再会までの長話
゛Sweet micoa゛の東京での初のコンサートの日はすぐにやってきた。俺は、この日を迎えるまで無駄に新しいオシャレな服を買いに行ったり、美容室で髪を切ったりしていた。…コンサートだからそんなに近くで見れないかもしれないのに(笑)
だけど、それぐらい楽しみにしていた!また麻衣ちゃんに会える!そう思っただけでワクワクしていた。
「先輩、何ぼーっとしてるんすか?」
そんな俺のワクワクを書き消すように隣の席に座っている田中が声をかけてきた。
「もしかして昨日の夜楽しみ過ぎて寝れなかったんじゃないですか?(笑)今の内に寝てたほうがいいですよ。」
「そんなわけねーよ(笑)でも、眠いのは確かだからちょっと寝るかな。」
俺はそう言って後ろの席の人に許可をとり、新幹線のシートを少し倒した。
そう。東京でのコンサートのため地元から新幹線で現在移動中なのだ。東京までは後、一時間くらい掛かる予定だ。それにしても、隣にいる田中の格好が凄い。まだ移動中だと言うのに、゛Sweet micoa゛のタオルを首に掛け、着ている゛Sweet micoa゛の公式グッズのTシャツには自分でメッセージを入れている。正直、後輩じゃあなかったら軽く引いているレベルだ。それに服装以外にも一つ気になることがあった。
「そういや、お前は゛Sweet micoa゛で誰を推してんの?」
そう。アイドルグループにはグループ全体を推す「箱推し」もいるが、多くの人はグループの中でこの子を推す!と決めている人が多い。もしこいつが麻衣ちゃんを推していたら、ちょっと嫌だと思った。
「俺の推しメンですか?それはやっぱり、゛千早希゛ちゃんに決まりですね!」
そう高らかに宣言した。
「ちなみに千早希ちゃんはこの子です!」
そう言って田中が見せてくれたのは、゛Sweet micoa゛の生写真だった。
「どうしたの?この写真?」
俺がそう聞くと、田中は自慢気にこう答えた。
「今時のアイドルのCDには生写真が付いてくる物もあるんですよ!まあ、俺はネットで生写真を買ったりもしてますがね。」
こいつは本当に゛Sweet micoa゛のことになるとオタク全開でくる。見た目のチャラさとは大違いだ。
俺は田中が見せてきた写真を眺めた。しっかりと生写真の数々がファイルに丁寧にしまってある。
田中が推している千早希ちゃんという子を見ると、茶髪でロング、ちょっと巻いている髪の毛が印象的な美人な子だった。確かにこの間のインタビューの時にいたな…
「この子、いくつ?」
「先輩より一つ上ですね!」
こいつは前から聞いていたが、やっぱり年上好きなようだ。
「先輩、゛Sweet micoa゛の名前の由来知ってます?」
俺が知らないと答えると、田中が自慢気に話始めた。
「゛micoa゛って言うのは五人の名前の頭文字を取ってるんです。゛m゛は麻衣ちゃん、゛i゛は伊織ちゃん、゛C゛が俺の推しメン!千早希ちゃん!、゛o゛が桜華ちゃん、゛a゛がありすちゃんです!なんで日本語に直すと甘い五人組って意味らしいですよ!その中でやっぱり千早希ちゃんは…」
俺は話の長い田中の説明を話半分に聞きながら眠りにつこうとしていた。後少しでまた麻衣ちゃんに会える。そう思い今は少しでも寝てコンサートに備えようと思っていた。