其の者、相談者なり。5ページ
灯は、威圧感たっぷりに俺を睨んでいる。
「え…えぇと」
「なんだ?さっきまでやっていた事を、説明すればいいだけだろう?何をためらっているのだ?」
そう言いながら俺の方に迫ってくる灯。俺の方が背が高いはずなのに、思わず後退りしてしまう。なんでだろう…別に悪い事してた訳じゃないのに、こんな気分になるなんて。
さらにその時、
「あらこんにちは、二人共、今日は早いんですね」
「私、来たよ」
香織と沙良が、扉を開けて部室に入って来た。
「…………」
「……あの…どうしたんですか?」
固まってしまって動かない俺を疑問に思ったのか、香織が口を開いた。
「なに、龍夜君がおかしな病気を発病したそうなのでな。病院に行ってはどうかと提案していたのだ」
「俺は至って健全だっ!」
「そうか。ならばさっきまでやっていた事はなんだ?説明しろっ!」
「さっきまでやっていた事…とは?」
あ…香織が何か聞きたそうな目で俺を見ている⁈それに沙良も俺をじーっと見ているし、灯は俺を睨み続けている。
「俺は悪い事はやって無い!」
その場の空気に耐えられなくなって、俺はつい声を上げた。だが、その言動は…
「まるで言い訳し始めた子供の様だな」
「……本当に悪い事はしていなかったな。だが…それならどうして正直に言わなかったのか……」
机に手を着き、ハァと溜息をつく灯。俺はどうしていいのか、椅子に座っている。
「言えば良い事をあんなに渋ってましたからね…誤解しますよ。」
香織も呆れている。
「でも、凄く良いよ」
そんな中、沙良だけが、まとめられた原案を持って微笑んでいた。
これが、俺の説明を聞いた後のそれぞれの反応である。二人は完全に呆れて、一人は優しく褒めてくれた。
「確かに、原案をまとめて一つの物語にするという考えは良かったな。そこは及第点だ」
頭を上げて、髪を整えながら灯が言った。
「だが、龍夜君が一人で組立てた物では不安だなぁ」
……ひっでぇ。俺が選んだんじゃ駄目なのかよ。一方灯は、部室を謎解きをする探偵の様に歩き回りながらこう言った。
「ま、我は原案の中から良い物を選んで膨らましていこうと考えていたが、原案をまとめて、良い物語に良い設定を組み込める龍夜君の考えが気に入った。皆、まずは、原案の種類分けをしよう。まずは、
キャラクターについて書かれた物。
舞台について書かれた物。
物について書かれた物。
そして、物語の始まり方。僅かな掛け合いが書かれた物に分ける。そこから段々と作る事としよう」