突然やってきた2回目のチャンス
゛Sweet micoa゛が会社のインタビューをしてから、もう3日が経っていた。俺はあの時のドキドキを引きずりながらも、いつも通り仕事に打ち込んでいた。だが、仕事をしながらも考えているのは、偶然再会した麻衣ちゃんのことだった。なんで、あの時にちょっと無理矢理にでも麻衣ちゃんに話しかけなかったのか?後悔が残っていた。
もう会えないのかな…
そう心のどこかで諦めもあった。そんな俺の気持ちを切り裂くように、バカみたいな声で俺に話しかけてくる奴がいる。
「先輩、なんか最近暗いっすね~どうしたんですか~
」
後輩の田中は容赦なく話しかけてくる。
「先輩暗いとつまんないっすよ~そうだ!いいことあるんで聞いてもらっていいっすか?」
お前のいいことなんて、これっぽっちも興味がないが、少しは気が紛れるかと思い、聞き直す。
「何?なんかあったの?」
「そうなんですよ!なんと、ついに゛Sweet micoa゛が東京の野外ライブでコンサートすることが決まったんすよ!」
この田中の報告に正直驚いた。いくら人気があるローカルアイドルでもあの東京でコンサートをするなんて思わなかったからだ。麻衣ちゃんが華麗に歌う姿が目に浮かぶ。
「へーすごいじゃん。」
「それでですね!そのコンサートのチケットの発売が昨日の夜にネットでファンクラブ限定で先着500名様で募集があったんですよ!」
「もしかして…チケット取れたの?」
「その通り!大正解!チケットがなんと2枚取れました!」
田中がファンクラブに入っていたことも知らなかったが、なにより、東京のコンサートのチケットが取れたことに驚いていた。ただ…
「ん…2枚…取れたの?」
「はい!2枚取れました!だから、先輩、一緒に行きましょう!」
マジで!!
そう俺は叫びたかったが、後輩に゛Sweet micoa゛いや、麻衣ちゃんが好きだとバレるのは恥ずかしいと思い、普通のリアクションをとった。
「え、えー俺も行くの?」
「お願いします!先輩!俺、一人で東京行ったことないですし、実は゛Sweet micoa゛のコンサートに行くのも初めてなんです!だから、お願いします!」
俺は複雑そうな顔を必死で作り、答えた。
「しょうがねーなー。いいよ。行くよ。」
その瞬間、田中の顔がパッと明るくなったのがわかった。
「ありがとうございます!マジ嬉しいっす!コンサートは再来週の日曜なんでよろしくお願いします!」
了解。俺は田中にそう答えて田中と別れた。
正直、感謝してるのは俺の方だ!また、麻衣ちゃんに会えるチャンスが巡り混んで来るなんて!
再来週の日曜。楽しみだ。
「麻衣ちゃんに会いたかったんですか?」
突然、あの時会ったありすちゃんの顔と言葉を思い出した。
「ありすちゃんもいるよな…」
俺は麻衣ちゃんが好きだ。その気持ちに嘘はないが、心のどこかでありすちゃんのことが気になっていることに気づいてはいなかった。