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生贄として捨てられた不遇オメガ、伝説のもふもふ聖獣様に拾われて空に浮かぶ島で極上の溺愛を注がれる  作者: 水凪しおん


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第5話「触れ合う体温」

 空がゆっくりと茜色に染まり始めた頃、二人は神殿の広いテラスに腰を下ろしていた。

 夕日が雲海をオレンジ色に照らし出し、世界全体が燃えるような温かい光に包まれている。昼間の暖かさが少しずつ引き、夕暮れ特有の涼しい風がルカの頬を撫でた。ルカが微かに身を縮めると、隣に座っていたレオンが立ち上がり、部屋の奥から厚手のショールを持ってきた。


「冷えるだろう」


 レオンの大きな手が、ルカの肩にふわりとショールをかける。その瞬間、レオンの指先がルカの首筋にわずかに触れた。

 ビクッ、とルカの体が反射的に跳ねる。村にいた頃、他人の手が伸びてくるのは、殴られるか突き飛ばされるかのどちらかだったからだ。ルカは咄嗟に目をきつく閉じ、身構えた。

 しかし、痛みはいつまで経っても降ってこなかった。代わりに感じたのは、恐ろしいほどの優しさを帯びた温かい手のひらだった。

 レオンはルカの肩越しに手を回し、ショールの端を丁寧に整える。彼の体温が衣服越しに伝わり、冷えかけていたルカの背中をじんわりと温めていく。


「すまない、驚かせたな」


 レオンの声には、深い後悔の色が滲んでいた。ルカは恐る恐る目を開け、横に座り直したレオンの横顔を見つめた。

 伝説の聖獣であり、圧倒的な力を持つアルファ。その気になれば、ルカの細い首など一瞬でへし折ることができるはずだ。それなのに、彼はひび割れたガラス細工を扱うように、どこまでも慎重にルカに触れる。その事実が、ルカの胸の奥をぎゅっと締め付けた。


『どうして、ここまでしてくれるんだろう』


 疑問が口をついて出そうになるが、ルカはそれをぐっと飲み込んだ。答えを聞いてしまえば、この夢のような時間が終わってしまう気がしたのだ。

 レオンは夕日に染まる雲海を見つめたまま、静かに口を開く。


「俺は長い間、この島でたった一人で生きてきた。空の果てから下界を見下ろしながら、ただ時が過ぎるのを待っていた」


 レオンの横顔は彫刻のように美しく、そしてどこかひどく寂しそうだった。


「だが、君を見つけたとき、俺の世界に初めて色がついた気がしたんだ。君の香りが、俺の魂の空白を埋めてくれた」


 レオンがゆっくりとルカの方へ視線を向ける。黄金色の瞳に、夕日の赤い光が反射して揺らめいている。


「だから、怯えなくていい。俺は絶対に、君を傷つけない」


 その言葉とともに、レオンの大きな手がルカの手を包み込んだ。ゴツゴツとした節立ち、厚い皮膚。戦いを知る者の手でありながら、その触れ方は酷く優しい。

 ルカは逃げることを忘れ、その大きな温もりに自分の小さな手を委ねていた。レオンから放たれる甘く深いアルファの香りが、ルカの周囲の空気を満たしていく。張り詰めていた心が、春の雪解けのようにゆっくりとほだされるのを、ルカは確かに感じていた。

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