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2 ビバ!ご先祖さま

 私は母が処刑された二日後に公爵邸を追い出され、うら寂れた別荘に向かうことになった。

 随員は老執事のセバスチャンと老メイド長のメリンダ、そしてメリンダの娘であり私の乳姉妹でもあるメイが一緒に別荘行きとなった。

 三人とも母の元腹心であり、私がもっとも信頼する人物でもある。

 まっ、逆に父にとってはやれ伝統だ格式だなんだとこうるさい連中でもあるので、いいやっかいばらいとなったのであろう。

 

 私たち四人は嫌そうな表情を浮かべた父が出してくれた公爵家の馬車で別荘に向かった。

 別荘は王都からとんでもなく離れた場所にあったで行くだけでほぼまる一日かかった。

 私たち四人が別荘にたどり着いたのは夜中であたりは真っ暗闇だった。


 しかし、父に何か言い含められていたのだろう。

 公爵家の馬車は暗い中、私たちを下ろすとすぐに屋敷に引き返して行った。

 荷物は馬車からすぐに降ろされ、別荘前に放置された。


 老執事のセバスチャンと老メイド長のメリンダの二人は苦にすることもなく、淡々と離宮のドアを開け、持ってきたカバンから燭台を出すと直ぐに火をおこした。

 そして、玄関前にあった燭台にろうそくを足しながら玄関前を明るくする。

 玄関前は今まで使っていなかったらしく、全てのものに白い布がかけられていた。

 二人はそれを取り払うとまずはまっ正面に飾られていたご先祖様の肖像画のほこりを払う。

 そこには公爵家の始祖となった二人の人物が描かれていた。

 どんな肖像画かというと、一人は王家によくある銀髪の顔をした超絶美形とその隣には、私とよく似た黒い髪で黒い瞳の平凡顔の少女が描かれていた。


 少女の方のご先祖様はまるで自分の肖像画を見ているようだった。

 ただし、私と違いご先祖様たちは二人とも超強力な魔力の持ち主だった。

 ちなみにこちらの肖像画は公爵家の本館と違い、二人ともだいぶ若い。

 結婚してすぐの頃らしく肖像画から砂を吐きそうな甘々な雰囲気が漂っていた。


 私が肖像画を眺めていると寝室の準備に行っていたメイが戻ってきた。

 湯あみの準備が出来たようだ。

 三人しかいないのにさすが公爵家随一の使用人である。

 あっという間に別荘をある程度、使えるようにしてしまった。


「レイチェルさま。お食事はいかがいたしますか。」

 セバスチャンが聞いてきた。

 私は今日はもう遅いので寝ることにして、明日の朝食のみ頼んだ。

 セバスチャンは一礼するとメリンダと自分たちの寝室を使えるようにする為に下がっていった。

 私はメイに湯あみと着替えを手伝ってもらい、その日はそのまま就寝した。

 次の日、目が覚めたのは日が大分上がってからだった。

 メイがなかなか起きない私を起こしに来た。


 私はメリンダが作った朝食を食べると別荘がどのような状態であるか、メイを連れて確認に歩きまわった。

 別荘は居間・食堂・炊事場・二つの浴室に五つの寝室とだいぶこじんまりとしたものだった。

 本当に何もないところだ。

 私はメイを連れ庭に出てみた。

 庭といっても一面、見渡す限り何もないところにポツンと小さな泉が湧き出ているくらいだ。

 私は小さな泉の傍に行くとその泉に手を入れてみた。

 とても綺麗な水が湧いていた。


 何の気なしに私はその泉を背にして後ろを振り返った。

 そこからは屋敷全体がよく見える。

 庭に面した大きく開けてガラス張りの窓、屋敷中央上部にはきれいに光る、これまた、ガラス張りの大きな屋根。


『はっ、ガラス張りの大きな屋根!!!

 そんなものメイと屋敷中を見て回ったけど・・・どこにもなかった。それじゃあ、ここから見えているものは一体・・・何? 』


 私はとりあえずメイを連れて屋敷に戻ると、屋敷の周囲をまわる。

 最初は気がつかなかったのだが少し中の広さに違和感がある。


「どうかしたのですか。」

 メイが心配して声をかけてきた。

 私は声をかけてきたメイの質問に答えることなくメイを連れて、今度は屋敷の中に入る。


「ねえ、メイ。こう中心に向かうような扉をなんか見なかった。」

「中心ですか。いえ、それといって気がつきませんでしたが?」


 私は庭から正面玄関にまわり、玄関前の大階段の前にあるご先祖様の肖像画を見る。

 そして目線を肖像画の真下にあるドアに向けた。


「メイ、このドアの中はなに?」

「はい。ほうきやぞうきんなど清掃道具が入っていますがそれが何か?」


 私は正面ドアを開けた。

 こじんまりした部屋の中に確かに清掃道具が並べられている。

 私は並べられている清掃道具が吊るされている奥の壁を丹念に叩いていった。


 コン コン コン コン

 コン コン コン コン


「お嬢様、なにか?」


 カーン

 

ある一か所で違う音がした。

 私はそのあたりを手探り状態で触ってみた。

 何かあるはずなのに何もない。


 私はもう一度離れ、じっとその壁を見た。

 掃除道具を吊るすには勿体ないような金具が並んでいた。


 だが吊るされている金具の取り付け位置がおかしい。

 なぜ一つだけ下がった箇所にこの金具が取り付けられているのだろうか。

 私はその金具を触ってみた。

 かすかに下に動く。

 そのまま真下に金具を下げて見る。


 カチッと音がして何かが開いた音がした。

 私はもう一度、壁を触ってみた。

 でもいくら押しても引いても壁は動かない。


 今確かにさっき、何かの鍵が外れる音がしたのに・・・。

 私はその手探りした壁に疲れて背を預けた。

 

 (*´Д`)はぁー勘違いしてたのかなぁ?


 私はその壁に寄りかかった拍子に下にあった掃除道具に気づかず、ズルッと横に滑った。

 そのとたん壁の板が横にずれたのだ。


 やったぁー。


 押すのではなく横スライドのドアだったのだ。 

 私は喜んで壁を横にずらした。

 そのとたんに眩い光が溢れてきた。

 思わず目をつぶる。

 私の前にちょー豪華な部屋が現れた。


「すっごい。」

 私は部屋の中に入った。

 中央にアンティークなテーブルがあり、真ん中に何かの本が置かれていた。

 思わず手にとる。


「これは?」

 手にとった途端、本から何か強烈な思考が漏れてきた。


『あなたが私の子孫なのね。言いわね。よーーく聞いて。この本は一回しか開けないわ。そして、一度開いてしまえば最後まで読まない限り閉じられない条件の魔法書よ。良ーーく考えてから読み始めてね!』

 ちょー明るい声が頭の中に響いてきた。


「ご先祖様。一回しか開けないって時点でもう手が勝手にページを開いてるんですけど。んでもって、目が勝手に内容を追ってます。」

 日記に手を取った時点で読むしかないのに、あのアナウンスはいったい何の意味があるのでしょうか?


 私は思わず遠い目をしていた。

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