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5 ご先祖様の肖像画

 私はメイと二人で夕方までかかって徒歩で別荘に戻った。

 私たちが別荘の直ぐ傍まで来ると、ちょうど私たちを心配して迎えに出てきたセバスチャンと泉の所で出くわした。


「セバスチャン、よかった。」


「お嬢様、ご無事だったのですね。ほんとうに良かったです。」


 私たちが持ってきた異様な状態の荷物もとい人間に、いつも冷静なはずのセバスチャンの目元がつり上がる。

「それにしてもこれは?」

「えっと怒りたいのはわかるけど、後できちんと説明するので先に戻ってけが人用の寝室の用意と私たちの食事をお願い。」


 セバスチャンは異様な状態の荷物もとい人間を先に引き取ろうとしたが私が了承しなかったので、メイに鋭い視線を向けただけで諦めてくれた。

「畏まりました。すぐに手配いたします。」

 そう言うとメイに目線で語ってからいつもの表情で一礼すると、すぐに別荘に戻っていった。


「さすが父さんは執事の鏡ね。今のが私だったらあまりのことに叫んでるわ。」


『私はメイ、あなたの方がすごいと思う。あのセバスチャンの睨みを浴びて、そんなことに感心できるなんて、なんて大物なの。』


 私はメイを連れてセバスチャンの後を追うように重い足を引きずりながら別荘の中に入った。


「お嬢様、けが人はこちらへ。」

 先に戻ったセバスチャンが寝室の用意を済ませ扉の前で待機していた。

 さすがセバスチャン。

 いつもながらの早業に目を見張る思いだ。


 私はセバスチャンに二人の男を預けた。


「お嬢様、お部屋にお風呂の支度をしておきました。すぐに湯あみが出来ますのでお食事前にさっぱりなさってください。」

 私は素直にうなづくと自分の部屋で湯あみすることにした。

 今日はメイではなくメリンダが湯あみの準備をして待っていてくれた。

 私はメリンダに手伝ってもらって手早く済ますと食堂に向かった。


「メイ。」

 食堂に行くと先に支度を終えたメイが食事を用意して待っていてくれた。

 ちょうど私が食事を終えたところにセバスチャンがやって来た。


「お嬢様。人心地ついた所でお疲れかと思いますが、ぜひ説明をお願いします。」

 私は朝起きた魔獣豚の暴走とその結果、あの二人の男を助けることになった経緯を説明した。


「なるほどわかりました。まず私が断言できますことの一つはこの屋敷を魔獣が襲わなかった理由です。それはツバァイ家のご先祖様であるアイ様とシルバー様の肖像画のおかげです。」


『いま何かすっごく納得いかないことを聞いたような気がする。聞き間違いよね。』


「あの正面に飾られている肖像画?」


「はい、肖像画です。」

 セバスチャンは何を当たり前のことを聞いているんだという表情で私を見ると、もっと具体的に説明をしてきた。


「そうですね。証拠というわけではありませんがこちらをご覧ください。」

 セバスチャンが何かが入った袋を渡してきた。


「これは?」


「中をお開け下さい。」

 私は言われるまま袋の中を開けてみた。

 中から我が家のご先祖様である二人の肖像画が出てきた。


「あの二人の武人がお持ちでした。なのであの魔獣豚が襲ってきた中でも潰されず、なんとか生き残れたのでしょう。」


 私的にはちょっとどころかかなり納得できないし、非現実的すぎる気がしないでもないが、そう説明しないとあの騒乱の中で二人だけが潰されなかったり、食われなかった具体的な根拠が見当たらないのも事実のような・・・そうじゃないような・・・。


