其の者、明らかに異常なり
この物語を見つけて下さって、ありがとうございます。彼らを見て、面白いと思って頂けたら幸いです。
「部活くらい入った方がいいよ」
親や友達にこう言われた俺は、古めかしい扉の前に立って、その扉を開けた。
そしてーーーー
「なんだ君、新入部員か?」
「あーっ、ようやく授業終えたーっ!」
今日最後の授業が終わり、俺は大きく伸びをした。
「喜びすぎたっての。お前はこれから家に帰んのか?」
俺の後ろにいる男子生徒、誠人が声をかけて来た。授業が終わって、ガヤガヤ騒ぎ出す教室の生徒達。
「まぁな。お前はこの後部活だっけ?」
俺は体を前に向けたまま誠人に問いかけた。すぐに「まぁな」と言う返事が帰ってくる。
誠人は、バスケットボール部に所属している。毎日楽しく過ごせているのか、疲れただのだるいだの、色々愚痴吐いてはいるものの、それでも続けてる。
「お前も部活やってみろよ。楽しいから」
誠人は爽やかな笑顔を俺に向けて言った。
ちょうどその時、教室に先生が入って来て、ガヤガヤしていた教室が静かになる。まぁみんなヒソヒソと話しているが…。
「楽しいってもなあ」
俺達も声を落として喋り続けた。
「別にバスケに誘ってるワケじゃねえよ。お前も夢中になって何かしてみろよって言ってんだよ」
誠人は俺が中学校はつまらなかったとぼやいてたからだろうか、高校で何かさせたいらしい。正直思う。オカンか。
「じゃあ検討してみるよ」
嫌な話の流れになりそうなので、俺はそう言った。
「良いトコ入れると良いな」
後ろから、そんな言葉が聞こえた。
放課後。
家について、俺はまっすぐに自分の部屋に入り込んだ。ベッドの上に乗り、ゲームを起動する。ゲームをしながら、ついつい誠人との会話を思い出していた。
別に、部活をしたくない訳じゃないんだよな。そこまで忙しい訳でもないし、でも、放課後に運動してる自分は想像できん。何かに一生懸命ってのは気持ちがいいんだろうけど、そんなものは爽やか系の奴らがやってろ。
…………でも、少しくらい…
その時、ガチャリと俺の部屋のドアが開いて、母親が入って来た。
「帰ってきたんならちゃんと言ってよね。それに、ゲームばっかりしてるのは勿体無いわよ。それだったら部活くらい入ったら?」
母親は扉の前でそう言って、溜息をついて部屋を出た。用事がないなら扉開けるなよ…。
それにしても、ゲームばっかりしてるのは勿体無いかぁ。でも何にもする事なんか無いし、…………部活、ねぇ。
そう思った俺の前で、ゲーム画面はGAME OVERの文字を表示していた。
「部活って、今更ながらどんなのがあるんだ?」
次の日の放課後、俺は誰に言うワケでなく、ポツリと言った。だが後ろの席の誠人は聞こえてた様で、つっかかって来た。
「お前部活入るのか?どこにすんだよ?」
何故か目を輝かせて聞いて来た。
「だけど運動すんのは嫌だからな。楽なのはないのかな?」
「楽なのは無いと思うけど、運動が嫌なら文化系の部活に入ればいいじゃねぇか」
誠人の言葉に俺は一瞬止まった。そしてゆっくりと後ろを向き
「そうだよ。文化系の部活があったよ」
驚きの表情を隠さずに俺は言った。
「お前、部活には文化系もあるって忘れてただろ」
呆れた表情を隠さずに誠人は言った。
「誠人、文化系の部活って、どこに行けばあると思う?」
「お前つい最近説明されてただろ…旧館にあるよ」
その言葉を聞いて、俺は立ち上がった。
「サンキュー」
そう言い残して、俺は旧館に向かって駆け出した。