第一章 第十四話 戦場
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「あれが本に書いてある部隊か、あの左側の」
ディアナは装備の一つである双眼鏡を覗きながらそう言った。
藍とディアナの二人は森と戦場の境目にある高い木の上にいた。そこそこ離れた場所で平原を埋め尽くす程の人間が争っているのが見える。
「俺にも貸せ、流石に吸血鬼の目でも見えない」
藍はディアナから双眼鏡を貸して貰う。吸血鬼化によって様々な事が強化された藍であったが、戦場を見るほどの視力にはなっていなかった。
「できたらこの戦いで強い人間の血を飲め、繰り返せば吸血鬼の瞳や力は進化していくぞ。結局こういう偵察なんかで瞳を使うのは疲れるから道具に頼るけどな」
しばらく双眼鏡でそれらしき部隊を見つけようと戦場を眺め、あることに気づいた藍が呟く
「そうか………しかし男共の血を飲むのは抵抗があるな…」
ここは戦場、やはり男ばかりだった。揉みくちゃになっているのも、足が取れて叫んでいるのも、あちこちで死んでいるのも、どいつもこいつもむさい男だった。
「男の方はかなりマズいからな…逆に女の血はいいぞ!さっぱりしてて美味しいんだ。………思い出してきたら飲みたくなってきたな…」
「…俺もだ…」
藍は吸血鬼になったからだろう、血が美味しそうだと感じていた。その話をして二人が血に思いを馳せ、口に溢れた唾液を飲んでいると藍がそれらしき部隊を見つける。
「あれか」
戦場の最前列で魔法と剣を使いながら相手を圧倒している集団を見つける。200人程の集団で周りの兵士達と比べても洗練された動きをしている。
「魔法剣士の傭兵集団、〔ガリオス〕。この数ヶ月で力を伸ばしてきたコルノス軍側の精鋭で参戦した戦いでは負け無し、だそうだ」
ディアナがラウルから渡された本を読みながら説明する。ラウルの言った通り、何から何まで書いてある魔法の辞典だった。ちなみに本によるとこの森はポズの森というらしい。
「ふむ。で、あいつらを皆殺しにすれば良いのか」
「そうだ、一人残さず皆殺しにしてこの戦場を長引かせる。今日戦場にいる兵士の数は二万だ、私とお前で一万ずつでいいよな?」
「分かった。それと勝負の件、勝つのは俺だ」
「フッフッフッ!冗談はよせ、負けて悔しそうなお前の顔が目に浮かぶぞ!」
そう言うと藍とディアナは木の上から姿を消した。
コルノス軍の最後列。ここは最前列や中間辺りと違い殺し合いから遠いためか、いかにも弱そうな人間が並んでいた。
「なぁ俺らいつになったら戦うんだ?もう一時間くらいこうしてるよな?」
「バーカ、俺らはここに立っているだけの雑兵なんだよ。それだけで金が貰えるなんて最高だな」
ガリガリのあまり良いとは言えない装備をしている男が小さい声で隣の男に話しかけていると、巡回していたガタイの良い指揮をとっていた男が大声で激を飛ばす。
「だまれ!お前達みたいなゴミがこの戦場に参加することを許されたと思うな!少しでも不抜けた事をいいやがったら戦う前に俺がブチ殺してやるからな!」
その指揮官の肩をポンポンと叩く者が現れる、藍だ。
それを見ていた兵士達はなんてことしてんだあのバカ、といった風に藍を見る。
「おい、ここが最後列でいいか?」
「あ“?なんで隊列に加わっていない?」
「黙れ、ここが最後列かと聞いているんだ」
「フッ、ハハハ!確かにここは最後列だ、だがな、加わる前にお前みたいな舐めた態度の奴は俺が殺してやる!」
「そうか分かった、もういいぞ。死ね」
指揮官が腰にしていた剣を抜くと、藍は肩担いでいたハンマーを指揮官の頭めがけ振り抜く。指揮官の体は地面のシミとなり、戦う事を許されなかった。
兵士達は目の前で指揮官がミンチになったことを理解できていなかったが次々と藍が敵の工作員か何かだと考え襲いかかってくる。
「敵襲!敵襲だ!いけ!殺せ!」
「「「「「うぉぉぉぉぉぉ!」」」」
「オラッ―――――!」
もう一人の指揮官がすぐさま指示を出し、近くの10人がこちらに駆け出す。だがそれよりも前に空へ飛んでいた藍は重力+ビッグハンマーの力でそれを肉塊にする。
兵士達や指揮官は驚いて体を止めてしまうが藍は死体に近づき武器を確認し始める。
(回収だ…倒した相手の武器を集めるなんて弁慶みたいだな…)
藍が殺した兵士達の武器を見ると、次々と姿を消して藍のバッグに収納されていく。
「な、何してる!早く奴を殺せぇぇ!」
焦っている指揮官が声をかけると兵士達がこちらに武器を向けてくる。
「まぁこっちは薙刀じゃなくてこいつだがな」
血肉まみれになったハンマーを横に振るう。藍の持っている力、全てが込められたその塊はその範囲にいた兵士達を即座に肉塊へと変貌させる。
とんでもないスピードで叩き出された肉塊達はまるでショットガンのように他の兵士達を襲う。硬い骨や固まった肉は体に突き刺さり、骨を砕いていく。
「ギャァァァ!痛ぇぇぇぇぇ!骨がぁぁぁ!」
「うるさいぞ」
骨が腹に刺さり叫んでいた男を潰す。男の肉塊を見て藍は少し笑ってしまう。
達成感、いや快感からだろうか。藍は高揚を隠しきれない。
あの日、自分の全てを殺した奴らの同胞をこうして無慈悲に、残酷に、今、殺している。その現実が藍を少し満たすと同時にもっと殺せと促してくる。
未だ渇きは収まらない、藍はそれを満たすため、次の生贄にハンマーを向けるのだった。
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