其の一ヶ月、夏休みなり!4ページ
「意外だったな。まさか暇潰しと思ってやったくじ引きが、こんな結果を生むなんて」
招待券を見つめながら、灯は誰ともなしに呟いた。
「本当に意外でしたね。でも、それを引き当てた部長さんの運も凄いですよ」
残念賞のお菓子袋をぶら下げて、香織が言った。
「所で、その招待券、どんな事が書いてあるんだ?さっきはキャッチコピーだけしか見てなかったんだが……」
香織と同じ様に菓子袋を抱えて、俺は灯に質問する。俺達の前を歩いている灯は、俺の事をチラリとみて、再び、招待券を光にかざす様に見上げた。
「うーん、色んな事が書かれているな。旅館名は、『ととのい』と言う所らしい。有効期限は来年の九月。招待券を使用する時は、チェックインする時に見せる事」
招待券を読み上げて行く灯。快晴ではないが、それでも綺麗に晴れている空。日差しはやや強く、とても夏らしい。町中でも、あちこちからセミの鳴き声が聞こえる。
「招待券は、一枚で三人以上七人以下、一部屋使用出来る。招待券は一泊二食。あとは…………がふっ!」
招待券を見上げていたからだろうか?灯は電信柱にぶつかった。灯の手を離れて、ヒラヒラと宙を舞う招待券。それを、紗良が空中でキャッチする。
「すまない。紗良」
ぶつかった所を摩りながら、紗良から招待券を受け取る灯。
「気を付けて」
紗良は、心配しているのか楽しんでいるのかよく分からない表情で、灯を見ている。
「とりあえず大丈夫か?」
俺は半ば呆れながら尋ねる。
「とりあえずとは何だ。……まぁ、強く打ち付けた所は無いらしい」
「その胸がクッションになったんですかね」
「………………ずるっ……」
香織と紗良がそう言って、灯に羨む様な視線を向ける。
「なっ、なんだその目は⁉これに一体なんの意味があるのだ⁉」
慌てて、しどろもどろになりながら後ずさる灯。俺、暫く黙ってようかな。
「目測でもDは余裕でありそうですね……しかも出るとこ出て引っ込む所はって身体。やっぱり、羨ましいです」
「背、高い、美人、ずるい」
香織は大袈裟に溜息を吐いてから、紗良はじーっと灯を見つめて、二人は灯に迫って行く。
「だからその目を我に向けるなっ!それに、これは邪魔なだけで使い道なんて無いぞ!」
「大きなものを持ってる人は余裕ですね。……はぁ……」
「…………ぶー」
周りに人がいないとは言え、胸の話をしている三人娘を、俺は会話に入る事も出来ず、十歩離れた所から眺めていた。