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プロローグ

 初めましてこんにちはこんばんは。

 突然だが、私は天河あまかわ 紫苑しおん。24歳の小さい貿易会社の事務を務めるどこにでもいるOLだ。

 そして廃人ゲーマーだ。

 





 今日も今日とて帰宅すると速攻でパソコンを起動させる。現在開催中である登録者数100万超え記念クエスト、経験値もアイテムも美味しい神級ボス討伐クエストの為だ。


 2年程前にサービスを開始したエンド・オブ・ザ・ワールド(意味は終末の世界、略してETW)という、タイトルからして厨二病感満載の新感覚オンラインRPGは、最初こそ売れないだろうと思われていた。いや実際売れなかった。それどころか某通販サイト、アマ◯ンのレビューに低評価しかつかないクソゲーとまで言われた。

 その理由として第一にやり込み要素がとてつもなく、初心者向きではない為だった。やればやるだけ強くなるまさに弱肉強食の世界といったものだ。これだけなら他の人気ゲームと同じではないとか思われるだろ。まず初期装備、アイテム等の支給は一切なし、チュートリアルもない。また初期クエストが難しすぎてそれすらクリアするのに相当の時間が必要。普通に生活している一般人からすればそんな時間などないし、他のゲームをやり込んだ方がよっぽど楽しいだろう。ニートになれば別の話かもしれないが。

 しかしサービス終了まで最短記録を更新するとかと思われたそのクソゲーが、3ヶ月程経ったある日を境に当初200人程しか存在しなかったユーザーがなんと1万人にまで増えたのだ。普通のオンラインRPGでは飽き足らず物好きな廃人ゲーマー達しかプレイしていなかったはずのクソゲーが、一気にランキングの1位を独占したのだ。私もその物好きな廃人ゲーマーのうちの一人なのだが。

 ユーザーが急増した理由は単純だった。販売会社が初期の設定を変えたのだ。新規ユーザーには配布アイテムとして初期装備やポーション等といったアイテムを大量に、加えて蘇生アイテムまで配布しやがった。初期クエストの難易度も下げたらしい。こんだけ特典がついていればそりゃユーザーも増えるだろう。しょっぱなから苦労した私の時間はなんだったのかと運営会社に問い詰めたい切実に。まあ簡単なゲームより断然やる気が出たのは確かだが。


 そんなこんなで今やこのETWはオンラインRPGの人気ランキング1位のゲームなのだ。2年経った今でもその人気は不動らしい。そして先週、ついに登録者数100万人を超えたとかなんとか。(発売当初の設定のままなら絶対に有りえない。早々に修正して正解だったな開発者の人。)その記念としてこの1週間は特別クエストが受けられるようになっている。もちろん毎日参加している。当たり前だ。

 ETWは簡単に言えば剣と魔法の世界だ。やり込み要素が半端ないので細かい設定もかなりたくさんある。その分自分のスタイルを色々模索することが可能で、正直今までで一番ハマってる。

 ものの1時間ほどで無事ボスを狩り終えPTにメンバーに挨拶をし解散する。神級ボスだろうがなんだろうが私の手にかかればちょろいもんだ。なんせ私はこのゲーム内でもトップランカーなのだから。社内での集まり、飲み会などには参加しない。無論ETWをプレイする為だ。自他共に認める廃人ゲーマーである。課金はちょっとだけしたりもするが重課金者ではない、決して。一人になった私は1日1回発生する災害級ボス討伐クエスト、まあ名前の通りめちゃくちゃ強いボスを倒す為準備を整える。


 「よし。行きますか。」

 装備、アイテムはバッチリだ。私はこの災害級ボスにソロで勝ったことはまだない。今日こそは勝ってやる、と気合いを入れた。森の奥深くにいるボスの所まで行くのは少々面倒だ。だが私は転移魔法が使えるのでフィールドまで一瞬でたどり着ける。いつもなら雑魚狩りをしながら進むのだが、今日は時間がない為やむ終えない。私は詠唱を唱える(と言っても画面の中にいるキャラが、だが)。

 詠唱を終え、スキルを発動したその瞬間、真っ白な光に包まれ目を開けていられなくなりギュッとつぶる。なんだこれ。PC画面の見過ぎで目がおかしくなったのだろうか?そんな事を考えていたら頭を思いっきり殴られたような強い衝撃に襲われる。訳も分からなく、私の意識はぷっつりと途絶えた。






 ここはどこだ。

 目が覚めたと思ったら周りは森。見渡す限り木しかない。そしてやたら巨大だ。頭打っておかしくなったのかな...。確か私は自分の部屋でETWのボスを倒しに行こうとしてたはず。もしかして寝落ちしてこれは夢の中とか...?そんな疲れてたっけ。働きすぎたのかもしれない。この機会にたまりにたまった有休を使って、ついでにETWやるのもいいかもしれないな。決してゲームの為の休暇じゃないから!


 「おや?こんなところになぜ赤子が」


 び、びっくりした!いきなりしわがれた声がした!何奴!とその方向を見ると、そりゃまあ立派な長〜い白髭を携えたおじいさんが立っていた。仙人みたいだ。でっかい杖も持ってるし。とりあえず人に会えてよかった。ここはどこなのか聞いてみよう。


 「お、おぎゃあああああ!」


 えっ、何これ。私の声じゃないよね?なんでいきなり赤ん坊の泣き声?どうなってんの?いやまさかと思いもう一度発語を試みる。


 「おぎゃあ!おぎゃあ!」


 えええええええええええええ!意味わからない泣きそう。いや、泣いてるんだけど。


 「これこれ。人の顔を見て泣くなぞ失礼なやつめ。」


 おじいさんが何やら笑顔で言ってるが関係ない。今は緊急事態だ。

 ん?待てよ。これは夢じゃないか。何だ、やけにリアルだけど日頃ゲームのやりすぎでファンタジーな世界を創り上げてしまったんだな。私の脳は優秀なようだ。もう一度眠ればきっと覚めるだろう。それに実はさっきからめちゃくちゃ眠いんだ。

 おやすみなさい。


 そして私は再び眠りにつく。

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