第13話「2階」
「これが…2階…。」
「青き月光の隠された部屋…か。」
通路に入ると、会談が2階へと続いていた。不思議なのは、その通路から木造ではなく、大理石でできていたということだ。
階段を上がると、左右に2つずつ扉があり、一番奥に一つ扉があった。あきらかに奥の扉が豪華だった。
「部屋は全部で5つか。手分けして使えそうなものがないか見よう。俺は左手前を見る。」
「私は左奥を見るわ。ヒナはどうする?」
「じゃあ私は右の手前を…」
行き先を決めて3人は各自の扉の前に立った。
「それじゃ、行くぞ…!せーの!」エルトの掛け声で3人は一斉に扉を開く。ヒナは目を思わず閉じて扉をあけ放った。
「……。…これは…?」ヒナが開いた右手前の部屋は、どうやら書庫のようだった。壁中に本棚があり、所狭しと本が並んでいる。
「…本…?」ヒナはその一つを手に取る。開くと、継承の書のように読めない文字がいくつかあったが、ほとんど読むことができた。
「これは、料理の本?こっちは、歴史書…。今すぐに使えそうな本はなさそうね。」ヒナは半分あきらめて残った右奥の扉に向かうつもりで最後と決めた本を手に取った。そこには、『基礎魔術指南』と書いてあった。
「基礎…魔術?」ヒナは好奇心に負けパラパラとページをめくる。そこには、彼女たちが今欲しているであろう情報が書かれていた。
「魔法の使い方だ!」
この中に戦うのに使える魔法があるかもしれない、ヒナはそう思い本を開いた。しかし。
「…全く読めない…。」
どのページを開いても読めない字ばかりだった。
「これじゃあ意味ないよ…。」ヒナはため息をついて本を閉じ、エルトに見せるために部屋を出た。
廊下に出ると、エルトも部屋の外に出ていた。
「ヒナ、何かあったか?…俺のところは寝室だった。特に何もなし、だ。」
「私のところは書庫だったよ。『基礎魔術指南』って本見つけたけど、一つも読めないわ。」
「見せてみろ。…ああだめだな。俺も読めない。とりあえずイアのいる部屋にも行ってみるか?」
「そうね。」2人はイアのいる部屋に向かった。
イアの部屋は、様々な剣や鎧、ローブなどが置いてある、いわゆる武器庫だった。
「これは…」
「すごいな…」エルトとヒナはほぼ同時に声を漏らす。おそらく、かつての青き月光はたくさんの団員がいたのだろう。部屋には通路がほとんどないほどの武具の量だった。イアはその奥で目を輝かせて羅列された武器を眺めていたが、二人に気づき駆け寄る。
「すごいわ!この部屋!青き月光はかなり大規模な団体だったのね!」イアは興奮気味に言う。エルトは満足そうにうなづく。
「これはすごいな。…でも全部大人用だ。鎧は無理だな、俺たちじゃ。」
「そうね…でも、短剣とか、できる限りの武装をしましょう。」
3人は各自思い思いの武装をし始めた。
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「じゃあ、あの奥の部屋に行こう。多分会議室とかそんな感じだろう。」
短めの剣を腰に差したエルト、短剣を2本手に取ったイア、そして、寝室にあったリュックに『基礎魔術指南』を入れ、短剣を持ったヒナは廊下に集まった。
「お前らが準備しているうちに開けてなかった部屋に行った。あそこは厨房だ。食材はなかったけどな。」
エルトは先頭に立って、一番奥の扉に手をかけた。
「開けるぞ。」
「うん」「よろしく」
エルトは2人の返答を聞いて、扉を開いた。
部屋は、エルトの言う通り、会議をしそうな円卓に椅子がずらっと並んでおり、奥には暖炉がある。誰もいないのに緊張感が漂っていた。
「何も…ないか。」
「そうね。ここで青き月光の方針を話し合ってたのよね、多分。」
「……」ヒナはこの場所になぜか見覚えがあった気がした。それがなぜかはわからなかったが、この部屋だけは来たことがある気がぼんやりとしていた。
「よし、とりあえず、これからのことを話そう。」エルトが言う。イアとヒナはうなづいた。
「デレ達がでてから30分くらいか。まだ夜にはなってないだろう。日が落ちないうちにここを出て、さっきイアが聞いた2人を探す。それでいいか?」
「え、でもどこにいるかなんて…」ヒナが言いかけたところで、イアが手で制した。
「詳細な場所はわからないけど、あの人たちは、どこかで夜まで持ち場で待機してる。そして、足音は多分南の方に向かったと思うわ。あと2人のうち、1人はこの村に仲間を引き入れる担当みたいだわ。」
エルトはそれを聞いてヒナを見た。
「何か、気づくことあるか?」ヒナは腕を組んで考える。
(仲間を引き入れる担当…、今夜襲撃…、南側…?)そこでヒナは一つの可能性に気づいた。
「今夜まで襲撃できないってことは、まだ人員がそろってないとか?つまり、1人は南側から仲間を連れてこようとしてる…とか」
ヒナの答えを聞いてエルトは大きくうなづいた。
「それだ!つまり、やつらが待機しているのは…」
「南側の端ってことね。でも、相手は大人よ。それも2人どころか、仲間も併せたらもっとだし…」
イアが少ししり込みするが、エルトは声を荒げた。
「さっきも言っただろ!青き月光は…」
「でもかつての青き月光は大人だったでしょ!武具が置いてある部屋を見ればわかるわ!子供にどうにかできる問題ではない!」イアとエルトの間に険悪な雰囲気が生まれる。しばらく沈黙があったのち、ヒナがポツリと言った。
「正々堂々と戦わなければ、子供も大人も関係ないんじゃないかな?」
「「え?」」二人が同時にヒナの方を見る。ヒナは少しいたずらっ子のような笑みを浮かべて言った。
「もうすぐ夜だわ。視界が隠れ始める今なら、真正面から戦う必要なんてない。」




