其の者達、学校の人気者なり。 1ページ
文芸部、部長|(仮)
日之道 灯。
一年生の中で、いや学校の中でその容姿はトップクラス。先輩だろうがなんだろうが関係なく人気を集めている。
今まで告白した人は少ないのは、本人が呼び出しに全くと言う程応じないからである。
人とはあまり話さないので、詳しいことは謎が多いが、笑顔を振りまく性格でないので、最も笑顔が見たい人No.1と言われているらしい。
「で、この情報は何の意味があるんだよ?」
俺は持っていた紙を誠人に返した。放課後、教室を出ようと思ったら、誠人から紙を渡された。そこに書いてある事は、灯についてだ。俺は目を通しながら、ストーカーとしてこいつを訴えようか考えた。
「お前なぁ。ここに書いてあること、見てみろよ」
誠人は人とあまり話さないと書いてある所を指差す。
「あまり人と話さないあの日之道さんと、一緒の部活にいるってのが問題だ」
真剣な眼差しを向ける誠人。何なんだこいつ。
「だから?」
俺はほおずえをつきながら聞いた。
「どうしてお前が、日之道さんと二人で放課後一つの部屋にいるんだよ⁈」
「変な風に言うな!それに今は二人じゃねぇよ!」
「え?」
俺がそう言うと、誠人は驚きの声を上げた。
「二人じゃない?」
「ああ、昨日入部したひとがいるから、二人じゃない」
「なんだそのうらやましい奴は……」
拳を強く握る誠人。
「一応言っておくが、野郎じゃないからな?」
「えっ?じゃあ誰だ?」
キョトンとして、俺を見る誠人。
「確か木茎葉さんと原田さんだ。じゃあ俺は部活に行くから」
そう言って俺は教室を飛び出した。
「遅くなった理由がそれとはな……」
灯がこちらをジト目でみる。俺の後ろで沙良と香織がこちらを向いている。俺は重たくのしかかる重圧感に耐え切る自信がわかなかった。油汗がヤバイ。
「まったく、日頃から我を見る奴が多いとは思っていたが、その様な物まで作られているとは」
はあーっと大袈裟に溜息をつく灯。俺は見ただけなのに、なんでこんなに緊張しなきゃならないのだろう。
「でも、それは灯さんがとても魅力的に思われているからでしょう」
香織さんが呑気な声で言った。それを聞いた灯は横を向いて
「そ、それなら思うだけにして欲しいものだ。いくら我が魅力的と言ったって、我のデータの様なものを勝ってに作られていると言うのは気に食わん」
と言う。
「無視。彼等が勝手にやってるだけ」
沙良は呆れた声で言った。こいつは手短に話してくな。
「ああそうそう、その紙に書いてあったんだが、人とあまり喋らないってのは、本当か?」
こいつ、ここ数日文芸部に居ただけでも、人とあまり喋らない様には見えなかったからな。
だが俺が聞くと、灯は俺に向かって、複雑な表情をした。
「答えない」
灯が冷たい声で言う。何か怒らせてしまったのかな?顔がこわばる。香織さんと紗良は、無言で俺を見ている。
「我の小説に堂々意見するものだから、そう言うものはわきまえてると思っていたが…」
溜息をつく様に言葉を出した。
「おい、わきまえるも何も、疑問を口にしただけじゃねぇか」
「疑問に思ったからと言って、何でも聞いていい訳ではないでしょう?」
香織さんが言った。灯は
「まぁ、まだお互い知らない事だらけだしな」
と、諦めた様に言った。俺はなにがなんだか分からないままだった。