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其の七

てっきりこの女性が試験管だと思ったら男性のほうだった。しかし考えてみれば当然だ。リムルは女性のほうに声をかけたけれど女性のほうが法術士であるはずはない。法術士は人族しかなれないが彼女は魔族だ。

かつて世界が二つあった時、世界はそれぞれ人族と魔族が暮らしていた。二つの世界の交流はなかったわけではないが乏しく、お互いの姿を見ることはほとんどなかった。

しかし世界が一つになるとそういうわけにもいかなくなった。最初のころは戦いになったりしたそうだが今では住み分けもできて人族の国、魔族の国と分かれている。だからといって人族の国に魔族がいてはいけないわけではないし、この街にも多くの魔族が生活している。

とはいえ先にも言ったように魔族は法術士にはなれない。なぜなら魔族は法力を作れないからだ。

法力は生命力を転換して作る。しかし魔族の場合それは法力ではなく魔力となる。魔力には法力と異なり属性というものが宿っており、魔族は自分たちの種族にあった魔力しか使えない。そうした魔力を使ったものを魔術というのだが、人族の使う法術と異なり使い勝手が悪いものになっている。ただしその代わりに単純な効果だけならば魔術のほうが強い傾向がある。

そのため法術士のサポートにつく魔族はいるが実際に『歪み』の矯正を行える魔族はごく一部しかいない。そんな彼らでさえも法術士と呼ばれず魔術師と呼ばれ、管轄も法術省から魔族省になる。

そのため普通に考えれば魔族が立ち会うとは思わないだろう。


「オルテアは魔族だが法術士に仕事を仲介する仕事に就いている」


続けて言われた会社名は僕でも知っている大手企業だ。この街周辺の『歪み』関連の仕事の三割はそこを経由して依頼がが来るらしいという話を聞いたことがある。


「仲介者としての立場からの視点での評価もつくことになるからそのつもりでいろよ」

「とはいえ試験そのものへの影響力という点では小さなものです。気楽にしてください」

「は、はい」


きちんとお辞儀をするグルーグさんに対してリムルが緊張した面持ちで応えている。逆にセロンやイルゼは気楽にしている。

グルーグさんの評価は就職にも影響がありそうだから将来法術省に入るだろうリムルのほうが僕たちよりも気楽だと思うのだけれども。


「こっちが遅れたせいで悪いが時間がない。試験についての説明は移動しながらする」

「わかりました」



 六人乗りの三列シートの後ろにセロンとイルゼ、真ん中に僕とリムルが乗り込んだ。

助手席ではグルーグさんが人数分の資料を揃え、運転席ではヴァッシュさんが地図を確認している。

目的地までは結構距離があるようで全員に飲み物が渡された。


「お前たち四年だろ? 本気で合格する気はあるのか?」

「あります」

「もちろんです」

「当然だな」


リムルが答えればすぐに他の二人も続く。当然僕も頷いた。


「ならいい。これから行く場所はちとばかし危険だからな。物見遊山の連中には荷が重い」


危険なところと言う言葉に思わず息を呑む。

僕たちも訓練を受けているとはいえ実際に現場にでたことは一度もない。

今更ながら体が震えてきた。


「いつもそんな危険な試験なんですか?」

「先生たちから聞いた限りではそんなことなさそうでしたけど?」

「試験内容は試験官に一任されているな。その上であがってきた試験結果から法術省が判断することになる」



まあだから簡単すぎる試験だと十分な実力があるかわからないという理由で落とされることもあると言われて言葉を失った。


「安心しろ。俺の試験はこなせれば合格間違いなしの内容にしてある。その分危険だが最低限命の保証だけはしてやる」


それ以外は知らんという言葉に不安を覚えずにはいられなかった。

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