国破れて何想う(4)
シーザー帝国の第四皇子は悩んでいた。
「いやぁ、旦那方もお人が悪い。道に迷ったてんなら言って下さればお教えしましたのに、まぁあたしのこの姿があまりに先鋭的ってのは分かりますがね」
「いや、本当にすまなかったな。うちの主人ちょっと早とちりしちゃう子なんだ、悪く思わないでくれ。でも先鋭的ってなんだ、黒さん」
「いいってことですよ、旦那方。ここは還らずの森って言われるほど迷いやすい場所なんですわ。あたしに出会えて本当に幸運でしたよ、ファッショナブルなこのあたしに、ね」
「あぁ、本当にありがたい。野宿の覚悟をしろってうちの主人が脅してくるもんだからなぁ、黒さんとこ泊めてもらえるなんてラッキーだったよ。ところでファッショナブルってなんだい、黒さん」
「鄙びたとこで申し訳ないもんで、あんまり期待しねぇで下さいね。奥さまとあたしだけしかいねぇもんだからなんのお構いもできないんでね。トレンドを自負してるあたしとしちゃあ恥ずかしい限りなんですよ」
「気を使わないでくれ、黒さん。迷った俺らが悪いんだ、うちの主人の部下なんて地図も与えてくれないんだぜ?使えないよな、全く。ちなみにトレンドってなんなの、黒さん」
先ほどから繰り出されている会話とこの妙な状況に、だ。
なぜ、俺が馬をひいていて不審人物――黒さんと呼ばれている――が俺の馬の背に乗っているのだろう。
なぜ、護衛達はあんなに仲良くその不審人物と話しているのだろう。
そもそもなぜ、こんなに広大な森で都合よく人間に出会えるんだ。
あの黒いのが旧王家に仕えていたとは考えにくい。
あまりに無防備だし、なんというかオーラはあるが気品はない。
王家なめんな、だ。
だがしかし迷っている俺たちの前にこの森の住人だと語る奴が現れるなど、出来すぎているにもほどがあり、怪しすぎる。どこぞの刺客であってもおかしくないのだ。
そして不審者をさっさと信じて今日の住居とやらにありつこうと、嬉々として案内させている護衛達もまたおかしいと言えばおかしい、頭が。
それに何より、一番言いたかったのはこれだ。
ニコニコ笑いながら言語形而上で攻防するのをやめろ、妥協を覚えろ、空気読め。
しかも婉曲的ながらに俺へ毒はいた奴、帰ったら城裏に来い。
とにかく、今願うことは一つ。
どうか目的地にたどり着くまで、俺、憤死に給うことなかれ。
話が進まない。。。
見切り発車というか尻切れトンボでした。。