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其の活動、遊びとは違うものなり。 4ページ

次の日。

俺は長々とした授業を終え、文芸部室に向かっていた。香織は委員会。紗良は掃除当番で遅れると言っていた。俺は旧館の中を通って、文芸部室の扉を開いた。

「灯。いるかー?」

そして、俺は固まった。棚が一つと、学校の会議で見かける机と椅子しか無い部室。その中で、一つの机の上に、突っ伏して寝ている灯が居た。近づくと、灯の手元に昨日書いた公園での事の作文があった。俺は灯を起こさない様にそれを持つ。



部員全員で公園に行った。とても楽しかった。



相変わらず、短い文章だ。

俺は原稿用紙を一枚めくる。そこには、[木茎葉 香織]と書かれていた。



土曜日に、文芸部のレクリエーションとして、部員全員で公園に行った。今思い返してもとても楽しいもので、特に私が楽しいと思ったのは、公園内で行った鬼ごっこだ。

鬼ごっこは、勿論子供達がやる様な追いかけっこの事だ。しかし、公園内を大きく使った鬼ごっこはとても楽しく、面白いものだった。

あちこち走り回り、追いかけ、追いかけられて。気が付けば、お昼になっていた。

みんなでシートの上でとる食事はピクニックの様で、それまで走り回っていたからだろうか、とても美味しかった。



凄い文章だな。さっき読んだ物と比べると、特に。あの時の鬼ごっこは面積が広かったから鬼になると大変だったな。

そんな事を考えながら原稿用紙をめくる。

俺のだったので飛ばして最後、[原田 紗良]と書かれた文章を読む。




この前公園に行った事が、この作文を書くためだとは思わなくて、私は驚いて、何を書いたら良いか分からなくなって、とりあえず、最初に公園を歩いた事でも書こうと、考えて、書いてみる。

公園内での散歩は、木々に囲まれて、とても気持ちの良いもので、私達は、色んな話をして歩いていると、整備された道の脇に、綺麗な花があって、私が知っている花もあり、その花についてみんなと話した事は、凄く楽しくて、また行きたいと思った。





……これは意外な文章だな。

いつも無駄の無い言葉で喋ってるから、てっきり文章も同じ感じだと思っていたが、「。」が二つしか無い。

今読んだ作文を見ると、一番上手なのは香織って事になるな。

俺は原稿用紙を元の位置に戻した。灯はまだ寝ている。寝心地が悪いのか、顔をしかめている。俺は灯の向かいの席に座って、持って来た本を読み始めた。

しばらく読んでいると、扉が開いた。目を向けると、紗良が鞄を持っている。

「よう。すまんが、少し静かにしてくれ」

そう言って俺は灯を指差す。紗良は灯をみて納得した様で、俺の隣に座った。俺は本を読んでいたが、紗良がさっきからこちらを見ているようで、落ち着かない。

「なぁ紗良、どうかしたのか?」

視線に耐え切れなくなって、俺は紗良に話しかけた。

「本、取っていい?」

そう言って紗良は紙袋を指差す。紙袋のなかには、俺が持って来た本が入っている。

なるほど、中に入っている本が気になったんだな。

「あぁ、良いぞ」

俺がそう言うと、紗良は紙袋を取って、中の本を見ていく。その時、部室の扉が開いて、香織が入って来た。

「こんにちは。あら、灯さん、寝ているのですか?」

扉を閉めて、灯を見る香織。

「あぁ、だから少し静かにしてくれ」

俺は本から顔を上げて言った。香織はこちらを見て、笑顔で頷いた。そして、その横にいた紗良を見て、紗良の足元にある紙袋をみて、俺を見た。

「あの…この本、全部山陰君が?」

紙袋を指差しながら、香織が言った。

「あぁ、持って来いと言われてたしな。だが流石に十冊は重かった」

俺はそう言って肩を回す。

「一回にそんな多く持ってこなくても良かったのに…」

「ははっ。そうだな」

香織は笑って、紙袋の中に手を伸ばす。

「んんっ」

その時、灯が声を上げた。俺はビックリして灯を見ると、灯はもぞもぞと動いて、顔をこちらにむけた。まだ眠そうな顔をしている。

「んむぅ。皆居たのか?」

俺は本を閉じ、笑いながら言った。

「ああ、皆そろってるぞ」

小学校の遠足とかは、後日必ず感想を書くんですよね。書くのは凄く面倒で、白紙の原稿用紙を睨んで居ました。


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