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記憶より先に

作者: 璃雨
掲載日:2026/06/01

夏を思い出すとき、景色より先に感触が浮かぶ。


夕方の生暖かい風。


誰かと歩いていたのか、何を話したのか。


何も思い出せない。


風だけは鮮明に覚えている。


肌にまとわりつくような重さ。


昼の熱を抱えたままの空気。


あの風に吹かれた日が、ひとつの夏として残っている。


出来事は輪郭から消えていくのに、感触だけは置き去りにされない。


忘れたあとに残るのは、いつも感触のほうなのかもしれない。


言葉になる前の感情が、風の感触を借りて残り続けている。

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