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国破れて何想う(3)

今回も話が全く進みません。

そして人名が誰一人でてこない神秘・・・。




シーザー帝国の第四皇子は悩んでいた。



旧王家の生存者がいるとの一報でクソ狸(貴族)どもに見つかる前に保護しようと、善は急げとばかりに護衛幾人かと日の出と共に馬で駆けてきたのは良かったのだが、


「ここは樹海か?むしろ腐海なのか…?」


「此処は森です、殿下」


護衛にさらりと受け流されたのでもう多くは語るまいと口を噤むが、太陽光が射さないほど鬱蒼としすぎていてなおかつ民家どころか人っ子一人見つからない森を進むのはなんとも心細いものがある。


更に先ほどから似たような景色ばかり見えているのもその一因だろう。

そうまるで抜け出せない迷路に迷い込んだかのような……同じ景色?


「なあ、もしかしてこれ迷ってるんじゃ・・」


「…………まかさ、ありえませせん」


「おまえの噛み方がありえない…」


「緊張をほぐすちょっとした緩和剤です」


「……正直に言え、迷ったんだな?」


「そうなん(遭難)です」


「…地図を貸せ、とりあえず現在地を確認せねば。最悪野宿だ、覚悟しておけ」


さあ地図をと差し伸ばした手に、だが何かが乗ることはなかった。

オロオロとした瞳で見つめてくる総勢3人の護衛たち。

嫌な予感がした。そこはかとなく、だ。



誰か、胃薬をくれ。



「恐縮ですが殿下、地図はありません」

護衛Aが恐る恐る答える。


「補佐殿曰く情報ネタは王家の機密文章内に載っていただけで、そこにはこの森としか書かれていなかったとのことです」

護衛Bが慌てて付け加えるように言う。


「野宿なんて先のいくさ以来です殿下。とりあえず班決めをしましょう、私は薪集め班がいいです」

ウキウキ感を隠しきれずに護衛Cが語りかける。



ああ、神よ。

俺は貴方に嫌われることをしたのだろうか。



「少なくともユリウスの民には嫌われてるんじゃない?」



それを言われると立つ瀬がない……



「ってお前、誰だ?!」




言うよりもはやく、その人物の首もとには三本の剣があてられていた。



さすが腐っても護衛である。先程の間抜けぶりなどなんのその、冷徹な三組の双眸は確実に不審人物の急所に向けられている。

そう、そして自分は腐っても皇族だったのである。普段の扱いで忘れそうなところだったが。



場の空気に緊張が走る。


真っ正面からみとめたその人物は漆黒のフード付きローブを深く被っていて、顔も見えない。

例えるならば御伽噺に出てくる魔女の風貌そのものだ。

街であったら関わり合いたくない類の、如何にもな怪しさが滲み出ている。



「もう一度聞く、お前は何だ」



射るような眼差しは見えずとも、威嚇するような低い声はそれだけでも相手を畏縮させる響きを与える。



すると弱々しくヒュッと息を吸う音が聞こえたと思ったら途端に黒い影が縮んだ。





縮んだ、というより這いつくばったという方が正しいのか。

急な動きに驚くよりも、その人物の行動は早かった。


「すいません、ごめんなさい、調子乗りました、申し訳ありませんでしたぁー!!」




彼の皇子、後に語る。

その謝罪の様子、正に黒い蛙が飛び跳ねていたかのようであり、到底真似できない儀式のようであった、と。





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