其の一ヶ月、夏休みなり!9ページ
「ふぅ~」
荷物を片付け、俺達は今、取り敢えずちゃぶ台に着いてお茶すすっている。部屋菓子はかなり美味しくて、もうゴミしかない。つまり全部食べてしまった。
「ふぅ~」
湯のみを置いて、ホッと一息。窓から見える森林は今現在、夕日によって茜色に染め上げられている。
「しっかし、意外と良い所だな。ここは」
茶をすすりながら、俺は唐突に呟いた。別に意味がある訳でも無く、ただ思った事が口から出た。
「今さっき調べた所、この『ととのい』普通に泊まったら一人一泊二万するそうだ」
ちゃぶ台周りの座布団には座らず、座布団を抱えて畳に寝そべっている灯が、猫のように目を細めて言った。
「…………招待券当てて良かったな。本当に」
俺は苦笑いしながらそう言った。一泊二万って、高校生の俺達には大きな痛手だ。
本当に招待券があって良かった。そう思い直して再び茶をすすっていると、背中をトントンと突つかれた。振り返ると、沙良がトランプを持って、俺の後ろに立っている。
「トランプ、しよ?」
ニッコリ笑ってトランプに誘って来る沙良。
「おお、やるか」
断る理由が無いし、この笑顔に向かって断れないので、俺は承諾。沙良は、続いて香織と灯を誘う。
「参加しますよ」
「何をするのだ?」
二人とも参戦する模様。
沙良は、トランプをシャッフルしながら、灯の質問に答えた。
「大富豪」
普通だな。だけど、それが一番楽しめる。
「ルールはどうするよ?」
ただ、大富豪(大貧民)って派生ルールが多いんだよな。だから最近は始まる前に、ルール確認をしなくちゃならない。
まず、口を開いたのは灯だ。
「‘革命(大嵐)’はありだろう。無ければつまらん」
成る程。まぁ、革命くらいは皆知ってるだろ。
「‘四切り’は入れなくて良いでしょう。でも、‘八切’は入れたいですね」
香織も意見を述べる。四切りってのは、革命した時に面倒なんだよな。このルールは無しっと。
「あ、そうだ。‘イレブンバック’はどうする?」
「入れよう」
「入れましょう」
俺の提案に、灯と香織は直ぐに頷いた。
「ねぇ、強制?任意?」
が、沙良は頷かず、俺に問いかける。
「あー強制だな。任意って時間かかるし面倒だしさ」
「そっか。‘都落ち’、入れる?」
「「当たり前だ」」
おっと、灯と被った。
「‘縛り’は入れるとして、細かい所を決めましょう。ペアの時、片側縛りをありにするか、両側縛りのみにするか……」
あー、縛りって色々あるなぁ……他にも、途中縛りってのもあるし。とにかく、ルール決めだけでも時間がかかりそうだ。