心はヘトヘト
ドンドン
「フランチェスカ様、迎えが来たよ」
ドルイコスが起こしに来たみたいだ。
いつもならちょっとした音で飛び起きられるのに…。
何となく頭は覚醒しそうになってるけど、体が鉛の様に重い。
まるでベッドと一体化しちゃったんじゃないかってくらいベッドから指1本動く気がしない。
「失礼しま~す」
返事がないから、ドルイコスが部屋に入ってきた。
「あーあ、やっぱりね。
さっきの様子を見てこんな事だと思ったよ」
ドルイコスがベッドの横に立ち、私に向かって手をかざした。
ドルイコスの手から青白い光が私に向かって降り注ぐ。
目も開かない状態なのに、なぜか俯瞰で見えているように、ドルイコスの様子が分かった。
「ド、ドルイコス… 」
光が全て私の中に吸い込まれていった後、急に体が動けるようになった。
目も開ける事が出来た。
「いつも言ってるだろ?
この部屋は君を守ろうとするんだから、あんまりヘトヘトになって使ったら、直ぐには起きれないよ」
「ごめん、そんなに疲れてた自覚がなくって」
「やれやれ、心の疲れは相当だったみたいだけど?」
そっちか~
体は全然元気だし、気疲れはしてるけど、大丈夫かなって軽く考えてた。
いつもいつも、嫌な言葉や怒鳴り声を聞く事は心を傷つけられる呪詛の様なものだって忘れてた。
自分ではいくら上手く立ち回って、言われていることも冷静に対処して気にしないでいても、心は別物なのだ。
心とはどんなに年をとっても無垢で傷付きやすい。
私達、聖女は普通の人間よりも心はピュアで脆いのだ。
だから一応心の周りに幾重にも防御する殻で覆ってはいる。
そして、普段の仕事では聖女に暴言や嫌味を言う人間はそういない。
だから、そうそう心を疲れさせてしまう事など、そうある事ではないのだ。
油断したわ。