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神の思し召し

作者: 伊月煌

ツイッターのタグのやつ。

一文考えたら色々思い浮かんだので。

 ぼくと彼女の出会いは何の変哲も無いいたって普通の出会い方だった。あの時は。

 この国には週に一度教会に行って祈りをささげる風習がある。それは熱心な崇拝者であろうとなかろうと関係なく伝わっている風習なのだ。ぼくもその例に漏れず週に一度教会に行って、祈りをささげる。いたって普通の信仰心を持っているぼくはこの教会に行く風習に嫌気も刺さなければ、大きな希望を持っているわけでもなく。生活の中のルーティーンの一つという考えだけで通っているようなものだった。

 彼女と出会ったのはその教会だった。ぼくが教会に行くのは所謂平日の午後だったから人もまばらだった。ある程度来る人も同じだからなんとなく顔見知りになった。それだけだった。

「こんにちは。」

「……こんにちは、」

 彼女の容姿はいたって普通だった。飛び切り美人なわけでも飛び切り可愛いわけでもなく。歩いていて目を引く容姿ではないとぼくは思う。彼女の容姿で褒めるとすれば、長く伸ばしている黒い髪だろう。いつも横に流している長い髪はきれいなものだった。彼女はいつも白いブラウスを着て教会に来ているから余計に彼女の黒髪が生えるのだろう。

 そんな彼女が長い髪をバッサリと切って教会に来たときはさぞ驚いた。初めて会ってからかなりの時間も経っていたし、それまでずっと長かった髪が突然短くなってしまったのだから驚かないほうがおかしい。

「髪、切られたんですか?」

 ぼくと彼女はあいさつ程度しか会話を交わさないから、彼女は心底驚いたような顔をぼくに向けた。ぼくもなんで声をかけたのかまったくわからなかった。が、出てしまった言葉は取り戻せないのだから、平静な顔をしていた。

「えっと……おかしい、ですか?」

 彼女はおそるおそるぼくに尋ねた。ぼくは首を横に振った。

「よくお似合いだと思います。ただ、ずっと長かったから。なぜかなあと思っただけです。」

 素直な疑問を隠す必要なんてないだろう、という思いだけでぼくは少々不躾かもしれない質問を彼女に問うた。彼女は再び虚を突かれたような顔をした。

「ああ、答えたくないのなら構わないのです。不躾な質問ですから。」

ぼくがそう言うと彼女は首を横に振った。

「いえ、そのようなことはありません。婚約のお話がなくなっただけだったので。むしゃくしゃしてしまって、髪を切ったんです。」

彼女はそう言うと小さくほほ笑んでみせた。その笑顔に今度はぼくが虚を衝かれる番だった。こんな笑顔を、見せるのか。それまでなんの印象も持たなかった彼女が髪を切り、笑っただけでぼくの中の彼女の印象が塗り替えられていく。

ぼくはどうやらだいぶちょろい人間なのかもしれない。

「そうだったのですか。髪が短い方がよくお似合いだと思いますよ。婚約者の方はひどく損をなされたと思います。」

ぼくの言葉に彼女は嬉しそうにこう返した。

「貴方なら……そう言ってくださる気がしていました。」


ぼくと彼女の出会いは何の変哲も無いいたって普通の出会い方だった。

あの時はそう思っていた。

けれど。もし、

もしこれが、神様の思し召しなのだとしたら。

ぼくはこの先もう少し熱心な信仰者にならなければならないし、彼女のことをもっと知って大事にしなければならない、と思った。

それは、悪く無い人生の歩み方だな。

ぼくは口角を少しだけあげた。

と、前書きには書きましたがそもそも載せようと思ったのはリクエストがあったからです。基本的にツイッターのリクエストは頑張って答えていくスタンスなのですが時々心が折れることがあります笑

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