「なんだか信じられないけど、その以外に何かあの肖像画で同じような事件が起こった事例とかいうものはないの?」


「そうですね。この辺りは何百年も前の魔獣豚の繁殖期に襲われた事実はご存知でしょうか?」


「ええ、ご先祖であるアイ様の日記に書かれていたわね。」


 セバスチャンは私の話に頷くとその根拠となる話を続けた。

「その当時、初代ご当主の伴侶アイ様が領民の無事を願って、祈りを込めて配ったのがあの肖像画だと言われています。」


『祈りを込めて・・・はっ、まさか!』


「セバスチャン、もう一度あの肖像画を見せてくれない。」

 セバスチャンはすぐに私に先ほどの肖像画を渡してくれた。


 私は受け取るとすぐに袋から出して肖像画をひっくり返して見た。


『あった!これだ。』

 肖像画の裏にはアイ様の直筆で”交通安全”と記されていた。


 うかつだった。


 二人の肖像画にばかり目がいって裏を調べないなんて。

 こんなことではあの鬼宰相を出し抜くなんて出来やしない。


 私が深く反省しているとセバスチャンに声をかけられた。


「お嬢様。」


「どうかした、セバスチャン。」


「お考え中に申し訳ありませんがあの武人二人ですが、いかがいたしましょうか。」


「あっ、そうね。今はどんな状態かしら。」


「お嬢様がなされた処置のおかげで命に別状はないようです。一応今は汚れた洋服を脱がしてそのままベットに寝かしましたが、明日にはきっと意識も戻られるのではないかと思われます。」


「そうね。今の状態だと何か判断するにも情報が少な過ぎね。

 セバスチャン。

 大変だと思うけど、今回の魔獣豚の影響がこの近辺でどうなっているか調べてくれないかしら。」


「畏まりました、お嬢様。」

 セバスチャンはまたきれいに一礼すると、調査のためかすぐに出て行った。


『なんだかこれから、大変な流れに巻き込まれそうな予感がするわ。それにここで対応を間違うと致命傷になりそうね。とにかく明日にもセバスチャンが調べてくれる情報をもとにすぐに判断しなきゃいけないわね。』


 私はメイが出してくれたコーヒーを飲み終えると今日はもう休むことにして寝室に向かった。


 はぁー疲れた。

 明日のことを考えると憂鬱な気分になるけど今日はもう寝なきゃ。


 私はふかふかの布団をかぶるとごろりと横になってすぐに眠りについた。


 むにゃむにゃ・・・ふ 私はメイと二人で夕方までかかって徒歩で別荘に戻った。

 私たちが別荘の直ぐ傍まで来ると、ちょうど私たちを心配して迎えに出てきたセバスチャンと泉の所で出くわした。


「セバスチャン、よかった。」


「お嬢様、ご無事だったのですね。ほんとうに良かったです。」


 私たちが持ってきた異様な状態の荷物もとい人間に、いつも冷静なはずのセバスチャンの目元がつり上がる。

「それにしてもこれは?」

「えっと怒りたいのはわかるけど、後できちんと説明するので先に戻ってけが人用の寝室の用意と私たちの食事をお願い。」


 セバスチャンは異様な状態の荷物もとい人間を先に引き取ろうとしたが私が了承しなかったので、メイに鋭い視線を向けただけで諦めてくれた。

「畏まりました。すぐに手配いたします。」

 そう言うとメイに目線で語ってからいつもの表情で一礼すると、すぐに別荘に戻っていった。


「さすが父さんは執事の鏡ね。今のが私だったらあまりのことに叫んでるわ。」


『私はメイ、あなたの方がすごいと思う。あのセバスチャンの睨みを浴びて、そんなことに感心できるなんて、なんて大物なの。』


 私はメイを連れてセバスチャンの後を追うように重い足を引きずりながら別荘の中に入った。


「お嬢様、けが人はこちらへ。」

 先に戻ったセバスチャンが寝室の用意を済ませ扉の前で待機していた。

 さすがセバスチャン。

 いつもながらの早業に目を見張る思いだ。


 私はセバスチャンに二人の男を預けた。


「お嬢様、お部屋にお風呂の支度をしておきました。すぐに湯あみが出来ますのでお食事前にさっぱりなさってください。」

 私は素直にうなづくと自分の部屋で湯あみすることにした。

 今日はメイではなくメリンダが湯あみの準備をして待っていてくれた。

 私はメリンダに手伝ってもらって手早く済ますと食堂に向かった。


「メイ。」

 食堂に行くと先に支度を終えたメイが食事を用意して待っていてくれた。

 ちょうど私が食事を終えたところにセバスチャンがやって来た。


「お嬢様。人心地ついた所でお疲れかと思いますが、ぜひ説明をお願いします。」

 私は朝起きた魔獣豚の暴走とその結果、あの二人の男を助けることになった経緯を説明した。


「なるほどわかりました。まず私が断言できますことの一つはこの屋敷を魔獣が襲わなかった理由です。それはツバァイ家のご先祖様であるアイ様とシルバー様の肖像画のおかげです。」


