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生贄として捨てられた不遇オメガ、伝説のもふもふ聖獣様に拾われて空に浮かぶ島で極上の溺愛を注がれる  作者: 水凪しおん


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番外編「雲の上の花冠」

 浮遊島に、穏やかな昼下がりが訪れていた。

 雲海は真珠のような輝きを放ち、どこまでも続く青空には白い鳥たちがゆったりと円を描いて飛んでいる。ルカは神殿から少し離れた丘の上に座り、膝の上に色とりどりの花を集めていた。薄紅色の花びら、星の形をした黄色い小花、そして甘い香りを漂わせる青い蕾。ルカの指先がそれらを器用に編み込み、少しずつ一つの輪の形に仕上げていく。


『この花なら、レオンの銀色の髪によく似合うかもしれない』


 ルカは心の中でつぶやき、ふふっと小さく笑みをこぼした。

 ルカのすぐ隣では、巨大な白銀の狼が心地よさそうに身を横たえている。人間の姿ではなく、本来の獣の姿でのんびりと日向ぼっこを楽しんでいた。豊かな毛並みが微風に揺れるたび、新緑のような清々しい香りがルカの鼻腔をくすぐる。時折、狼の大きな耳がぴくりと動き、ルカの立てる微かな衣擦れの音を拾っていた。

 やがて、ルカの手元で色鮮やかな花冠が完成した。不揃いではあるものの、ルカの優しい魔力が込められた花々は、決してしおれることなく瑞々しい光を放っている。


「レオン、起きていますか」


 ルカが声をかけると、狼は閉じていた黄金色の瞳をゆっくりと開いた。そして、大きな頭を持ち上げ、ルカの手元にある花冠を不思議そうに見つめる。


「君が作ったのか」


 狼の口は動いていないが、レオンの低く落ち着いた声がルカの頭の中に直接響いた。聖獣としての力を使い、思念で語りかけてきているのだ。

 ルカは花冠を両手で持ち上げ、少し照れくさそうに微笑んだ。


「はい。いつも僕を守ってくれるお礼に……その、似合うか分からないですけど」


 狼は何も言わず、大きな鼻先をルカの顔にそっと擦り寄せた。それから、頭を下げるようにしてルカの目の前に差し出す。

 ルカは背伸びをして、レオンのふさふさとした耳の間に、手作りの花冠をそっと乗せた。白銀の美しい毛並みの上で、色とりどりの花々が王冠のように輝いている。威厳に満ちた聖獣の姿と、可憐な花冠の組み合わせは少しちぐはぐだったが、それがたまらなく愛おしく思えた。


「とてもよく似合っています」


 ルカがそう言うと、狼は嬉しそうに喉の奥で低い音を鳴らした。そして、太い前足でルカの体をそっと引き寄せ、自分の豊かな毛皮の中に包み込む。ふかふかの毛並みに顔を埋めると、たまらなく安心する熱が伝わってきた。


「君の手は、世界で一番優しいものを生み出す魔法の手だ」


 レオンの思念が、頭の中に甘く響く。かつては泥にまみれ、忌み嫌われていた自分の手が、今は大好きな人を喜ばせている。その事実がルカの胸をいっぱいに満たし、自然と温かい涙がじんわりと滲んだ。

 ルカはレオンの首元に腕を回し、その絶対的な温もりに身を委ねた。精霊たちが二人の周りを飛び回り、花冠からこぼれ落ちた光の粒が、昼下がりの空へと静かに溶けていった。

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