2話 スキル確認!と、新たな名前
目が覚めると、何やらお城のようなところにいた。周りは真っ白な建物が多く、地面は雲のようだ。やはり蓮はここに来ていなかった。道で会った天使のお姉さんにトントンと肩をたたかれ、はっと顔を上げると向こうの方から何やら強そうなオーラを放っている美女がやってきた。年齢は…高校生ほどに見える。恐らくあれが、話にあったミカエル様という人物なのだろう。
「キミが噂の異世界から来たって人間の子だね!」
「はい、その子です。」
「おおー!若くていいね!けどね、なーんかオーラが人っぽくないんだよなぁ」
ミカエル様らしき人物は首をかしげると、何やらメガネのようなものをかけてこちらを見た。
「あれ?キミやっぱコスアから聞いた通り天使だよ!前前世とかの記憶ってないの!?」
前前世?残念ながらないな。そしてこの人かなりテンションが高い。元気なギャルを見ている気分だ。
「そういえば、名前聞いてなかったね!何ていうの?」
「俺は如月伊織っていいます。あと、俺の友達に蓮ってやつがいるんですけど…」
かくかくしかじかを説明するとミカエルさんは驚いた顔をして、「ちょっとサタンに連絡してくるー!」と駆け出していった。
連絡しに行ってる間に、コスアさん(道での天使のお姉さんだよ)にこの世界の仕組みを色々と教えてもらった。
まず、この世界は第二次世界といって、神霊世界と呼ばれることもあるのだとか。この世界が元の世界と違うのは、こっちにはスキルと属性が存在していて、種族や個々によって異なっていることだ。
属性は炎、水、風、土の基本属性のほかに、日や月、その二つの上位互換の光と闇がある。他にも、水から派生して生まれた氷や突然変異で出来た毒や雷などもあるそう。
そして、住んでいる魔人はヴァンパイア、エルフ、精霊、天使、悪魔、ドラゴン、鳥人間が多くを占めており、神や純粋な血筋の龍、虎、鳳などの神魔人が少しばかりいる。
また、この世界には魔王がいる。朱神の赫鳳、皓神の白虎、天神の聖羽、冥神の魔翼、蒼神の零と黑神の黯狐だ。昔は朱神と皓神はおらず、代わりに輪廻という最強の神がいたのだそうだ。司る力は「創造と破壊」。正に最強にふさわしい力と言えるだろう。ただ、輪廻という神は自由を求めて第一世界(元の世界)へと飛び立ってしまったようだ。その時に二人にそれぞれ加速と減速の力を預けたのだと。今の力関係は一番上が零、次が黯狐、同じぐらいのミカエルとサタン、その次が赫鳳と白虎だ。元々零は輪廻といい勝負をするような強者だったという。前までは仲が良かったようだが、今は仲良しこよしというわけにもいかず、黯狐VS赫鳳、白虎、ミカエル、サタンで対立している。1対4なのにも関わらず黯狐に勝つことが出来なかったため、今は長期戦へと突入してしまった。現最強の零は審判として中立した立場にいるので戦いには参加しないそうだ。
最後に地形について教えてもらった。俺たちが最初にいた都市は魔界と呼ばれる場所で、たくさんの魔人らが集まる東京のような都市だ。魔界はどんな魔物でも訪れる事が出来るよう、太陽と月が地平線の近くで平行に回り続けている。つまりずっと夕方と夜明けのような状態ということだ。
界はあと3つあり、一つは俺が今いるここ、天界で日の光と相性の良い魔人(天使、エルフ、鳥人間、一部の精霊など)が住んでいる。常に昼で、太陽は沈まない。地面は雲で出来ており、童話の中の天国そのものだ。
二つ目は冥界といって月の光を好む魔人(悪魔、ヴァンパイア、ドラゴン、一部の精霊など)が住んでいる。サタンさんも悪魔なので冥界に住んでいるのだとか。常に夜で、月は満ち欠けはするが沈まない。コスアさんによると、落ち着いた綺麗な都市で、上を見上げると星空が見えるのだそう。
