置く。
「スキルを奪わない理由にはなりません」
ミラークの剣が母さんの首を刎ねる。
「ああああああああああ!うあああああっ!」
悲しみで涙が止まらない、俺は叫び泣く。
ミラークはほぉと言う風に呟く。
「まだ叫ぶ程の体力があるとは…《不死者》…必ず手に入れたいスキルですね」
(こいつだけは殺す…!殺してやる!殺す殺す殺す殺す殺す!)
藍は血の涙を流しながらミラークをその眼力で殺してしまえるではないかと思うほど睨んだ。
「ですが殺す事ができないとなると奪う事もできませんからね、困りました」
ミラークが考えていると藍は剣が刺さっていることもお構いなしに立ち上がり、自分の体から剣を抜きミラークに斬りかかる。ミラークは一瞬驚いたようだったが、すぐにいつもの笑みを浮かべる。
「ア“ァア“ァァァアアアアア!」
「ハハハ!素晴らしい!更なる強い力を奪う事ができたらその力を使って《不死者》を頂くことにしましょう!」
ミラークはそう言いながら新たに取り出した光剣で藍の両腕を斬り落とした。
《スキル“破壊“を入手しました》
その時頭の中で声が響いたが怒りで我を忘れた藍は気づかない。止まらぬ怒りで再び襲いかかろうとする、だがミラークの捕縛魔法で動きを封じられてしまう。
「その心は殺せるのでしょうかね?君にはそれまで拷問室で待ってて貰います、ではまたいつか」
藍の周りの空間が歪み、体が吸い込まれていく。
藍の姿がコロシアムから消え、それからすぐ、このコロシアムで「奪う事」のできる者達以外はすべて物言わぬ死体となった。
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