テスト
この世界で人々に害を与える異形”陰”。そしてそれらを排除する魔法少女。今日も彼女たちは人々のために戦う。そういう宿命を背負っているのだ。
「魔法少女の力の源は幸福度、ねぇ」
「またその話?あの事件があってからそんなことばっかりだね菊花ちゃん」
今日も学校の屋上で幼馴染の有栖と変わらない日常話。屋上は邪魔が入らないからから好きだ。
子供の頃からずっと持っているビー玉から空を覗いてみる。そうすると空の青がさらに透き通って見えるのだ。このビー玉は言わば私のパワーアイテムだ。
「だってさ、かっこいいじゃん魔法少女」
数十年前から突如として現れた異形の存在”陰”、黒く、強く、人類の装備では手が出ず、無差別に人を襲うことから政府は困っていた。その時、現れたのが魔法少女。まるでCGのような、映画の撮影のような綺羅びやかな魔法で陰をあっさり倒してしまった。
「でも13年前の事件はその魔法少女が原因って言ってる人達もいるみたいだよ?」
「それでもさ、魔法少女がいなかったら日本は今頃海の底だろーな」
その時、ランチタイムの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「んじゃまた放課後な」
「また後でね、菊花ちゃん」
今日もまた、平凡な1日が終わろうとしている。
「有栖ー、お前学級委員だろ?明日の学級会議の資料が思いのほか多くてさ、ちょっと手伝ってくれないか」
「は、はい!もちろんです」
有栖はバカがつくほど真面目なのでこういうお願いは断れないタチなのだ。
有栖は菊花に先に帰っていて、とメッセージをして先生の手伝いへ向かった。
「ちぇ、久々に1人で下校するなぁ」
いつもは2人で帰る商店街の道。商店街は活気あふれているが菊花はどこか上の空だ。
「おや菊花ちゃん、今日は1人かい?」
「おう肉屋のじっちゃん、今日は有栖居残りみたいでさー」
「あら、有栖ちゃんったら勉強上手くいってないのかしら」
八百屋のばあちゃんも話しかけてきた。この商店街はあまりにもローカルですぐいろいろなじいちゃんやばあちゃんが話しかけてくる。なので1人だから寂しいとかはあまりない。
「まっ、とりあえず長生きしろよー全員」
毎回早めにこれで締める。別に話しかけられのは嫌ではないが、最悪帰れなくなるという時がある。
暫く歩くと泣き声が聞こえてきた。小さな女の子の泣き声だ。迷子かな。さては親とはぐれたか。
「大丈夫か、ほらほら涙拭いて、へぇーお前かわいいじゃねえか。泣いてたらもったいねえぞ」
菊花は何もかもほっとけない性格なので、こういうのを見つけると体が動いてしまう。
「姉ちゃんが一緒に探してやっから」
色々あって親は見つかり、結局帰るのが夕方過ぎになってしまった。
「やべーな、はやくしないと陰が湧いちまう」
陰は夜になったら絶対に湧く訳ではないがもし一般人が襲われたら助かる可能性は極めて少ない。
そう、一般人は襲われたら最後、陰に取り込まれてしまうのだ。
下校時間、とっくに過ぎちゃったな。時間は6時、もう夕飯の時間だ。
「ちょっと手伝ってって言ってたのにこんな時間まで・・・早く帰らなきゃ」
できる限り小走りで帰る。この辺りは大丈夫、最近は陰に関連するニュースはないし、今日に限って陰が、はたまた私の通学路に湧くなんてことは――
ゴポっとコンクリートではなるはずがない音がした。そんなはずはないと思った。今日に限って、なんで――!
陰だ。全長は3メートル弱の泥のような形状。
陰の危険度は大きさで大体分かる。1メートルは走れば逃げれる。2メートルから一般人はもう手出しできない。3メートル以上は超危険!
確か3メートル以上だけやけに説明が少なかった。それが今ならわかる。人類の範疇を超えているからだ。危険なんて可愛い。あれは死ぬからだ、絶対に。これから生き抜くことなど、ぜっ、たい、に――!
「たまにはパトロールしてみるもんだな」
聞き馴染みのある声。CGのようなこの光は・・・。
「あ・・・魔法少女」
その魔法少女は頭に目の部分だけ切り取ってある近所の八百屋の紙袋をしていた。恐らくマスクのつもりだろう。
「喰らえ―っ!ファイヤーソード!」
その魔法少女の大剣による重い一撃はコンクリートを削り、砂埃を起こした。こんなに強そうな攻撃なのに陰には一切通用して内容だった。
「硬いな、ひっさびさに本気出すかぁ」
魔法少女はポケットからビー玉を取り出すと、そのビー玉は炎を纏い始めた。
「すごい熱さ・・・これが、魔法」
例えるなら、小学生の頃、キャンプファイヤーを眼の前で見た時・・・より全然熱い!まさにサウナ!市街地でまさかのととのい!
「おんりゃあー!」
陰に投げ込まれたそのビー玉はとてつもない火柱を起こした。
「熱っ」
飛び散る火花が制服にあたってチリヂリと音を立てている。
「あっあの!」
目を開けるとそこには火柱も魔法少女もいなかった。まるで何もなかったかのように。
「早く帰らなきゃ」
その姿を屋根から見る一人の影。
「マジ危なかったなー、正体も多分バレてないかな」
火柱で紙袋はすすになってしまった。
「私が魔法少女ってわかったら、有栖に迷惑かけちまうからな」
菊花はビー玉を取り出して空に掲げた。夜の空は昼と違って更に美しく見える。
「帰って寝るぞ!」
松本菊花、魔法少女である。
有里瞬です。
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