三つ目は闇妖界でここには邪悪な魔物や魔人が住んでいるところだ。種族的には霊や妖怪などの闇系統の魔物がほとんどだ。各地で魔人らが暴れているため治安は最悪とのこと。また、さっき言った通り闇妖界の黑神が残り四人の魔王と対立関係にある。原因はその魔王が輪廻様がいなくなってから入ってきた二人と揉めてしまったからだ。そのため、魔王はよくこちらの世界に魔物などを送り込んで来る。それに立ち向かうために新しくゴーストハンターという役職が作られ、若者たちが日々戦っている。
ちなみにどこにも当てはまらない空間はあるのだが、外界と言って誰も触れないらしい。
そんな感じで説明を受け、丁度終わったところにミカエルさんが戻って来た。
そのタイミングでコスアさんは帰っていった。
「サタンのとこに蓮っていう少年がいるって!」
「え!マジっすか!ありがとうございます!」
「じゃあちょこっと手続きを終わらせたらすぐ会いに行こ!!」
そう言ってミカエルさんは俺の方を見てにっこりと笑った。
その手続きというのが、属性の確認とスキル獲得、そしてこちらの世界での新たな名前の登録といったような内容だった。
まずは、属性確認だ。ミカエルさんが水晶を覗き込んで調べる。数秒後にミカエルさんが驚きの声を上げた。
「おお!!キミ属性すごいよ?!!天使としての元々の種族属性は光だけどさ、それにプラスで闇属性がついてるなんて!!実質弱点属性ほぼないよ!!めっちゃレアじゃんか!!」
弱点がないような強い属性なんて…この人の反応を見ると相当レアっぽいな。でも、ほぼってことはなんかあるのかも。とりあえず今はラッキー!!とでも思って喜んでおこう。
「じゃ、次はスキル確認ね!」
今回は水晶ではなく分厚い古びた本を取り出した。そして再び発狂する。
「えぇぇぇ?!!すごいよキミ!!史上最強の魔神と言われていた輪廻様と似たスキルだよ!!スキル名はゼロクリエイトだって!!ええと、内容は…何もないところからスキルを消費してものを作り出せる、消したいと思いながら触れるとそのものが消えるって!消費したスキルは自動回復するよ!!」
ん?なんかとんでもないスキルに聞こえたぞ?試しに目の前にあった水晶を作ってみると…3秒ぐらいでできてしまった。ただ、体の中から何かが持ってかれた感じがする。
「これって俺が持ってていいレベルのスキルなんですか!?めっちゃ嬉しいんですけど!!」
「うん!全く問題ないよ!!まあ、少々チートスキルだったとしてもそういう運命だから大丈夫!!」
満面の笑みでそう言ってくれた。
自らのスキルに感動していて、すっごく使い勝手が良さそうだな、なんて感じていた。
「最後にこっちでの名前なんだけど、これは天使としての正式な主従関係が確立されるものだからこっちで決めるね。呼びやすいほうがいい…よね?」
「うーん、そうですね」
ミカエルさんは少し考える素振りを見せてから、はっと思いついたようにこっちを見た。
「キミの名前、今日からメアで!!」
「なぜ!?」
「属性から明るいと暗いでぱっと明暗が思いついたから!メカとかアクとかじゃいやでしょ!」
「は、はい!」
突然過ぎて頭が追いつかなかったが、俺の心にすとんと落ちていく感じがした。その瞬間、俺の髪は白く染まり、背中からは真っ白な翼が生えた。鏡を作って見てみると、前の世界での面影を残しつつも超絶美少年に変貌している。自分で言うのはちょっとキモイが、まじでイケメンだ。目は金色と紫がかった黒のオッドアイで頭の上には丸い輪が浮かんでいた。
俺は、今日からメアという天使としてこの世界で生きていくことになる。