其の活動、遊びとは違うものなり 1ページ
集合時間の十時の三十分前に、俺は鳥の像の前に来た。こういうものは人を待たせない様に早めに来るのがマナーだからな。
そう思って鳥の像の前に行くと、香織がもうすでに来ていた。
香織はこちらに気が付くと、にっこり笑って手を振った。俺も手を振り返す。
「早いな。待ってたのか?」
「いえ、今来たとこですから」
そう言って笑顔を向ける香織。なんだか、得をした気分だ。
「山陰さんも結構早いですね」
「まぁ、人を待たせない様にな」
「心遣いが行き届いて……あ、灯さんです」
香織が指を差した方向を見ると、灯と紗良が歩いて来た。二人はこちらに気付くと、かけあしでやって来た。
「二人とも早いな。集合時間の二十分前に揃うとは我も思わなかった」
「待たせた?」
灯と紗良が像の前に来て言った。
「いや、さっき来たばっかりだ。ところで、公園で遊ぶって言ってたけど、何をするんだ?」
灯は、俺がそう聞くとはっとした表情で固まった。
「……決めてないのか」
俺は溜息をついた。まさかなんの予定も無しに集まっていたとはな。
「あの…まずは公園を回ってみません?」
香織が少し遠慮がちに言った。香織の後ろの看板には、公園内一周散歩コースと書かれていた。
「散歩。賛成」
紗良が真っ直ぐに香織を見ながら言った。
「うむ、自然を見ながら歩くか…では、右回りか左回りか、どちらで回る?」
「適当でいいだろ」
俺たちはそうして、歩き始めた。
歩いていると会話が弾み、楽しい気分になる。自然に囲まれながら歩くのがこんなに気持ちがいいとはね。そう思っていると、香織と沙良がしゃがんでいた。
「どうした?」
不思議に思って声をかけると、二人がこちらを向いた。
「この花。誕生花」
沙良が指さしながら言った。そこには茎が細く、花は外側が黄色く、内側が赤茶色の花があった。名前はしらないが。
「誕生花か」
灯がその植物を見ながら言った。誕生花とは、産まれた日時にちなんだ花のことだ。だが「この日にこの花」というのは国や地域によって違うらしい。一体どこの定義を参考にしているのだろうか?
「へぇ。でもよく花の種類が分かったな。なんかチューリップとかじゃないと見分けがつかねぇや」
俺は花を見ながら言った。
「この花は、多分ハルシャギクです」
香織が花を見たまま言った。紗良も花を見続けている。
「紗良、この花好きなのか?」
灯が二人の上から覗き込む様にしてきいた。
「私。この花。同じ」
紗良が立ち上がって言った。て事は、ハルシャギクが誕生花の日が、紗良の誕生日って事か?これで意味あってるよな?
「そうか、我も自分の誕生花を調べてみたくなった。紗良、どうやって誕生花を知ったのだ?」
灯がそう言って、紗良と歩き始めた。後から俺と香織もついて行く。
「自然は見るだけじゃ無くて、語れる物なのかなぁ」
歩きながら、俺は呟いた。
「そうですね。自然を感じるのも素敵だけれども、こうやって話すのも良いですね」
横にいた香織が言った。俺達四人は、談笑しながらその後も公園内を歩いていた。