9 寝室で男がふたり
「おい、なんであんなことを言ったんだ。」
「あんなこととはどんなことだ。」
「決まっているだろう。一緒に食事をしませんかと誘ったことだ。」
「ブライアン、食べたくないなら食べる必要はないぞ。お前はここで寝ていろ。」
「俺はそんなことを言ってるわけじゃない。あれじゃ、なんだかお前があのツバァイ家の公爵令嬢を誘っているようだぞ。」
「誘っているんだから問題ないだろう。」
「そうか、誘っているなら問題ない、わけあるか!!なんだってあの子を誘うんだ。もしかして弟の敵討ちかなんかか?」
「なんで俺が弟の敵を討たねばならんのだ。俺にそんな義理はない。」
「じゃ、なんで誘ったんだ。もしかしてあの子が好きとか言うんじゃないだろうな。」
「お前にしては鋭いな。」
「なっ、なっ、お前魔獣豚に襲われて強く頭を打ったのか?」
ブライアンは思わず隣にいたケインの肩を強く掴んだ。
「おい、ブライアン。俺の体からその手を離せ。」
ハッとしたブライアンが手を離す。
「すまん。ちょっとビックリして・・・。とにかく公の場で手を出すようなことはするなよ。」
「なんでダメなんだ。」
「おい、わかって言っているのか?彼女はお前の弟と同じ年だ。それをやるとお前、彼女の母親と同じことをしたことになるぞ。」
「そういえばそうだったな。忘れていた。手を出すのは公共の場では控えよう。」
『おい、公共の場以外で手を出すつもりなのか?なんで、俺はこんなやつの友達なんだ。』
「俺はお前がロリコンだとは知らなかったよ。」
「なんでそうなるんだ。」
「なんでって、今まであまたの美女がお前に群がってきたが一度として、お前が口説いたところを俺は見たことがない。なのに今回に限ってお前が積極的になっていて、さらに心からほほえむ笑顔を俺は見たんだぞ。」
「だからなんだ。」
「俺は死ぬかと思ったんだぞ。」
「なんで笑顔一つでそうなるんだ。おおげさな。」
『今まで一度としてあんな表情を浮かべたことがなかったんだって、自覚は本人にはなしか。まっ、こいつが幸せになるなら俺がとやかく言うことじゃないか。だが、こいつが公共の場で彼女に手を出さないように見張る必要はある。絶対に!俺が巻き添え食うのだけは割に会わないからな。』
「そう言えばブライアン。」
「なんだ?」
「レイチェルは俺のものだ。絶対に手を出すなよ。」
『こいつから手を出すなだぁ。いったい今日はどうなってるんだ。だから魔獣豚が現れたのか?いや、現れたのはその前か。』
「言っておくが俺はお前と違ってロリコンじゃない。間違っても未成年者に手は出さない。」
「レイチェルが未成年者でなくなっても手を出すなよ。もしそんなことがあれば、お前でも容赦しない。剣の錆にしてやるぞ。」
『女のことで凄むケインを初めて見て、俺の頭は思考停止していた。こいつがこんなに女に夢中になるやつだとは思わなかった。』
「ああ、もちろんだ。」
俺はそういうのが精一杯だった。
「俺は疲れたんでもう寝る。」
「ああ、俺もそうするよ。」
お互いなるべく離れて寝ようとするがいかんせん俺達の体に比べてベットが小さい。
背を向け合っているのにお互いの尻があたる。
「おい、ブライアン。お前の尻が俺の尻に触っているぞ。もっと離れろ。」
「無理言うな。これでもベッドギリギリまで寄って寝てるんだ。」
「わかった、じゃ隊長命令だ。 床で寝ろ!!」
「おい、それを言うなら部下を思ってお前が床で寝ろよ。」
「裸で床で寝たら寒いだろうが。なんでお前の為に、そんな寒い思いをしなけりゃならないんだ。」
「それは俺だって同じだ。お前の為に寒い思いをするなんてイヤだよ。」
二人してしばらく言い合った末、枕を間に挟むことにした。
これでなんとか不快な思いはするがなんとか寝れる・・・。
「おい、ケイン?」
「ああ、なんだ。」
「お前は本当に砦が崩壊したと思うか。」
「わからん。まずは明日、現場を見てから考える。」
「そうだな。」
二人はその会話の後すぐに就寝した。