『いま何かすっごく納得いかないことを聞いたような気がする。聞き間違いよね。』


「あの正面に飾られている肖像画?」


「はい、肖像画です。」

 セバスチャンは何を当たり前のことを聞いているんだという表情で私を見ると、もっと具体的に説明をしてきた。


「そうですね。証拠というわけではありませんがこちらをご覧ください。」

 セバスチャンが何かが入った袋を渡してきた。


「これは?」


「中をお開け下さい。」

 私は言われるまま袋の中を開けてみた。

 中から我が家のご先祖様である二人の肖像画が出てきた。


「あの二人の武人がお持ちでした。なのであの魔獣豚が襲ってきた中でも潰されず、なんとか生き残れたのでしょう。」


 私的にはちょっとどころかかなり納得できないし、非現実的すぎる気がしないでもないが、そう説明しないとあの騒乱の中で二人だけが潰されなかったり、食われなかった具体的な根拠が見当たらないのも事実のような・・・そうじゃないような・・・。


「なんだか信じられないけど、その以外に何かあの肖像画で同じような事件が起こった事例とかいうものはないの?」


「そうですね。この辺りは何百年も前の魔獣豚の繁殖期に襲われた事実はご存知でしょうか?」


「ええ、ご先祖であるアイ様の日記に書かれていたわね。」


 セバスチャンは私の話に頷くとその根拠となる話を続けた。

「その当時、初代ご当主の伴侶アイ様が領民の無事を願って、祈りを込めて配ったのがあの肖像画だと言われています。」


『祈りを込めて・・・はっ、まさか!』


「セバスチャン、もう一度あの肖像画を見せてくれない。」

 セバスチャンはすぐに私に先ほどの肖像画を渡してくれた。


 私は受け取るとすぐに袋から出して肖像画をひっくり返して見た。


『あった!これだ。』

 肖像画の裏にはアイ様の直筆で”交通安全”と記されていた。


 うかつだった。


 二人の肖像画にばかり目がいって裏を調べないなんて。

 こんなことではあの鬼宰相を出し抜くなんて出来やしない。


 私が深く反省しているとセバスチャンに声をかけられた。


「お嬢様。」


「どうかした、セバスチャン。」


「お考え中に申し訳ありませんがあの武人二人ですが、いかがいたしましょうか。」


「あっ、そうね。今はどんな状態かしら。」


「お嬢様がなされた処置のおかげで命に別状はないようです。一応今は汚れた洋服を脱がしてそのままベットに寝かしましたが、明日にはきっと意識も戻られるのではないかと思われます。」


「そうね。今の状態だと何か判断するにも情報が少な過ぎね。

 セバスチャン。

 大変だと思うけど、今回の魔獣豚の影響がこの近辺でどうなっているか調べてくれないかしら。」


「畏まりました、お嬢様。」

 セバスチャンはまたきれいに一礼すると、調査のためかすぐに出て行った。


『なんだかこれから、大変な流れに巻き込まれそうな予感がするわ。それにここで対応を間違うと致命傷になりそうね。とにかく明日にもセバスチャンが調べてくれる情報をもとにすぐに判断しなきゃいけないわね。』


 私はメイが出してくれたコーヒーを飲み終えると今日はもう休むことにして寝室に向かった。


 はぁー疲れた。

 明日のことを考えると憂鬱な気分になるけど今日はもう寝なきゃ。


 私はふかふかの布団をかぶるとごろりと横になってすぐに眠りについた。


 むにゃむにゃ・・おやすみなさい。

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