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男女の友情は成り立つのか

作者: さとー

「ごめんね、君とは付き合えない」と先輩は言った。


・・・


 新人教育を終えて、企画部に配属された。そこでOJT担当になった先輩が彼女だった。色々と教えてもらってなんだが、彼女はあまり仕事のできるタイプではなかった。ただ、サバサバとしながらも猫のような性格は、今まで接してきた女性とは違い、新鮮な気持ちを味わっていた。


 一緒に仕事をし、時には昼飯や晩飯を共にし、プライベートな話などもしているうちになんとなく、仲が深まっていき、親密な関係になるのも自然な流れだったのであろう。


「ねえ、ホテル行こうよ」


 童貞だった僕には誘うような勇気がなかったが、彼女は経験があることもあり、こう言ってきたのだった。僕には初めての女性だった。


 その後も、会社帰りに何度か、ホテルに寄り、体を重ねた。より親密になり、彼女の悩みなど一層深く聞くことができたりもした。


 彼女の母親は早くに亡くなっており、今の継母と折り合いが悪いという。そのため、一人暮らしをしたいが、世間体からか、許してもらえず、家に帰るのが嫌だという。会社帰りに飲みや遊びに付き合わされたり、たまに体を重ねるようなことをしたりしていたのは、早く家に帰りたくないという理由もあったのだろう。


 そして、1年が経ち、僕も心を決めて、告白をしたのだ。


・・・


「ごめんね、君とは付き合えない。実は私、彼氏がいるんだ。だから、君とは浮気なの。期待させてごめんなさい。」


・・・


 ショックは受けたものの、仕事を休む訳にはいかない。でも、彼女とは会社での席が隣同士、気まずいなんてものではない。周りには、薄々仲が良いことは気がつかれてはいるが、体を重ねるような仲だとは思われていないはずだ。なんとか、同僚として、友人として過ごすことに慣れるように頑張った。


 そんな折、会社の移転があり、実家からの通勤が大変になったので、一人暮らしを始めた。ちょうど気分を一新したいこともあり、良い機会だったと思う。


 だが、こんなことになるなんて、思いも寄らなかったんだ・・・


・・・


「やあ、今日も遊びに来ちゃった。」


「いらっしゃい、先輩。よく毎日のようにこれますね」


「君には言ったじゃない、あまり家には早く帰りたくないんだよね。これ、お土産、一緒に食べよう」


 そう、なぜか、彼女は、毎日のように、仕事帰りにうちに寄っている。彼女は、今、お客の所に出向していて、家に帰る経路の中継点として都合の良い場所に暮らしている僕の所に遊びに来るのだ。なんでも、彼氏の家はかなり遠回りになるので休みの日にしか遊びにいかないとのことだった。


 それにしても、振った相手の所に頻繁に遊びに来るものか?


「お腹すいたから、ご飯ちょうだい」


「いや、まあ、そう言うだろうと思っておかずとか作ってあるけどね。」


「あ、ちゃんと材料費は払うから」


「いや、別にいいよ。お土産ももらったし」


とか、言いながら、一緒に晩飯・・・なんだ、この新婚的な気分は?


「じゃあ、洗い物はするから、飯代代わりに」


と、洗い物をし始めたので、僕はうつ伏せに寝転びながら、本を読み始める。洗い物が終わったのか、彼女は近寄ってきて、僕の背中に仰向けに寝転んできた。


「ちょ、重いんだけど」


「え〜、いいじゃん、なんか、クッションとしてちょうどいい感じなんだもん」


と、僕の背中で本を読み始める彼女。振られてからご無沙汰な僕が少し性的な欲求を高めたとして不思議ではないだろう。ちょっと彼女の体に手を伸ばそうと・・・


「こら、いやらしく手を伸ばしてどうするつもり?私は別に付き合っている人がいるし、君とはもうしないんだから」


「え〜、こんなスキンシップしておいて、それはないよ・・・」


 そんな、友人以上、恋人未満なやり取りをしながらも、一緒に過ごす時間はそう悪いものでもないと感じていた。これは惚れたものの負けなのだろう。


 そして、22時を超えた頃、彼女は帰っていく


「また、明日」


 明日もこのささやかな幸せが続くのだろうか、いつかは失くなってしまうと分かっていても・・・

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