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第6話 ルール

ZOIDに向かって突進している最中リンが口を開き。


「小型は後回し、先に中型を沈めるよ!」


リンにそう言われてリュエルはブーストしなから中型に向かってビームライフルを2連射。しかし、1発は回避、もう1発も当たりどころが悪く過貫通してしまう。


「ちっ!なら!」


そう声をこぼし接近しようとすると小型が数体接近してきた。仕方がなくブレードを取り出して小型に攻撃を加える。一撃で数体を両断し、瞬時に次の標的へ。リュエルは ZOLD の群れを掻き分け、中型に接近。


「一気に決めるぞ!」


リュエルが叫ぶ。そしてそのまま躊躇なく、中型の懐へと突撃した。マシンガンを連射し、ZOLDの注意を引きつける。ZOLDは巨体を揺らしながら、エリスに向かって突進してきた。


リュエルはブレードを構え、ZOLDの攻撃をギリギリで回避した。その瞬間、エリスはZOLDの懐深くに潜り込む。ZOLDが体勢を立て直そうとするよりも早く、リュエルはブレードを振り上げた。


ブレードが中型ZOLDのコアを正確に捉え、高温の刃が装甲を溶かし、内部へと深くめり込んだ。ZOLDは甲高い断末魔を上げ、内部から光を放ちながら大破した。黒い破片が飛び散り、ZOLDの最後の残骸が地面に崩れ落ちた。


「やっと終わったか」


リュエルは息を切らしながら叫んだ。ZOLDの脅威が去り、安堵の息を漏らそうとした、その時だった。


「リュエル、来るぞ!」


リンの声が、今度は別の意味での緊迫感を帯びて響いた。


リュエルが顔を上げると、遠くの瓦礫の隙間から、複数の機影がこちらに向かってくるのが見えた。武装や塗装などもバラバラ、形状も違うと明らかに正規軍のものではない。そして、それらを率いるかのように、武装した人員を乗せた車両が続く。

正規軍でないとするとおそらく……


「あれは……シンジケートの部隊だね」


リンの声が、リュエルの予想を裏打ちした。ZOLDの群れを突破したリュエルとエリスの前に、今度はこの無法地帯を牛耳るシンジケートの部隊が姿を現したのだ。彼らは、墜落した輸送機の「お宝」と、そして目の前の謎のVG「エリス」を狙っているのは明らかだった。


「リュエルどうする?」


リンに問われる。面倒ごとを避けたいのなら今すぐここを離脱するべきなのだろうが、すでにもう補足はさせられているだろう。だとすれば下手に逃げたり隠れないほうがいい。


「……一旦、奴らと話すか」


戦闘モードは解除せずシンジケートの部隊の方を向く、程なくして向こうもこちらに着いた。



ZOLDの残骸が広がる荒野に、重苦しい沈黙が降りた。リュエルが操る白いエリスは、姿をシンジケート部隊の前に晒していた。


ジンゲートの部隊は、数機のVGと武装したバギーや装甲車で構成されていた。彼らはエリスの出現に驚きを隠せない様子で、こちらを警戒しながら包囲網を敷いていた。銃口やVGの武器が、一斉にエリスに向けられる。


リュエルは操縦桿を握り締め、リンに状況を確認した。


「リン、敵の数と戦力は?」


「VGは3機、形状からVA-13:スピアの可能性が高いよ。あとは武装車両が5両で20人の歩兵だね」


リンの声は冷静だが、リュエルの心臓は早鐘を打っていた。 ZOLD相手には無我夢中で戦えたが、相手が人間となると、また違った種類の緊張感が走る。何より、ここまで生き延びてきた彼女の嗅覚が、この戦いが「割に合わない」と叫んでいた。


すると、シンジケート部隊の中央に立つ一機のVGから、通信が入った。


『そこのVG。聞こえるか? こちらは『明けの陽射し』だ。投降してくれたら嬉しいんだが……』


『明けの陽射し』とはここら一体を取り締まるジンゲートのことだ。


「……それは無理な相談だな」


そう答える。戦う気はないがせっかく手に入れた「お宝」を手放したくはない。


『ん?その声どこかで………もしかしてリュエルちゃんか?俺だよ俺、リュートだ』


そう言ってシンジケートのVG……いやリュートは、武器を下ろした。


「リュートさん?」


リュートは前にリュエルがシンジケートの本部でガラクタを売ったときにジンゲートのならその時はシンジケートにろくな奴などいないと思っていたが優しい人もいるのだと思ったものだ。


『ああ……えっとリュエルちゃん?』


「そうです」


『……どうして君がこんなところに?』


「できればその前に武器を下ろして欲しいです」


『!ああすまん、お前らこの嬢ちゃんは俺の知り合いだ。武器を下ろしてくれ』


『しかし、リュートさん』


『俺がいいと言ったんだ、下ろせ』


『……わかりました』


そう言うと同時にリュエルに向けられていた武器が下ろされる。


『それでリュエルちゃん、なぜ君がVGに?』


「その色々ありまして……話すと長くなるのですが」


『……なら今じゃなくてもいいさ。それより一つだけ確認させてくれ。俺らの支配地域でVGを持っていた場合どうするかは知ってるか?』


「一応は……」


そう、このシンジケートはVGについてとあるルールを定めている。それは……


『シンジケートの支配地域において、VGをシンジケートに売るか、必ずシンジケートに所属するもしくは傭兵として雇われるか、どちらかを選ぶと言うルールだな。そして外に持ち出そうとするならば俺らは容赦をしない。  

こう言うルールなんだがリュエルちゃんはどうする?シンジケートに入ると言うのは……』


「すみません、それは……」


正直シンジケートに入りたくはない。5年前のあれ以来シンジケートには苦手意識がある。


『まあ、だろうな。……ただその機体……状況から察するに帝国の新型機とかか?それを売られても困るかならなぁ……』


まあ、それもそうだろう。何せ当のリュエルですらこの機体はわかっていない。それを売られても困るのは当然だ。帝国が取り返しに来る可能性も大いにあるし……。


「傭兵でお願いします」


『いいのか?まあ、俺個人としては見逃してやりたいんだがそうはいかないし助かるんだが……』


「大丈夫です」


『そうか、なら俺の方から伝えておく。明日中でいいから来てくれ。今日は休んだほうがいいだろう』


「ありがとうございます」


やはりこの人はいい人だとリュエルは再三思った。


『お前ら、帰るぞ』


リュートはそう言い放つと、部隊に撤退の指示を出した。彼らとしてはナワバリを荒らさせた気分なのだろうが、おそらくここの部隊のリーダー的な存在であるリュートが敵対しないと言う選択をした以上それに従ったのだろう。


シンジケートの部隊が砂煙を上げながら遠ざかっていくのを、リュエルは呆然と見送った。なんとかなり安堵しているもののと仮にリュートでなかったら今頃死んでいたかもしれないと言う考えが頭をよぎる。


「…なんとかなったか。危なかった」


「うん、でもいいの?傭兵になることは決まっちゃったけど?」


リンが言う。確かに傭兵になることは決まってしまったが死んだりするのよりはマシだろう。ただ……。

リュリルは今、この謎のVG「エリス」の所有者となってしまった。シンジケートの部隊に出会わなければエリスを放棄することもできたかもしれない。だがもう無理だろう。それはこの無法地帯において、彼女のこれからの人生を大きく左右することになるだろう。

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