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気持ち悪い自分と忘れ物

2階の応接室に入ったら、すぐにインタビューが始まった。自慢気にうちの製品のかまぼこを説明する課長とそれを真面目に聞き、質問をする゛Sweet micoa゛の5人。俺は、課長に言われた通り黙って、ただその様子を眺めていた。でも、笑顔を作ることは出来なかった。目の前にはずっと前から好きだった人がいたからだ。正直、インタビューの様子を「眺めていた」だけで、話の内容はほとんど耳に入っていなかった。それだけ彼女のことが好きだったし、この展開についていくだけの頭がなかった。

しかも、彼女は俺のことを覚えていた。あまり目立つほうではなかった俺を。

そんな小さいことも俺にはめちゃくちゃ嬉しかった。今すぐに彼女に色んなことを聞きたい!今までどうしてたのか?今も地元に残っているのか?なんでローカルアイドルなんてしているのか?

色んな思いが交錯していると、あっという間にインタビューが終わった。そこで一度撮影が止まり、マネージャーが声をかける。

「ありがとうございました。では次は実際の作業の撮影をさせてください。」

課長はすぐに返事をして、作業現場へと案内しようとしていた。俺もそれに自然とついていく。

「あぁ。お前はもういいぞ。悪かったな。自分の仕事に戻ってくれ。」

課長がそう俺にいい放ち、応接室から゛Sweet micoa゛を連れて出ていった。

「えぇーマジかよ。」

いや、元からそういう話だったため、当然なのだがもう少し彼女を見ていたかった。なにせ中学以来の彼女だったから。多分、まったく知らない人からみたら、相当気持ち悪く見えているだろう。だが、気持ちの落ち込み具合が半端じゃなかった。

しょうがなく自分の持ち場に戻ろうとすると、応接室のテーブルに何か残っているのが目に見えた。

それを手に取ってみると、可愛い女の子らしいデザインの腕時計が置いてあった。まったく気がつかなかったが、インタビューが始まる前に゛Sweet micoa゛の内の誰かが外して置いていったらしい。

「もしかしたら、麻衣ちゃんのかな?」

淡い期待を抱きながら、その腕時計をポケットにしまった。゛Sweet micoa゛が戻ってきたら、誰かの腕時計か確認して渡す。それだけなのだが、俺は嬉しかった。また、麻衣ちゃんに会える!そう思ったからだ。その時に頑張って話かけてみよう。そう心に誓って、作業現場の撮影が終わるまで、俺は自分の持ち場に駆け足で戻った。

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