其の一ヶ月、夏休みなり!1ページ
登場人物の年齢を越す。
これって、結構ダメージあるんです。
「えっ?こいつら中学生でこんな事してるの?」
って言うのが多くて……格好いいキャラを、自分も書いて、表現できる様になりたいなぁ
明日から夏休みとなると、学校中が浮き足立っている。クラスメイト達は、先生の話を聞かずに、夏休みの予定を話し合う。そして、盛り上がった空気を一気に冷ます様に、大量の宿題が配られる。
まぁ、それでも皆浮かれているのだが。
そして、浮かれているのは、この文芸部も同じだった。一学期最後の活動。それはある議論から始まった。司会進行役は、部長。日之道 灯。
灯は、威厳たっぷりに俺達を見渡してから、話しを始めた。
「明日から夏休みだ。そして、夏休みに殆どの部活動が行う事がある。皆、わかるか?」
「合宿」
灯の問いに間髪入れず、紗良が答える。僅かに青味がかった短い髪を手櫛で整えながら、紗良は灯を見つめている。
「そうだ。合宿だ。部活動と言う組織のレベルを、集中的に上げるために行われるこの合宿を、 我が文芸部でも行おうと我は思う」
腰に手を当てて、俺達を見回す灯。桜色の生地の花山南校のセーラー服が、窓から入ってくる日差しを受けている。そんな灯をボーっと見ながら、俺は灯に質問した。
「合宿に行くって言ったって、俺達は文芸部。合宿の定番である山とか海に行くとして、何をするんだ?」
「遊ぶ」
俺の質問に、しれっと灯は答えた。
「は?」
さっき、灯は合宿とは、その組織のレベルを集中的に上げるものだと言っていた。そして今、灯は合宿で何をするのかと言う質問に、遊ぶ。と答えた。
……矛盾、してないか?
「灯さん。どうして合宿で遊ぶ事が、文芸部のレベルを上げる事になるのですか?」
俺の疑問を代わりに聞いてくれたのは、木茎葉 香織。今日も随分と姿勢良く椅子に座っている。
灯は、その質問を待っていたと言う様にニヤリと笑って、腕を組み壁に持たれて、理由を喋りだした。
「知識の無い書き手は、表現力が乏しい。その足りない知識をカバーするだけの想像力があるならばまだしも、基本的な知識が無いと、単純な描写ですらままならんからな。例えば、オシャレに関する知識の無い書き手は、登場人物の私服が単調だったりする。今回合宿に行く理由は、この『知識』を蓄える為だ。山に行ったり海に行ったりした『実体験』は、小説を書く時の大きな『知識』となる」
その理由は、俺を納得させるのに十分な理由だった。思わず拍手を送りそうになった。
まあ、本音を言えば、誠人達とじゃ余り遠出をしないから、楽しそうって話なんだけど。
「と言う訳で、我が文芸部は夏休みも活動するぞ。しばらくは合宿についての会議だが、夏休みと言う長い休日を利用して、遊びまくり、知識を蓄えるぞ!」
ミンミンゼミの鳴き声が聞こえる放課後の部室で、灯は生き生きと宣言した。