其の者達、学校の人気者なり 3ページ
みんなのよく読む本のジャンル。
香織さんと紗良は色んな本を読むらしい。
俺はファンタジー系が好きで良く読んでいる。
そして、この文芸部部長、日之道 灯がすきなジャンル。それはーーー
「絵本」
だそうだ。笑うなよ。本人は真剣なんだから。
「絵本か……そりゃなんでだ?」
嫌な感じに聞こえない様に、俺はなるべくいつもの口調で言った。
「なんでだ?気になるのか?」
灯は俺を見上げながら言った。
「我が絵本が好きな理由はな、絵本と言うのは、子供達にもわかりやすい言葉で書かれていて、大人でも楽しめる物語が書かれているからだ」
はっきりと答える灯。堂々とした口調としっかりとした理由は、さっき笑いそうになった自分が恥ずかしく感じる程だ。
「我もあのような物語を創る」
あの文章力でなければ感動しそうな言葉だな。
「灯。物語を創るって、部誌とかの事とか決めてねぇだろ?俺らはまだ同好会でもねぇしさ」
俺は溜息混じりに言った。
「やっぱり部誌とか書くのですか?」
灯が反応する前に香織さんが聞いて来た。
「一応文芸部ですし、何より部長が乗り気なんです。香織さんは、書くのはどうですか?」
「書いた事はありません。山陰さんは書いた事あるのですか?」
「いや、ありませんよ。でも書くのも良いんじゃないかと思ってる」
俺がそう言うと、香織さんはふふっと笑った。
「敬語、同じ学年なんですし、崩して下さい」
「だったら香織さんも……」
「私はこの方が話し易いんです」
「だったら俺も気にしない事にするよ」
香織さんと談笑していると、腕を引っ張られている気がした。見ると、灯がこっちを向いている。
「部誌は早めに作りたい。どうすればいい?」
普通のお願いの方法だな。まあ、まわりくどい方法より良いか。
「先生に、同好会でなくても活動できる様にさせてもらわないと。あともう一人入ってくるかだな」
俺は頭にある情報をまとめたのだが、この二つしか思い浮かばなかった。情けない。
「そうか……難しいのだな。それより、皆が折角集まったのだ。どこかに遊びに行かないか?」
灯は香織達の方を向いて言った。
「遊びに行く?」
俺は灯に聞き返した。
「ああそうだ。親睦を深めるのを目的として、皆でどこかに遊びに行こうと思う。場所とかそう言うのは明日決めるつもりだ。」
俺は香織達の方をみた。二人は顔をこちらに向けている。やっぱり急に遊びに行くと言われて困っているのだろうか?
「楽しみ」
「良いですね。皆さんの事も知る事が出来ますし、何よりとても楽しそうで」
二人はそう言って微笑む。意外とこのメンバーは息があってるのかな。俺は密かに思った。