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隣のあの子はサンタクロース  作者: さよならの果てまで
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1話 隣のあの子はサンタクロース

「ねぇ、今日って何の日か知ってる?」

「何?」

「クリスマスだよ!」

「何それ?」

「一年に一回だけね、おじさんが良い子にプレゼントをくれるんだよ。」

「でも僕はまだもらってないよ。」

「じゃあけんちゃんは悪い子だね。」

「何だよそれ。」

「私はちゃんともらったもん。」

「そんなのたまたまだよ。」

「たまたまじゃないもん。良い子にしてたからもらったんだもん。」

「じゃあ来年どっちがもらえるか勝負しようぜ。」

「いいよ!絶対私がもらうもん。」

「ふん。」

「楽しみだね。」




 携帯電話のアラームが急に鳴った。またこの夢か。柏原はアラームをとめるとベッドの上にそっと座った。夢に出てきたあの子の名前は全く覚えていない。覚えているのは幼稚園の中で一番仲が良かったことと夢で見たあの会話。そしてその会話をした帰り道に目の前で車に轢かれて死んでしまったことだけである。あとは何も覚えていない。月が綺麗だ。あの日の夜も綺麗だった。結局その次の年も俺はプレゼントなんて貰えやしなかった。まあ、あの子のことを考えると貰わなくて良かったのかもしれない。実際は単にその頃両親の経営するカフェの売り上げが行き詰っており、プレゼントを買う余裕すらなかっただけだとは思うが。ふと月を屋上で見たくなった。誰もいないリビングを通り過ぎて柏原はマンションの廊下に出た。錆びついた螺旋階段をゆっくりと上がっていく。夜中の3時に人の気配などあるはずもなく自分一人だけの世界に浸れた。そういえば月といったら彼女、三輪さん。綺麗だったなぁ。いや、何というか彼女単体が綺麗だったというかそういう訳ではなくて。柏原の顔には自然と笑みがこぼれた。もう一回、あんな時間が来ないだろうか。気が付くと屋上の手前まで来ていた。どれほど綺麗な月がそこにはあるのだろうか。ゆっくりと足を進めて行く。屋上だ。

「え?」

柏原は目を疑った。

「え、柏原君!?」

そこには小さな箱のような物体と、そして普段は隣の席に座っている三輪さんがいた。

「え、何で・・・。何、何して・・・るの?」

戸惑いを隠せなかった。彼女はこのマンションには住んでいない。それは知っている。なのに彼女は夜中の3時に、この屋上にいるのだ。

「いや、何も・・・。」

「いや、何もしてないってことはないでしょ・・・。」

「・・・。」

しばらくの間静寂が二人を包んだ。柏原はこの状況が何なのかを必死に理解しようと努めた。しかし彼に理解できるはずもなかった。そうするうちに三輪がその重い口を開いた。

「私・・・、私ね、サンタクロースなの。」

「は!?」

「私はね、サンタクロースなの!!!」


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