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わたしがいのちを、取り戻すまで。  作者: 水瀬 悠里


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【第1章】お姉ちゃんだから、の呪い

私は、昏いこどもだった。

小学校の頃の、写真のなかの私は、いつもみんなの影にいて、ニコリともしない、いてもいなくても分からない。


家に帰れば、こどもらしいわがままは「お姉ちゃんなんだから」と取り合って貰えなかった。


運動会も、遠足も、輪の中にはいない。

いつも何処か具合いの悪い、痩せっぽち。


自信なんか、いつもなかった。自己主張も、ヘタクソ。

気にかけて貰えることは、いつからか諦めていた。


女の子なんだから、「ちゃんとしなさい」。

お姉ちゃんなんだから、「迷惑をかけてはいけない」───


私はたくさんの忘れ物をする子だった。

そして、弟たちとケンカしたときも、親から返ってくるのは決まってこの言葉。


できないのは「私が悪い子だから」だと思った。

何かをやったら、こんなことを言ったら、また怒られる。


学校では、「好きな人同士」で組むたびにあぶれた。

何十回と繰り返される「花いちもんめ」(遊びの中で欲しい子を選ぶゲーム)でも、「あの子が欲しい」とは呼ばれない。

そういう子は、すぐにいじめの対象になった。


そうやって、最初は薄く、でもだんだんと厚い雲が心に広がり、太陽の光をさえぎり、影を落としていった。


小学校高学年になると、私は少しずつ、周りに合わせるようになった。

嫌われないように、笑顔が上手くできるように、愛想良く見えるように、なんども鏡の前で練習した。

怒られたら困った顔ができるように、表情を増やしていく。


そして、笑ってごまかすことを覚えた私は、やがて「空気を読みすぎる」大人になった。

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