第12話「信頼」
一方、林の広場にて…。
「…来たか。」
一人の男が広場の中心で待機している。そこに、若い男がやってきた。見た目は普通の行商人の姿をしていた。
「この村はいいところですねえ。俺がまっとうな人間なら永住したいくらいだ。」
「ふっ、思ってもないことを言いやがって。」待っていた男が鼻で笑うと、若い男は邪悪な笑みを浮かべた。
「いやいや、いい村ですよ。こんなにも平和でのんびりとした村、私だったら壊してしまいそうだ…。」
「構わんが、それは夜まで待て。ここにはあの騎士がいる。我々だけではさすがに勝てない。」
「ええ、もちろん。今夜には盗賊団が村にたどり着く。すでに村の様々な場所に部下を配置しています。夜まで持ち場で待機しましょう。」
そういうと、二人は林の奥に姿を消したのだった。
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「どどどどどどうしよう!村が襲われちゃうよ!」
デレが顔面蒼白になりながら慌てふためく。エウルブとネルグも今にも泣きそうだ。エルトは険しい表情のまま何かを考えている。イアはまた『聞く耳』を使い外の音を聞き始めた。
「…うん、もういないわ。ヒナ、扉はあくかしら?」
ヒナはイアに言われ、ドアノブに手をかけた。すると、さっきまで硬かったドアノブがすんなりと回り、扉が開いた。
外に出ると、男たちはいなくなっていた。
「すぐに役場に行って、今の話を報告しなきゃ!」イアが走り始める。しかし、エルトがそれを止めた。
「まて、イア!二手に分かれよう。」
「二手?」イアが振り返る。エルトはつづけた。
「デレ、ネルグ、エウルブは役場に行って大人たちに話してくれ。このアジトのことは…そうだな、林の草むらでかくれんぼしてたとか言えばいいだろ。ヒナとイアはちょっと手伝ってほしいことがあるから小屋に来てくれ。」
「何かするの?」
「ああ。どうせ夜には戦いが始まる。俺たちも応戦した方がいいんじゃないかと思ってな。」
エルトの言葉にイアたちは驚いて目を円くする。
「それは子供の私たちには厳しいんじゃ…」
「こ、怖いよエルト!」口々に不安の声を漏らす仲間にエルトは真剣な顔で言った。
「昔の『青き月光』は、この村を守る強者の集まりだったんだ。俺たちもできることをやらなきゃ、先代が嘆くぜ?」
エルトのその言葉を聞いたデレ、エウルブ、ネルグはすぐに表情が明るくなる。
「わかったよリーダー!」
「初めての任務だな!」
「任せてくれ!」
3人はそう言いながら北に向かって走っていった。
「じゃあ、俺たちは小屋にもどろう。」エルトは扉をまた開いた。しかし、イアは歩き出そうとしなかった。
「だ、大丈夫かな、あの子たち3人だけで…。」
「大丈夫だ。あいつらはすばしっこい。すぐに役場につくさ。」
「でも…」イアはまだ食い下がろうとする。それだけ不安なのだろう。すると、ヒナがイアに声をかけた。
「イア、多分エルトは3人を安全な場所に送ったんじゃないのかな。」
「え?」イアはわからないという風に首を傾げた。ヒナはつづける。
「エルクは盗賊と戦おうとしてるんだよね。でもあの子たちは私たちよりも年下だから、大人のいる場所の方が安全だって思った。そうでしょ?」
エルトは扉に手をかけたままうなづいた。
「ああ。俺たちは小屋で盗賊に立ち向かうための準備をする。今回は6人も戦闘には必要ない。3人で十分だ。」
エルトはそう言うと小屋の中に入っていった。ヒナとイアもその後を追って中に入った。
「で、どうするのよ。立ち向かう準備って言っても、この小屋に武器になりそうなものなんてないじゃない」
扉を閉めて、イアがエルトに言った。ヒナもイアと同じ気持ちだった。しかしエルトは首を横に振った。
「あるじゃないか、これが。」そう言って、エルトは机の上に置きっぱなしになっていた『継承の書』を手に取った。
「あるって…本じゃない。それも半分は読めない。」イアは呆れた表情をする。しかしエルトはニヤッと笑って言った。
「実はさ、ずっと読んでなくてさっき思い出したんだけど、第4章にいくつか読める場所があったんだ。その中に、何か大事な言葉があった気がしたんだよ。」
エルトは本を開く。イアとヒナはそれをのぞき込んだ。
「俺の考えが正しければ、このページはきっと、作者の手記だ。2階への行き方も、今なら…!」
エルトの手が止まる。そのページをじっと見つめる。ヒナもそのページを読んでみた。
「…ロールフ」
「…ドノセス」
「エントオト」
「ロード、ア、スナトウ」
「…スロティレフニ!」
エルトとヒナが呪文を唱えた瞬間、扉の向かい側にある壁が光り輝き、通路が現れた。イアが通路を見てはっと息をのむ。
「階段だわ!ってことは、この先が…!」
「ああ、2階だ。」
3人は階段を上り、小屋の2階へ向かった。




