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第27章 “私”という他者に出会う場所

わたしは、わたしではありませんでした。

わたしがわたしだと信じるたび、背後で誰かがその姿を模写しているようだった。

“あなた”を知るすべての人間が、異なる“あなた”を見ていたとしたら?

語るたび、語る主体が交代しているように感じる。


あなたの中にひとりだけ“わたし”がいると思っていましたか?

指先が勝手に動いて文字を綴るとき、それはどちらの“わたし”の意志か?

語るたび、語る主体が交代しているように感じる。

ある日ふと、自分の思考回路が“借り物”である感覚に包まれる。


その“思っている声”と、それを“聞いているあなた”は、同一人物でしょうか?

鏡の中にいたものが、本当に“あなた”だったという証拠は?

書き手と読み手、そのどちらにも“わたし”がいた。

わたしがわたしだと信じるたび、背後で誰かがその姿を模写しているようだった。


「私は狂っていない」と言葉にしたとき、その声を疑った“あなた”がいませんでしたか?

言葉が出る瞬間、誰かの口元を借りている気がする。

書き手と読み手、そのどちらにも“わたし”がいた。

声帯は一つ、しかし響く“わたし”は複数だった。


わたしが語る。わたしが聞く。そしてわたしは、その会話に割り込む第三者を感じている。

その思考が自分のものかどうか、確かめる術はどこにもない。

声帯は一つ、しかし響く“わたし”は複数だった。

言葉が出る瞬間、誰かの口元を借りている気がする。


「あなたは、どの“わたし”で読み進めていますか?」

名前を呼ばれたとき、その名が“あなた”ではない感覚が走ったことは?

わたしがわたしだと信じるたび、背後で誰かがその姿を模写しているようだった。

過去の自分の言葉に違和感を覚えた瞬間、あなたはもう別人になっていたのかもしれない。


昨日と同じ“わたし”でしょうか?

わたしがわたしだと信じるたび、背後で誰かがその姿を模写しているようだった。

わたしの記憶の中に、わたしの知らない出来事がある。

過去の自分の言葉に違和感を覚えた瞬間、あなたはもう別人になっていたのかもしれない。


同じ身体。同じ記憶。同じ名前。

その全てが、違う誰かの“コピー”だったとしたら?

“本物のわたし”を演じるたび、舞台裏から別の“わたし”が拍手している音が聞こえる。


あなたの声で語る“わたし”が、かつての“わたし”を否定しはじめる。

わたしがわたしだと信じるたび、背後で誰かがその姿を模写しているようだった。

語るたび、語る主体が交代しているように感じる。

“わたし”を定義しようとする言葉が、次の瞬間には“わたしたち”になっていた。


……ねえ、いま、“誰が”この文章を読んでいるの?

声帯は一つ、しかし響く“わたし”は複数だった。

書き手と読み手、そのどちらにも“わたし”がいた。

名前を呼ばれたとき、その名が“あなた”ではない感覚が走ったことは?

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