其の者、相談者なり 7ページ
うーむ、この英語と言う教科、かなり難しい。教科書を見ても、何が書いてあるのか分からない。唯々アルファベットが並んでいるだけにしか感じない。もしかしたら、これは教科なんて物ではなく、先生が考えた嫌がらせの為だけの授業なのかもしれないな。
「お前…英語が苦手なのはわかるけどよ……そこまで言う事無いんじゃないか?」
愚痴が漏れていたのか、誠人の呆れた口調が後ろからきこえる。
「でもよ?なんでこの俺が良い点数を取れない教科があるのかって話だ」
「『この俺が』って、さりげなく自慢しているみたいに聞こえるぞ。……まぁ、お前英語が苦手なのはわかるよ。だってお前英語のテスト、赤点越えて青点踊ってるんだからよ」
「まったく、理系頭の俺には理解できん領域だ」
俺はそう言って腕を組む。その俺の言動に、誠人は苦笑しながら
「そこまで言うか、ならどうして文芸部に入ったんだ?」
と聞いて来た。教室では、今日最後の授業が終了した事を意味するチャイムが鳴っている。
おれは、前を向いたまま一言。
「知らん」
俺が文芸部に入ったのは、人数欲しさに灯が強制的に入れたんだと、俺は思っている。まぁ、活動は楽しいし、辞める気はないが。
放課後。部室へと向かう途中、俺は少し回想をしていた。
それにしても、灯はよくあの文章で自分の事を天才小説家って言ってたな。……あの文章は、色々はしょってるから分からないけど、もしかしたらあいつの頭の中は、ワンダーランドになってるのかもしれない。となればあいつは表現の仕方を知らないだけで、名作と呼べるような作品を頭の中に持ってるのかもしれないな。
そんな事を考えながら階段を下っていると、不意に後ろから声をかけられた。
「あれ?君は確かぶんげー部にいた……」
おかしいな。文芸部はまだ正式じゃないし、人から声をかけられる程目立った活動もしていない。誰だろうと思って振り返ると、
「あ!やっぱり、ぶんげー部に居た人だよね!」
山中さんが、階段の上段から俺を見下ろしていた。