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初恋との再会

課長に無理矢理連れていかれて、会社の玄関まで来ると、眼鏡を掛けたマネージャーらしき男の人がピンっと立って待っていた。

「あーすいません!お待たせしました。」

課長がそう言うと、マネージャーらしき男の人が会話を続けた。

「ご準備は出来ましたか?出来ましたら、゛Sweet micoa゛を呼びたいのですが…」

「はい。大丈夫です。2階の応接室にてインタビューのほうをお願いします。」

課長がマネージャーらしき男の人にそう言うと、マネージャーらしき男の人が、一度玄関から出ていった。

「今回のインタビューはうちの会社のかまぼこの人気の秘密や製造方法を聞かれるからな。その辺は俺が答えるから、お前はとりあえず横に座ってニコニコ笑っておけよ。後、さっきの男の人はマネージャーの人だ。」

正直、それだけしかしないのであれば俺がインタビューの場にいる意味がないと思ったが、何も喋らなくていいのであればそれに越したことはない。

そんなことを考えていると、先程のマネージャーが戻ってきた。よく見ると、その後ろには5人の女の子達が付いてきていた。

「あー。あれが゛Sweet micoa゛か~」

「んん?」

俺は歩いてくる5人を見て、あることに気づいた。

一番前に歩いてくる子…どっかで…

「お待たせしました。ご紹介します。゛Sweet micoa゛です!」

マネージャーから紹介があり、5人も横一列に並び、声を揃えて挨拶をした。

「初めまして!゛Sweet micoa゛です!今日はよろしくお願いします!」

可愛い女の子達の可愛い声が魚風味の匂いが漂う玄関に響きわたった。

そんな彼女達を前にして、俺はさっきまで思っていた疑問が確信に変わった。

「やっぱり、間違いない…」

さっき先頭を歩いていた女の子は、横一列に並んだ今、゛センター゛の位置に来ていた。

そして、そのセンターの女の子が俺の小・中学校の好きだった。「麻衣ちゃん」であることに気づくのに時間はかからなかった。

俺が小学校5年生の時のクラス替えで一緒のクラスになり、それ以来中学校までずっと好きだった。

小学校から既に顔は整っていて、可愛くもあり、将来美人になるだろうなと思っていた。また、それが全然嫌みにならない彼女の優しい性格も好きだった。クラスの誰でも優しく話しかけ、男女問わずクラスの人気者だった。流石に小学校の頃は告白なんてする勇気もなく、卒業してしまった。同じクラスだった男子が何人か卒業する時に告白したようだか、全て断ったらしい。

そんな彼女と同じ中学校に行けるというだけで、中学校生活が楽しみだったのだが、そんな楽しみは長くは続かなかった。

1年生の頃は彼女とクラスが離れてしまったが、2年生の時のクラス替えでまた、一緒のクラスになることが出来た。

しかし、彼女は2年の夏になる前に学校に来なくなってしまった…

最初は何か病気でもしてしまったのだろうかと心配していたが、そうではないとすぐに気づくことになった。

彼女はいじめられていたのだ。

1年の終わりくらいからずっと。陰口を彼女に聴こえるように話したり、ネットの学校の掲示板に彼女のあることないことが大量に書かれていたのだ。

そして、そのいじめの主犯格が彼女の小学校時代からの友人であると知った。

恐らく、彼女もこの事を知り、学校に来なくなったのだと思う。そして、結局彼女は中学校を卒業するまで学校に来ることはなかった。

彼女の連絡先や家を知らなかった俺は、どうすることも出来なかった…いや、何もしなかった。いざとなれば、彼女の連絡先も家も調べることが出来ただろう?

しかし、彼女が困っている時に手を差し伸べる勇気がなかったのだ。そんな自分に嫌気がさし、彼女を好きになるのをやめた。彼女を好きになる資格がないと思ったのだ。それ以来彼女の事は忘れ、平々凡々な毎日を過ごしていた。

だが、今、目の前にいるのは間違いなくあの頃の自分が好きだった麻衣ちゃんだ!

俺が頭の中でどうしようかと考えていると、課長がそんな葛藤を切り裂くように話を始めた。

「お待ちしていました。本日お話しさせて頂く、製造課長の大野です。お話しは2階の応接室でさせて頂くので、応接室までお願いします。」

課長がそう言うと、マネージャーと5人は玄関で靴を脱ぎ、2階まで歩き始めた。

その時、麻衣ちゃんが俺の方を見て、一言呟いた。

「久しぶり。」

そして、すぐに2階へと上がって行った。

「え、嘘だろ?」

まさか覚えてるのか?いくら小・中と同じ学校だったとは言え、あまりしゃべったことのない俺を?

さまざまな疑問が残る中、俺も応接室へと足を進めた。もうすでにインタビューのことなんて頭の中の片隅にも残ってはいなかった…

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