其の者、明らかに異常なり 3ページ
この部ーーーいや、この集まりは、まだ同好会としても活動で来ていない。
そんな所に、俺は入部させられた。
部員は俺を含めて二人。もう一人は、ビックリしてしまう程の美少女だった。
「二人……?」
俺はつい聞き直した。どんな学校でもありそうな文芸部員がまだ入部していない。俺を含めて二人?
…入部するとは決めていないが。
「あぁ、最近は漫画研究会の方が人気があるし、映画同好会に入れば、自分の作ったシナリオで映画を作ったりしているからな。地味な文芸部には、誰も入らない」
そう言って悲しそうな顔をする少女。
「じゃあ、なんでお前はそっちにいかないんだ?映画とかにして貰えるんだろ?」
「お前と呼ぶな。我は日之道灯だ」
美少女ーーーもとい灯は、そう言うと机から降りた。そして部屋を暫く歩き周ったあと、大きく息を吸って灯は言った
「我が文芸部に居るのは……我が、天才小説家だからだ!」
……………………えっ?
今こいつはなんと言った?
「天才小説家?」
ナルシストなのか?
「あぁ、我はこの学校で才能を見せつけ、ゆくゆくは、大きな場所で小説を書くのだ!だが文芸部が活動出来なければ意味が無い。そこに山陰君が来てくれたのだ」
少し興奮気味ではなす灯。別にデビューしたいなら部から始めなくてもいいと思うのだが………この子、少し抜けてるな。
でも自分の事を天才小説家って自負してるんだよな。だったら……
「天才小説家と自負するくらいなんだから、小説は書いてんだよな?見せてみろよ」
俺は椅子から立ち上がって灯に言った。
灯は、「良いだろう」と言って部屋に一つだけある棚から、一枚の紙を取りだした。
灯が差し出した紙を受け取って、俺はそこに書いてある文字を見て
「小学生の作文か!」
かなり大きい声で叫んだ。叫ぶしか無いだろう。
だってそこに書いてある文章は、
ある所に一人の人がいました。
その人は異世界に行きました。
その人は異世界から帰ってきました。
ハッピーエンドです。
…………かなり、いやほとんど、いやまさに超がつく低レベルだった。
「小学生の作文?この我の文章を読んでの感想がそれか?」
灯が不機嫌そうな目を向ける。
「この文で才能を感じれたらおかしいだろ」
「なんだと⁈我の物語は稚拙と言うのか⁉」
「どう見ても幼稚だろ⁉なんで異世界に行ったのに異世界での事が書かれてねぇんだよ!あとなんで一人称が我なんだ⁉」
「何故今そこを…我と先程から言っていただろう。あと異世界での事は思いつかなかったのだ!」
「思いつかなかったなら書くなよ!それより最後のハッピーエンドってとこ!これハッピーエンドって書くな!描写しろよ最後ぐらい!」
出会ってまだ数分のはずなのに、なんで言い合う事が出来んだろうなぁ俺達。
灯は、もしかするとそのまま俺に向かってビームを発射しそうなほどに鋭い目つきで俺を睨んでいる。
「お前、我に意見するからには、小説を書けるのか?」
灯が睨んだまま俺に言って来た。
自慢じゃ無いが、俺は小説は書けない。だが、あの文章を見た後、灯にそう言うのはなんか負けた気がする。俺は多分、今相当引きつった顔をしてるんだろう。
「……少なくとも、……お前よりは」
これ以上顔が引きつらない様にして、俺は言った。
「……そうか…ならば我の目に狂いは無かった」
「へ?」
てっきり今ここで書いてみろとか嫌味なことを言われると思ったのに、狂いは無かったって、え?
「まぁ驚くなよ。この文芸部に入るなら、まずは相当な自信家に入って貰いたかったのだ。君は'我よりレベルの高い小説が書ける'と言った。かなりの自信家と見れる」
自信家って……こんな文章を見た後なら誰でも小説が書けるって言うに決まってるだろ。もしかしたらこいつは、阿呆なんじゃないかな。
しかし、灯は何か思いついた子供の様な顔をしている。顔の横にニヤリと文字が見えそうだ。
「我は、我の作品を轟かせる為に、この文芸部を学校で一番人気の部活にしたい」
学校一とは、大きな事を言うもんだ。
「どうだ?文芸部を人気の部活にしてみないか?」
灯は、俺をまっすぐに見つめて、不思議と楽しそうな表情で問いかけてきた。
まぁ俺も、この時は目を輝かせていたらしいが。
「学校一人気の部活ね。だがお前の今の文章力で物語を書いていたら無理だろう。…良いぞ、文芸部に入ってやろう」
「ならば、決まりだな」
この物語は、花山南高校文芸部の、今や伝説になりかけている活動記録。
こんにちは、石本です。
読んで下さった方に大きな感謝を。
文章力の無い自分が、文芸部で文章の物語を書くのは、あまりにも無謀ですが、頑張っていきます。
さあ次回は、始まる部活。
お楽しみに。