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其の部、ようやく始まったものなり 1ページ

学校で一番人気の部活にする。

そうは言ったが、文芸部は、まだ同好会としても成り立っていない。と言う事は、活動が認められるためには、部員集めが必須という事になる。

灯にこの事を話すと、灯はそんな事最初から知っていると言う様に溜息をついた。

「入部して一日で気がつくのは良いが、当たり前の事を言わないでくれ」

そう言って灯は、わざとらしく顔を覆う。

「で、どうやって集める気だ?」

部員は集めなくてはならないが、もう五月だ。殆どの人は部活を決めてしまっている。この状況で部員が簡単に集まるのか?

「とりあえず、ビラでも作ろう。なんでも良いから五人集めないと、我の小説を発表出来ない」

お前の文じゃ発表しても売れねぇよ。

「ビラか…本当に効果があるとは思わないんだが……無いよりは良いか」

ただ、ビラなんて作っても、貼る場所なんて無いだろうが。

「あと的当に誰か誘うしか無いだろうな」

灯は結構真面目に考えていた。

確かに、部として認められていない団体が、校内放送を使ったりは出来ない。結局、誰でも利用出来る設備を使うしかない。

「ところでビラって、どこに貼るんだ?」

俺はふと疑問に思った事を灯に聞いた。灯は部室に一つだけある大きな棚から、真っ白な紙を取り出しながら言った。

「そこら辺の壁にでも貼っておく。まだ部員募集の紙が剥がされてないんだ。新しいビラがあったって大丈夫だろう」

灯は俺の方に紙を数枚渡して、筆箱からペンを取り出した。

「……この紙は何だ?」

何も言わずに紙だけ渡されても、なにをするのか分からない。俺が聞くと灯が

「ビラを考えろ」

短く返事をした。灯の手はもうペンを走らせている。俺も何か書いてみようとしたが、このビラと言う物。なかなかに難しい。

まず何をする部活かを書かなくてはならないし、人を惹きつける言葉も必要だ。だが俺は昨日入れられたばかりだし、この部屋の構造すら理解していない。

とりあえず俺は、本のイラストの上に「文芸部員募集!」とだけかいておいた。

「出来たなら人目に付きそうな場所にはっておけよ、薄汚れた倉庫に貼っても意味がないのは分かるだろう?」

灯はそう言って立ち上がった。もうすでに何枚ものビラがその手にある。

「帰りにビラを貼る事。勧誘は明日にしよう」

じゃ、また。と灯は部室を出ていった。そのあと、結局一枚しかできなかったビラを持って、俺も部室をあとにした。









「で?お前はどこの部活に入ったんだ?」

次の日、誠人が教室で俺に聞いて来た。

「文芸部」

俺は短く答えた。

「文芸部?そんな部があったか?」

誠人は嘘つき少年を見る様な目をしながら言った。

「実際にはない。部員も二人だしな。部室は一応あるけど、顧問もいないし、同好会ですらない」

俺は机の上でほおずえをついている。

誠人は後ろの席から身を乗り出してきた。

「二人?じゃあ、もう1人は誰なんだ?」

「日之道 灯って言う人だよ」

俺がそう言うと、後ろから驚きの声が聞こえる。

「日之道?お前、あの日之道さんと同じ部活なのか?」

何だ?知っているのか?

「知ってるも何も、同じ学年だろ?しかも日之道さんっていやぁ、この学校で指折りの美人じゃねぇか」

驚いた。灯は同学年なのか。ついつい灯と言っていたが、先輩だと思っていた。

しかもかなりの美人。そんな人が、文芸部で部員を集めている……直ぐに部員が集まりそうだ。

「で、何でお前が日之道さんと同じ部活なんだよ」

誠人がじっとりとした目を向けてくる。

それは警察官の様に、絶対に吐かせてやるぞと言っている様だ。

「文化系の部活を見ようと思って旧館に行ったら、文芸部に入れられたんだよ」

段々答えるのが面倒になったので、適当にこたえていく。

「入れられたじゃねぇよ。何で日之道さんはお前なんかと文芸部にいるんだと聞いてるんだ」

誠人、お前しっかり言葉を理解してるのか?俺はどうして文芸部に入ったかを語ったのに、似た様な質問ぶつけやがって。

そう言おうとした時、教室に先生が入って来て、この話は自動的に切り上げとなった。

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