第3話 積荷
ギギギ、という音を立てて扉が開いた。そしてボロボロになっている貨物室の中にそれはあった。
集中的に狙われていたのだろう、天井には穴が空きボロボロになった貨物室の一番奥、貨物が置いてある中異質なそれは台座の上に固定され横たわっている。
それは間違いなくもVGだった。
「VG……」
思わず声が漏れた。それは先ほどリュエルが目にした、重厚なスピアIIの残骸とは、まったく異なるデザインをしていた。流れるような曲線で構成された装甲は、無駄を削ぎ落とし、しなやかさを感じさせる。全体的に白を基調としたカラーリングで、ところどころに青いラインが走っている。また少し傷がついているがおそらく輸送機が墜落した際の衝撃によるものだろう。
近づいてみると機体のぞばにデバイスを挿入できる場所があったのでデバイスを接続しリンに問いかける。
「リン、これ、何のVGだ? 帝国の…いや、見たことないぞ?」
リュエルの問いに、リンの声が少しの間、沈黙した。そして、戸惑いのような響きを帯びて返ってきた。
「識別番号はUX-01:エリス……一応データベースに該当する項目がないか探したけど一切記述はないよ。一応帝国の命名規則的には形式番号である「U」は試験機を表すけどXは未登録。おそらく未発表のそれも極秘の試験機だろうね」
リンの分析は、リュエルの直感を裏付けていた。このVGは、ただの「ガラクタ」ではない。帝国が極秘裏に運んでいた、とんでもない「お宝」に違いない。だが、その正体が不明であるということが、リュエルの胸に得体の知れない予感を広げた。
「UX-01:エリス…」
この機体の情報が、リンの膨大なデータベースにもないという事実は、リュエルの胸に好奇心を呼び起こすのと同時に不吉な予感を呼び起こしていた。こんなお宝を前にして、素通りするなんて。いや、でも、帝国が極秘裏に運んでいたものだ。もし回収すれば帝国に狙われることは確実、場合によっては殺されることも十分にあり得る。
(見なかったことにするか…いや、でも…)
リュエルの心は、葛藤の嵐に揺れていた。この無法地帯で生き抜いてきた彼女の直感が、この獲物が大きすぎる、と警鐘を鳴らしていた。しかし、同時に、これほどの「お宝」を目の前にして、諦めるという選択肢も、彼女の中にはなかった。この機体をシンジケートに持ち込めれば、一生遊んで暮らせるほどの金になるかもしれない。だが……。
そう葛藤していた、その時だった。
リンの声が、今までにないほどの緊迫感を帯びて響いた。
「警告!多数のZOID反応を検出!…機体周囲を包囲中!小型ZOID、少なくとも50体以上!中型ZOID、3体を確認!」
リュエルの思考が一瞬で凍り付いた。周囲にZOIDの気配は微塵もなかったはずだ。一体どこから…?
ガシャン! ガシャン!
輸送機の外から、重く、硬質な音が響き渡る。それは、金属の壁が何かによって叩かれ、軋む音だった。まるで、巨大な肉食獣が獲物を取り囲み、その檻を叩きつけるような、おぞましい響き。
「うそだろ!? さっきまでは反応もなかったのに!!」
リュエルは震える声で叫んだ。無論多少のZOIDとの交戦はあり得るがMTに搭載してあるレーダーには周囲のZOIDの反応はなかった、ステルスもちだとしても数が多すぎる………ってまさか!!ZOIDの中にはステルス機能を周囲にも付与できるやつがいるって聞いたことがある。それがいたなら……。
リンが冷静に、しかし焦りを滲ませた声で告げる。
「多分だけど、墜落した輸送機の音と、機体から漏れる何らかの信号に引き寄せられたのかも。このままだと、脱出経路が完全に封鎖されるけどどうする!?」
外からは、機械的な駆動音と、ZOID特有の不気味な鳴き声が、次第に大きくなっていく。リュエルは、目の前のエリスと、迫りくるZOIDの脅威を交互に見た。このままでは、間違いなく死ぬ。だが、逃げるにしても、この包囲網をどう突破すればいいのか。
彼女の視線が、再びエリスへと戻る。リンが「どうする?」と聞いてくる。そんな中リュエルはエリスのことを見つめていた。いくつもの想いがリュエルの中を駆け巡る。そして彼女は……
覚悟を決めた。




